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第7話 純白の鳥かごにて

 


 ──玉座は、言葉で傾く。


 


 王都の中心にある白亜の城《リュミエール宮》。


 その南棟、陽光差し込むテラスで、ひとりの少女が鳥かごの中の小鳥に指を差し出していた。


 


「あなたも、飛びたいと思うことはあるかしら」


 


 その声は清らかで、どこか寂しげだった。


 少女の名は、セリシア・アルテミュール。現王の第二王女にして、王都でも“最も美しい”と噂される貴族界の花。


 だが、その実態は──政略の道具。誰よりも自由を縛られた、“黄金の鳥かご”の住人だった。


 


「……退屈な日々。どこかに、退屈を壊してくれる人がいればいいのに」


 


 その願いが、届いたのは──その夜のことだった。


 


 



 


 


「──王女に謁見を?」


「はい。“導きの聖導師”レオ・アルバレスト殿より。既に第三王子の推薦を受けております」


 


 宰相がわずかに顔をしかめたが、王の印章がある以上、拒む理由もない。


 こうして、王女セリシアと“詐欺師レオ”の邂逅は、思いのほか早く実現した。


 


 



 


 


「初めまして、王女殿下。私、レオ・アルバレストと申します」


「……初対面なのに、不思議な空気を纏っている方ね。まるで“嘘を纏った人”のよう」


 


 セリシアは微笑むが、その目は鋭い。


 噂以上の“聡明な姫”。しかし同時に、彼女の中には“渇き”があった。


 それは、自由への渇き。


 誰かに認められたいという渇き。


 そして──心ごと奪われるような、危険な“恋”への渇き。


 


「私に会いに来た目的を、教えてくれるかしら?」


 


 レオは、わずかに笑って言った。


「あなたを、私の“味方”にしたいのです」


 


「……理由は?」


「あなたはこの王国で“最も自由でない人”だから。私はあなたに、“選ばせてあげたい”のです。どんな王国にしたいかを」


 


 セリシアはわずかに目を見開いた。


 誰もそんなことを言ったことがない。彼女に“選ばせる”という言葉を使った者など、一人もいなかった。


 


「……あなた、私に嘘をついてる?」


「もちろん。私は“嘘を吐く人間”です」


「でも、その嘘……少しだけ、信じたいって思ってしまうのはなぜかしらね」


 


 ──この瞬間、彼女の心にレオという“毒”が回り始めた。


 


 夜が更けても、王女は眠れなかった。


 窓辺でそっと呟く。


 


「……もっと、あなたの言葉が聞きたい」


 

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