第5話 農家、適正武器を持つ
訓練所の武器庫は、多彩な装備であふれていた。剣、槍、斧、弓……そして、どれも新鮮で俺の目は少し泳いでしまう。
「拓海、お前の適正武器は農具だからな?」水城教官の冷静な声が響く。
「はい。スコップ、鍬、鎌……全部です」
「そりゃ珍しいな。師範は付けられないから、自分で工夫しながら学べ」
そう、俺は正規の武器師範がいない。兵農一体の精神を持つ家の長男とはいえ、農具は戦闘用ではない。
「だからって諦めるわけにはいかない」
そう呟いて、剣と槍の師範に頭を下げにいった。基本の動きは共通する部分もあるし、応用できる部分もあるはずだ。
一方、レイカは剣類の師範について、真剣な表情で型稽古に励んでいる。
「お前、さすがに腕がいいな」と師範が感心する声も聞こえた。
でも俺は羨ましさよりも、負けられない気持ちが強くなっていた。
午後の武器訓練では、初めてスコップを手にして動きを試す。
堅い鉄の刃ではないが、その重さと形状は戦闘において独特の威力を秘めている。
教官の剣や槍の振りを参考にしながら、自分なりの技を模索する。
「意外と使いやすいかもな」
水城教官が横からアドバイスをくれる。
「拓海、お前の農具には可能性がある。だが鍛錬が必要だ。自己流で終わらせず、常に改良を考えろ」
夕暮れ、稽古場を後にする時、レイカが近づいてきてぽつりと言った。
「やっぱり、拓海は変わってる。でも、それが……好きよ」
俺は思わず笑った。まだまだ先は長いが、農具を武器に、レイカと共に強くなっていくんだと心に決めた。
武器はやはり農家らしく農具にしました。
いずれ伝説のスコップとか出したいですね笑