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第2話 元カノに何もしないという対処法

 タイムリープをして朝目が覚めた際、僕は大変な疲労感に包まれている。これだけは馴れないが、タイムリープが短かろうが長かろうが目覚めは徒労感や肉体的疲労感、そして頭が全く冴えなくてボーっと数時間は復帰できない。


 特にこの頭が冴えないというのは普段脳の70%を使用しているとして今の自分は30%以下のように思えるほど頭が動かない。


 バタフライエフェクトが少ないと思う反面、自分の脳などへの反動は少なからずあり、タイムリープを続けていれば将来的に身体に悪い何かが発生するのでは?と心配にはなっている。


 それでもタイムリープの経験という魅力には逆らえず、病気にならなければまぁオツケイという判断で過ごしている。


 前回の井口さんへの送別みたいな言葉は成功し、特に彼女から引越し後にラブレターが着たとかの記憶も挿入されず、私生活への影響もなく無問題と考えていた。


 そして次のタイムリープは高校1年生の夏ごろの出来事、初めての恋人であった〇〇〇〇さんこと鵜飼恵子さんと別れる際にあった出来事を、何もせずに過ごす……というもの。


 鵜飼恵子さん ↓

挿絵(By みてみん)


 恵子さんの友人から僕に「恵子ちゃん、最近男子から何通かラブレター貰ったよ、告白もされてたけど、どうなったんだろう」と聞かされてしまい、僕は見事に精神錯乱。


 僕らカップルは何でも共有するという間柄だったのに黙っていた=内緒に何かしていた=と若き思春期の感情暴走を引き起こし、僕の乱れた気持ちをメールではなく彼女に手紙で長文を下駄箱に入れたものの、彼女にとっては意味不明だったらしく、ビリビリに破かれて高校のゴミ箱に捨てられているのを発見してしまった。


 次の日に駅のホームで彼女のほっぺたをパチンとビンタしてしまった若気の至りである。


 女の子の頬を叩くなんて後にも先にもこの一回だけであるが、僕も悪かったと大いに反省し、目が覚めた際には彼女を失ったことや後悔が襲ってきた。これは意外とあとを引いてオッサンになった今でも申し訳ない気持ちが出てくるほどであった。


 最低でも殴ることはしない、いや手を出すこともしない、その朝を反省しながら過ごすことを目標にタイムリープを試みた。


 ただ、何としても後悔を無くしたいという考えにはもう一つの要因があった。それは大学時代に帰省した際、恵子さんとお茶をしに行き、近況報告などをしていたのである。


 思えば高校時代に駅のホームで朝のラッシュ時、彼女にビンタをしてしまうという暴挙をした元彼になんて一生会いたくないと思うわけで、よく僕に会ってくれたと思い返すと同時に、ひょっとしたら彼女もあんなことで別れたりしたくなかった、手紙をビリビリに破くんじゃなかった、などと思ってくれていたのかも?なんて思うわけで。


 というわけで、高校1年の夏にやらかした自分にピンポイントで転送するためのタイムリープを試みるとしよう。元恋人に何もしなければいいだけなので今回もお気軽である。


 いずれ世の中のためになるような危険を伴うようなタイムリープをしたいと思いつつ、その前に実践を積むために必要かなと納得しながら布団の中に入って目を閉じた。


 彼女が歩いてくるホーム前の通路にて、若き自分に憑依した僕は、駅通路の壁に背もたれして待った。あの時は「昨日、僕の手紙をビリビリに破いたな、酷すぎるだろ!別れる」パチンとやってしまって走って出口に向かって逃げてしまった。


 今回は何もせずにすれ違えば、いや一言何かを言って終わりにすれば彼女を叩くという出来事だけは消滅させることが出来る筈だ。彼女との接触は1-2分が想定する所要時間だ。


 前から彼女が歩いてくるのが見えた。ああ、可愛いな。思えば中学1年生の終わりに隣の席になった彼女と会話が弾み、大変可愛らしい彼女に高嶺の花であった井口さんを超える魅力を感じて僕から告白したのがお付き合いのスタートだった。


 彼女は僕よりも成績が良かったもののレベルを下げて確実に合格する高校にしようと進学した。それが1年の夏に別れてしまうなんてと反省やら後悔やらすさまじいトラウマになっていた。


 タイムリープがあれば別れずに仲直りする等のやり直しという使い方もあるだろうが、僕には捨てられない今の生活があるので、やはり小さなことしかやらないようにしなくては。


 彼女の目と合った。少しばつの悪そうな顔をした彼女に近寄り、「昨日、学校のゴミ箱に僕の手紙が破られて捨てられていた。悲しいよ、お互いに別れた方がいいよね。今まで付き合ってくれてありがとう。」


 と僕は彼女に話しかけた。顔を観察すると彼女は下を俯き口をもぞもぞ動かしていたものの、何も返事を言わずに顔を上げて電車の方へ歩いて行った。いささか寂しいと感じたが、これがリアルなんだろう。


 思えばファーストキスの相手が恵子さんだったな。彼女が感極まって抱き着いてきて「別れたくない」だなんて展開は無かった。復縁してしまうと彼女が後に付き合う事となる先輩の人生にも関わってくるだろうし、無難に済んで良かったというべきか。


 さらば青春、というフレーズそのものを胸に抱えて少したたずむ。


 過去の後悔を解消するというスタンスで始めたタイムリープは無難でスムーズに進んでいると感じている。今夜は戻ってベットでそのまま爆睡しようと念じて空間が歪んで元の世界に戻った。

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