<第一章:農家編>第3話 農家、協会にバレる
ダンジョンが水没してから二日後。
朝の5時、俺は畑でトマトの苗を植えていた。
「よし、これで夏は冷やしトマト食べ放題だな」
と満足していたところに、坂の下から砂埃とけたたましいサイレンが近づいてくる。
黒塗りのバン、迷彩服、重装備の人たち――
なんか、映画で見る特殊部隊っぽい集団が家の前に到着した。
「た、高山拓海さんですね?」
リーダーらしき男が身分証を見せる。
ハンター協会 中国地方支部。
「え、俺なんかやらかしました?」
「……やらかしましたよね、かなりの高ランクと見られるダンジョン完全攻略」
「いやいやいや、俺ただ水流しただけなんですけど」
「その“だけ”が、世界で誰もできなかったことなんです!」
リーダーの後ろから、ひときわ小柄な女性が現れる。
黒髪をひとつ結びにした、凛とした目つきの教官風。
「……あなたが高山拓海?」
「え、はい。あの……どちらさまで?」
「水城。Bランクハンターで訓練所の教官。今回の調査隊の指揮を任されたわ」
彼女は俺の前まで来ると、ずいっと顔を近づけてきた。
「あなた、ダンジョンの属性を知ってる?」
「え、属性? そんなのあるんですか?」
「今回の……火属性ダンジョンよ」
「……火……に水ぶっかけたら……」
「蒸発、沸騰、熱膨張。中の構造物とモンスターは一瞬で壊滅。
普通なら近づく前に焼かれて終わる。それをあなたは――豪雨と貯水池でやってのけた」
周囲の隊員たちが俺を見ている。
「失礼ですがご職業は?」
俺は正直に答えた。
「ただの農家です」
水城教官はこめかみを押さえた。
「……もう嫌な予感しかしない」
無自覚チートでコミカルな作品を目指してます。
初投稿なので色々と設定が甘い部分があると思いますがよろしくお願いします。