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彩菜家

「ところで、ここって彩菜の家?」

「そうよ。こっちの方が確実だったから」


 傷次第では手術が必要になるかもしれない。

 なら、ナカツノクニにある学園よりもってことらしい。


「回復系の能力とかってないんだな」


 火を出したり、ゲートを開いたりなどど、多様な能力があるため、てっきりそういった能力もあるかと思っていた。


「あるにはあるけど……使い手が少ない上、治療できる幅に限りがある。体調にも左右されるし、ほとんどの場合は普通に病院に行った方が良いわね」

「そう便利にはいかないってことか」

「だから、無理はしないで」

「善処するよ」


 頼りない返事に彩菜は苦笑する。


「今回は、銃による怪我だからこちら側の先生を呼んだわ」

「あー、確かに病院に行くのは無理があるな」

「事情を知っている方が院長をやってる病院もあるけど、基本的にはお世話にならない方針になってるわ」

「そうなのか?」


 むしろ、積極的にお世話になりそうなものだが。


「人の世で大っぴらに行動するべきでない。……今だけでなく、代々そういう考えなのよ、学園は」

「ふーん」


 理屈はわからないが、方針と言われれば仕方がない。


「まあ、円野家は独自の人脈があるから特に困ることないけどね」

「……やっぱり、凄いんだな」


 部屋の豪華さでわかってはいたが、円野家は相当な家柄らしい。

 高級ホテルが行きつけの店感覚だったし。


「……引いた?」

「え? 何に?」


 質問の意図が読めず、聞き返すも彩菜は何故か嬉しそうに頷く。


「なら良いの」

「意味がわからん」


 わからなくて良いのよとは彩菜の言葉。

 さっぱり、理解できないが嬉しそうだから良いか。


(さて、聞きたいことも聞けたし帰るか)


 ナカツノクニ学園の教育カリキュラムは自由度が高い。

 もちろん、生徒であり、任務をこなすエージェントでもあるからだが。

 とはいえ、最低限こなしておかないといけないノルマがあるのだ。

 そして、転校したての俺は結構ギリギリだったりする。

 神殿の件やら今回のやら任務で忙しいこともあり、教官からは達成できなくても良いとは言われている。

 が、そこは出来る限りやっておきたい。


(学園でずっと働くとか無理だろうしな)


 命の危険の問題ではなく、スタンスの違いでだ。

 やはり、リュウ美しい派はあまりに少数。

 今はまだ限られた人たちしか知らないが、知れ渡ってしまったら居場所はなくなるだろう。


(一夏の思い出……よりは長いけど)


 いつかは去る日が来るだろう。

 その日のために勉強ぐらいはしておかなければならない。

 能力を使って稼ぐ気もないし。


「どうしたの?」


 ベッドから下りる俺に彩菜が聞く。


「帰るんだよ、授業もあるし」


 見ればズボンは着替えさせられていた。

 シャツは処置の際、着替えさせたのだろうが下もか。


(……仕方がないか。綺麗なベッドを汚すわけにいかないもんな)


 髪を触ってみる。フワッと手触り。

 ……流石に風呂に入れたわけではない、よな?

 円野家の大きさからして使用人はいるだろうが、そんな命令をするはずない……多分。


「何を言ってるの?」

「……いや、意識も戻ったし、傷も大丈夫そうだから帰ろうかなって」

「ふふっ、面白いこと言うのね」

(あれま?)


 彩菜の言いたいことがわからず、首を傾げる。


「俺、変なこと言った?」

「ええ、面白くないジョークだわ」


 さっき面白いこと言うのねって言ったじゃん……とは言えない。

 笑っているが笑っていない。そう、オーラが語っていた。


「傷は確かに重くはないわ。けど、軽くもないの」

「う、うん」

「そして、怪我は私のために負った」

「だ、だから、俺は気にしてないって」

「それとこれとは別の話。負目は感じてないけど、責任あると理解してるだけよ」

「お、おう?」

「万が一にも傷口が開いて大変なことになったらどうするの? 私に一生消えない傷を刻むことになるわ」

「……そんな深刻にならなくても」

「いいえ、深刻になるべきよ!」


 隆治、貴方はわかっていないと人差し指を突きつけられる。


「銃弾を放った相手は得体の知れない人間。しかも、人をリュウにする実験を行なっている、ね」

「それはそう」


 先ほどの会話にどう繋がるのかがわからないのだ。


「ただの銃でない可能性もある。それだけの話よ」

「うーん?」


 額に指を当て、考えてみる。

 老人が持っていたのは間違いなく銃だった。

 だが、知識がないため銃の種類はわからない。

 そして、施設がなくなってしまった以上、銃に関する情報もないだろう。


「ただの銃でも警戒すべきなのに、未知の危険性もあるかもしれない。……ここまで言えば結論はわかるわよね?」

「……気をつけろってこあだだだだっ!」


 頭蓋骨を捉えられ、アイアンクローをかまされる。

 く、くそ、ちょっと察しの悪い振りをしただけなのに……!


「冗談は時と場所を選んだ方が良いわよ」

「う、うっす……」


 返事をすると解放してくれた。

 しかし、なんて力だ。まさか彩菜の握力がこれほどとは……。

 腕も腰も足も細いのに、どこからあれだけのパワーが生み出されているのやら。

 能力によって身体能力が強化されるとはいえ、驚きは隠せない。


「治るまで……とは言わないけど、数日はうちで療養することね。使用人もいるし、勉強したいなら家庭教師も用意してあげるわ」


 同世代の女子の家にお泊まりか。

 気後れしてしまうが、家が大きくて使用人の人たちがいるのならホテルと大差ないだろう。ないことにする。


「家庭教師は遠慮しとく……。俺、枕変わったら寝られないぐらい繊細だから」

「ぐっすり眠ってたじゃない」

「あれは気絶です」


 しばらくの間、疑り深い彩菜に俺が如何に繊細な生き物なのかを説明するのだった。


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