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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『相手の刀を奪って切り捨てる話』

作者: 結晶蜘蛛

 一人の男が斬られた。



「どうして……受け入れてくれなかったんだ……!」


 飛森先馬とびもりさきま葉桜史郎はさくらしろうを斬るために構えた。

 不意打ちは避けられてしまったが、いまなら飛先の方が有利。

 3年もの蟄居刑の間に葉桜は刀を売ってしまった。

 いま葉桜の腰についてるのは竹光であると飛先は知っている。

 その刀を取り戻しにゆく途中であると、飛森は手勢に聞いていた。


「お前を殺してオレも死ぬ!」


 葉桜が構えた。

 右手を伸ばし、その下にそろえるように左手。

 葉桜は落ち着いた瞳で飛森を見ている。

 無手で斬りつけられている状態で動揺が見られない――さすがだと飛森は笑った。

 その態度を崩して乱してやりたかった。

 共に馬廻りとして出会ってからその落ち着いた頼もしさに飛先は惹かれたのだ。

 ――ああ、どうしてオレの想いを受け入れてくれなかったのだ葉桜。そのせいで3年も蟄居となって閉じ込められて出世からも外れたのだろう。

 そのせいで3年の間も会えなかった。

 この先、オレを受け入れることはないのだろう。

 ならば、オレはお前を殺して誰にも手に入れれなくしてやる――

 肩に担ぐように構えて、大きく踏み込む。

 飛先は刀、葉桜は素手。射程や殺傷力は段違いだ。

 敵手である葉桜もそれはわかっているはず、転がって避けるか、はたまた退くか。いずれにせよ、初撃を躱せたところで二の太刀で仕留められる。

 素手と刀なら懐に潜り込まれても、素手側が攻撃するよりも先に刀のほうが先に攻撃できる。

 射程の差とはそのようなものだ。

 飛先が勝利を確信したところで、葉桜が前進した。

 刀の危険さはよく知っているだろうに、と飛先は驚愕した。

 耳を貫くような裂帛の気迫が葉桜から発せられた。



 飛先の振り下ろした太刀を左に避けた葉桜。

 右手で柄、左手で峰を抑え、そのまま左に半円を描き、飛先の刀を奪い――そのまま峰に手を添えて、首を切り裂いた。


 ――成った。

 短く葉桜は息を吐き、満足感にわずかに頬を緩ませた。

 葉桜の使った技は太刀取り。

 無手の人物が太刀で斬りつけてきた相手の武器を奪い、逆に切り捨てる技だ。

 この技を成功させるには相手の刀を斬りつける機会を操作する必要がある。

 葉桜は自ら前に出て、裂帛の気迫で相手を飲んで自ら振らせた。

 3年間、蟄居刑を命じられ、刀を振るうことすらできなかった。

 その間、ずっと練習していた技が無刀取りであった。

 葉桜にとっては思い出の技だ。

 師匠に師事したときにこの技で奇麗に投げられた。

 それ以来、この技を習得したいと思い剣の道を邁進していた。

 刀の技の先に無刀取りがある師から教えられたからだ。

 だからかねてより集中してみたかった技の稽古に集中してみたのであった。


「…………」


 そして、その技はいま結実した。

 複雑な表情を浮かべつつも、葉桜は礼を一つ。

 そして、届け出を出すためにまた歩きだすのであった。

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