<第一章:農家編>第4話 農家、数値をぶっ壊す
協会の簡易測定テントに案内された俺。
中には巨大な水晶玉のような機械があり、中央のパネルには「体力」「力」「魔力」などの項目がずらりと並んでいる。
「では、手をここに置いて」
水城教官が淡々と説明する。
俺は言われた通り、手を置いた。
……ピコン。
……ピコーン。
……ピコピコピコピコ――
バチッ!
「……あれ?」
機械が一瞬まぶしく光った後、煙を吹いて止まった。
隊員A「す、すみません教官! 過負荷で回路が焼けました!」
水城「はぁぁぁぁ……また予算が飛ぶ……」
予備機を持ってこられ、再度測定。
表示された数値を見て、周囲が固まった。
体力:∞(表示上限突破)
力 :∞(表示上限突破)
魔力:∞(表示上限突破)
精神:∞(表示上限突破)
素早さ:∞(表示上限突破)
防御力:∞(表示上限突破)
隊員B「……全部、上限突破……」
水城「ちょっと待って。普通、Sランクでもせいぜい“2〜3項目が上限”でしょ。なんで全ステータス∞なのよ」
俺「いやぁ、たぶん……ダンジョンが勝手に沈んでくれたおかげで」
水城「沈むも何も、あなた沈めたんでしょ!」
さらにスキル測定。
《農家の慈愛》の説明を聞いた瞬間、水城教官の表情が止まった。
「……農具持つと攻撃力上昇……作物成長促進……天候操作?」
俺「はい。これで田んぼの水やりも楽になります」
教官は黙って腰のスコップを俺に差し出した。
「……持ってみて」
握った瞬間、外から「ザーッ!」という音が。
雨雲がモクモクと集まり、土砂降りになった。
水城「……」
俺「やっべ……これ、農作業用の小雨調整じゃないんですか?」
水城「小雨ってレベルじゃないわよ! 村ごと洪水レベルよ!」
その日、測定テントは大雨で浸水し、測定結果は紙ごと水没した。
……記録的豪雨、第二ラウンドである。
水はダンジョンの中に再び流れ込んだので被害は出ませんでしたw
次回、ヒロイン登場!