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ここはなにかが欠けている

少数派のわたし

作者: 浮月重月
掲載日:2026/08/27

北方大陸で一番多い知的種族は、言わずと知れた人間である。

適応性の高さゆえ、人間のいないところを探すのも難しい。


次に多いのは、本来まとめるべきではないのだが獣人が続く。

犬の特性や猫の特性など、受け継ぐものにより体格も異なり、

異なる特性同士では子孫を残すことも難しいからである。


敵対種族たるゴブリンは驚異的な繁殖力だが、平均寿命は短い。

時折爆発的に増えるものの、食糧が尽きれば劇的に減少する。


ドワーフやエルフは獣人程ではないのだが、それなりに多い。

しかしながら獣人も含めて、人間の町中では少数派となる。

彼らは彼ら同士で各地に集落を造り、人間とやや距離を置く。

最近でこそ王国の環境が住みやすくなり、町中でも見かけるが、

それまでは王国内にありながら別の国のように振る舞っていた。

今では王国内自治領として存在し、王国に税も収めている。


リザードマンやコボルトもいるのだが、彼らは特定地域のみ生息し、

あまり人間やその他種族との関わりがない。敵対的ではないが。


それ以外に敵対種族とされるオーガやトロールなども生息するが、

大型、超大型の敵対種族はあまり集落も群も作らず単独行動が多い。

そのためか、その絶対数は他の種族と比べるとかなり少ない。

行動範囲が広いので、敵対種族として厄介な相手である。



さて。実はそれ以外にも二足歩行の知的種族は存在している。

一見すれば人間などと区別がつかない。が、明らかに異なる存在。


例えばこのデュラハンの娘。ちゃっかり人間に紛れて暮らしている。

単独行動する十四歳の二つ星冒険者、鞭使いのガーディニア。

現在王都の冒険者組合食堂で、やや早い夕食を摂っている。


かつては、デュラハンに指をさされた者は一週間以内に命を落とす、

血液を大桶いっぱいに頭からかけられる、などと言われていたが、

様々な逸話は勝手に恐れられ、でっち上げられたものに過ぎない。

逸話と事実との共通点は「首が外れている」事しかない。

人間との能力的差異はないに等しかった。ゆえにバレない。


なぜそんな逸話があるのか、デュラハン達には心当たりがないのだ。

大昔のイカレたデュラハンが武勇伝でも作ったのだろうか。

あ、鞭を使いだしたのは逸話に引きずられた訳でなく偶然である。


彼女の育った小さな村は人口の半分程度がデュラハンであり、

正体は知られた上で、ごく自然に人間やドワーフらと共存していた。


デュラハンが外の世界でどう見られているかは一応聞いており、

いわれのない迫害などされても困る、と人間として振る舞っている。

ガーディニア自身は至って普通の感性を持つ女性なのである。

首は任意で付けたり外せたりするものの。


明日はどんな依頼を受けようか、面白い依頼があるといいなあ、

等と考えながら水を口に運ぶその時。


「デュラハンのお姉さん、ですよね?」


と声をかけられ思わずむせた。

涙目で声をかけられた方向を見ると、一人の少年が立っている。


「依頼というか、お話を聞かせて欲しいんですが、いいですか?」



少年はロドと名乗った。五つ星の魔術師らしい。十二歳なのに。

何でも少数種族の禁忌とかあれば教えて欲しいという事らしい。


この聞き取り調査は王国からロドへの指名依頼で行っていて、

人間との意識の相違点を洗い出して混乱を抑えたいのだそうな。

最初はガーディニアも、


「んななななな、なんの事だかわからないんだけどぉ?」


と、目を泳がせながら懸命にとぼけようとしていたのだが、

魔術《解析》にて種族は判明していると聞き、さらに《透視》で、

太めのチョーカーの下が繋がっていない事も指摘され降参する。

なにぶん見破られたのは初めてで、あっさり認めてしまった。


「ううう、バレたのは分かったから誰にも言わないで…

 何でもキミのいう事聞きますからあ」


うかつにもそんな台詞を言ってしまったガーディニアだったが、


「別に脅したりしませんよ。無関係の相手に話したりもしません」


と、単なるもののはずみとして割と紳士的にロドから無視された。


情報を誰から聞いたか、お互い決して漏らさない事を書面契約し、

ガーディニアは自分の知っている村のしきたりなどを話した。

もう少し詳しい話も調べたいと、村の場所も聞き出したロドは、

他から見えないようにガーディニアへ金貨五枚を渡してくる。

こんなにもらえない、と慌てるガーディニアだったが、


「いや、他の人達にも渡しているんです。受け取ってください。

 サキュバスの方とか、バンシーの方とか。

 王都って結構少数種族の方がいるんで情報助かります」


ロドにそう言われて、恐る恐る受け取る。


気づかなかったけど、そんなに王都に色んな種族のひとがいるの?

会話の後しばらくして、ガーディニアは思わず周囲を見回した。

「首の断面を見られるのは裸と同じぐらい恥ずかしいかな」

「申し訳ありません、今も《透視》で見えちゃってます…」


参考)貨幣:銅貨<大銅貨<銀貨<大銀貨<金貨<大金貨。価値は十倍刻み。

大金貨の上に宝石を埋め込んだ虹貨もあるが、まず流通していない。

金貨五枚だと、一般的な三・四人家族一年分ぐらいの収入。

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