表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/85

出撃II

「お待たせしました!」


 きっちり三十分後、ルーシャスが現れた。

 他の人を送るためにゲートを使ったのか、額に薄らと汗をかいている。

 そんなルーシャスに彩菜はさっと飲み物を渡す。


「ありがとうございます!」


 ゴクゴクと勢いよく飲み干し、


「数が多い西区、南区は会長や教官たちが対処しています」

「そんなに……リュウ人がいるのか?」


 戦闘要員の多くが投入されているではないか。


「残念なことに……。日本だけでなく、様々な国で人を集めていたみたいです」

「国によっては、行方不明者の足取りを追うのは困難を極めるわ。もう、どれだけいても不思議ではない」

「……みたいだな」

「犠牲者を数えるよりも、これ以上被害者を出さないことだけ考えなさい」

「わかってる」


 別に悲観的になっていたわけではない。

 あくまで、事態の大きさに改めて気合を入れただけだ。


「心配しなくていいから。……迷いはない」

「…………」


 真剣な面持ちで告げるが、彩菜はチラ見しただけで流す。

 やはり、信じてはもらえていないようだ。

 間で気まずそうなルーシャスは俺たちの顔色をうかがいながら、


「東区はテオさんとセツさんが担当してます。北区含め、数は少ないものの強力な個体が多いため、少数精鋭で対応することになります」

「つまり、俺たち二人だけってことで良いのか?」

「片付き次第、援護に回る予定にはなっていますが、基本的には二人と思ってください」


 強力な個体といえども、施設での戦いを鑑みるにリュウオウには程遠いだろう。

 倒すだけなら俺たち二人で十分だ。


「不安?」


 彩菜が挑発するように言ってくる。

 怖いなら待ってても良いのよと言いたげだ。


「彩菜の尻拭いだけを考えれば良いんだなってだけだ」


 あえて、小馬鹿にする。

 彩菜の額に青筋が浮かぶ。

 大概、キレやすい。の割には達観しているというか、悲観的なのか、やけに冷静な時もある。

 彩菜の印象が大分塗り変わる一週間だった。


「隆治こそ、足を引っ張らないように」

「ルーシャス、この傷は彩菜を庇ったことで負ったんだぜ」

「そ、そうなんですか」


 治りはしたが傷跡は多少残ったので、それをルーシャスに見せつける。

 足を引っ張るなとか。よく言ってくれたな。

 尚、ルーシャスは巻き込まないでくださいと言わんばかりに迷惑そうだ。


「お、恩着せがましいわね。気にするなって言ってたのに」

「使える物は何でも使わないとな」


 引き攣った笑みを浮かべる彩菜にウィンクする。

 ……げんなりされてしまった。


「よ、よし、肩の力は抜けたみたいだな。じゃあ、行こうぜ」

「……ええ」


 もうちょっと良い感じに脱力させるつもりだったのだが、想定以上に腑抜けてしまった。

 見るとルーシャスも気まずそうに視線を合わせてくれない。


(そ、そんなに気持ち悪かったかな!?)


 笑顔を保ちながら心の中で涙を流す。


「お嬢様」


 音もなく現れるお姉さん。

 俺はすっかり慣れてしまったが、ルーシャスはビクッと良い反応を見せる。

 お姉さんは、そんなルーシャスを見て嬉しそうにニヤつく。


「どうしたの?」


 彩菜に問われ、すぐに表情を戻す。

 そして、手に持っている何かを彩菜に渡した。

 角度の問題で何かは見えなかったが、彩菜の表情に変化が起きたのはわかる。

 小さく息を吐く。


「……ありがとう」

「ご武運を」


 恭しく頭を下げるお姉さん。

 それほど危険な任務ではなさそうだが、二人の雰囲気はどうしたのだろうか。

 ルーシャスにこっそり尋ねるが、頭を横に振られる。


「油断はできませんが、そこまで危険ではないと思います。それこそ、本物のリュウ相手の方が……」

「だよな……」


 どんな戦いであれ、命をかけたものである限り、何が起こるかはわからない。

 ……みたいなプロ意識にも見えなかった。


(気になるけど)


 お姉さんと目が合う。


(お嬢様をお願いします)


 アイコンタクト……で良いのだろうか。

 お姉さんの思いが伝わってきた。

 俺の気のせいかもしれないが、しっかりと頷いて返す。

 お姉さんは満足げに微笑む。合っていたのだろうか。

 こちらに背を向けていたため、彩菜は俺たちのやり取りに気づいていない。


(……何が起きる?)


 一抹の不安を胸に、


「行きましょう」


 彩菜と共に開かれたゲートを潜るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ