1 生徒会
ここは、美鈴学院高等学校。日本の中でトップレベルの高等学校である。そんな高校の生徒会はとてつもなく豪華である。
「見て見て!あれは子安遼希副会長よ!」
「キャー!すごく麗しいですわ!」
子安遼希──美鈴学院高等学校生徒会副会長。学年で二番目に人気があり、トップレベルで頭がよく、トップレベルで運動神経がよく、何でもできる。
亜麻色のショートをは通りがかるひとを振り返らせるほど美しく、その瑠璃色の瞳は煌めいて優しくてどこか脆さもある。
女子からも毎日のように告白されているイケメンだ。3年A組の中心と言っても過言ではないほど、優秀だ。
でも、そんな彼は二番目なのだ。そう、二番目。生徒会の中で副会長という肩書き。
じゃあ、そんな副会長よりも立場の上の生徒会長はどうだろうか?
「み、見てくださいまし!あれは!!!」
「お、小椋翔真生徒会長様ー!!!」
小椋翔真──美鈴学院高等学校生徒会生徒会長。遼希を抜かして学年で一位に人気がある。頭脳、運動能力、顔、性格、才能、どれもズバ抜けて高く、類稀な才能の持ち主というところだろう。
誰に対しても人当たりが良く優しく、ボケツッコミどちらもできて、何よりも面白い。定期テストは常に一位、運動能力はその部活のエースに引けを取らないほどに良い。これを正統派イケメンと世間は言うのだろう。
墨色のツーブロックに江戸茶色の瞳という、かっこよさと少し可愛さが混じった見た目は、人々を安心させる効果がある。
そんな二人を中心とした生徒会のおかげで、美鈴学院高等学校は成り立っている。
生徒会には、生徒会長──小椋翔真、副会長──子安遼希に加えて、書記──鉃田紗菜、会計──高井詩音、庶務──加藤樹の五人がいる。
全員成績優秀者で、運動能力も高い。顔も良くて性格も良くて、完璧な生徒会メンバーと言われているほどだ。
二人は廊下を抜け、生徒会室に入り、扉を閉めた。すると、遼希はドカッとソファに座って足を組んだ。いつもニコニコの爽やかイケメンとは到底思えない。サイドテーブルを挟んで、向かい側に翔真が座った。
「会長〜、チヤホヤされていい気分だろうね」
「本人の前でそれ言うか?」
「会長の前では言うよ〜」
「あれは子安が選ばれなかった、それだけだろ」
「……ほんっと、嫌いだわー」
翔真と遼希は不仲である。理由は色々あるが、一年生、二年生と同じA組で、ライバルと言っても過言ではない。
二年生の最後であった、『美鈴学院高等学校生徒会生徒会長選挙』で遼希は負け、翔真が勝ったのだ。獲得した票は一点差。遼希が苦虫を噛み潰したような顔で、翔真に思い切り想いをぶつけていた。
せめても、そう思い、生徒会長が選べる他メンバーに遼希を入れた。私情もあるが、遼希は学年の中でも全ての能力が高く、バランスがいい。
副会長に誘った時は、すごい形相で睨んできたが、なんとか入ってくれた。
「あーぁ、なんかのアクシデントで俺が生徒会長になったりしないかなー」
「ならないしならせない。後期にしとけ、諦めろ」
「ほんっとーに嫌い」
遼希が裏表が激しいタイプである。表では愛想が良く誰にでも人当たりのいい完璧人、裏では不良か?って思うほどに態度が悪く無愛想で好き嫌いが激しい。その嫌いに翔真は含まれている。
他の生徒会メンバーには、この裏、素で接しているが、全員そこまで苦痛ではない。
「あ、そーだそーだ……会長の彼女ってあれでしょ?D組の子いじめて今罪決め中でしょ?」
「……は?」
「え、知らなかったの?まじで?彼氏なのに彼女のこと知らないの?本気?」
「知らない……ってか、どういうことだよ?」
翔真は立ち上がり、思わず座っている遼希の胸ぐらを掴んだ。すると、遼希は少し驚いたような顔をしてから、ニヤリと笑って言う。
「言ったとーりだけど?まさか知らないなんてね、驚いた。今言ったように、会長の彼女はE組行きがほぼ確定なんだ。あーあ、かわいそーなかいちょー」
「子安…ッ…!!」
「なに?殴るの?大丈夫?そうなった時点で会長はE組行きだよ。生徒会は何か一つでも問題を起こしたら即E組なんだから」
遼希は余裕だ、と言うかのように笑う。立場的にも体格的にも能力的にも、翔真の方が能力は上だが、ここで殴って仕舞えば圧倒的に翔真が不利になる。
感情的になってはいけない、そう唱えつつ、翔真はふーっと息を整え遼希を離して座る。遼希は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
もう、この時点でほぼほぼ決着はついていたのだから。
「会長、俺の胸ぐら掴んだよね」
「っ……!」
「まぁ?俺は優しいから、これぐらいのことでは理事長には言わないよ」
「……」
「だけど、これで貸し一、もしも俺が今ここで彼女について話すなら貸しニにするけど、どうする?」
「……聞かせてくれ」
翔真がそう言うと、遼希は狙い通りだと言わんばかりに見下してきた。物理的ではない、立場的に。
「生徒会長が副会長に負けちゃって……雑魚じゃない?俺に選挙で勝ったのに……なんてみっともない」
「……」
「だんまりでしょ?まあいいよいいよ、俺寛大だから教えてあげる」
遼希は組んでいる足を戻して天井に釣られているシャンデリアを見ながら言葉を放った。どこか辛そうな顔をしているが、俯いて考えている翔真にはそれがわからなかった。
「……野々田恵のいじめについて、ね」




