第6話 農家、訓練の成果が出る
訓練校での生活も早いもので最終月を迎えた。
あの日、初めての戦闘訓練で俺をボコボコにした連中――あいつらが今や視線をそらすようになったのを感じていた。
スキル「農家の慈愛」の力。ダンジョン内転移、テレパシー。
それに自己流で磨き上げた農具術。
剣や槍の師範に教えを乞い、型を取り入れ、農具の重みと形状を活かした戦法は確実に俺を変えた。
今日も教官たちの前での模擬戦。
かつてのボコボコ相手が挑んできたが、俺は悠々とかわし、逆に重い一撃をスコップで叩き込む。
「くっ……!」と相手が悔しそうに膝をついた瞬間、教官の水城が微笑みながら言った。
「拓海、お前の成長は著しいな。だが油断するなよ」
隣で見守るレイカは満面の笑みで拍手を送ってくれた。
「あんた、やればできるじゃない」
そう言われて、胸の中に熱いものが込み上げる。
だが、陰では違う感情も渦巻いていた。
かつて俺を嘲笑い、殴りつけた連中の中に、水城教官に対して嫉妬を抱く者がいた。
「教官と仲良くして……あいつがSSSランクダンジョンの初討伐者なんて許せるかよ」
また、レイカとの幼馴染としての仲の良さを妬む者も。
彼らは密かに機会を狙い、復讐の機会を窺っていた。
次のダンジョン実習――そこで、俺の真価が問われることになる。
戦いの先には、待ち受ける新たな試練と陰謀があるのだと、まだ気づかずに。
次回、最終訓練のダンジョン実習です。