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謎の男II

「……あ、坂本さんからもらったとか!」

「…………ちげーよ」

「…………あ、あはははっ」


 気まずい。

 空気が変な意味で重くなってしまった。

 一応、敵の本拠地なんだよな?


「……変態」

「おいコラ誰が変態だ!」


 彩菜がボソリと呟き、男が怒る。

 だが、彩菜はガン無視する。

 ヒートアップしていた両者も多少はトーンダウンした様子だ。

 目論見成功と胸を張っておこう。


「お前はお前で何で満足気なんだ!?」

「落ち着いてください。俺の完璧なフォローを無にするつもりですか」

「フォローどころかトドメだろうが!」

「なら、理由を話してくださいよ。ただ怒鳴るだけじゃ何も伝わりません」

「ぐっ、この……!」


 激情に駆られ、部屋を出て行こうとするも風の盾は獲物を逃さない。


「……これ、消せ」

「嫌です。逃げられたら困りますし」

「逃げないから」

「…………どう思う?」


 彩菜の意見を聞く。

 目がマジな彩菜さんは顔だけをこちらに向け、


「とりあえず、私のを解除してくれないかしら」

「……暴れない?」

「このままだと暴れるわ」


 何でこんなことすら約束してくれないの!

 などと言うわけにもいかず、素直に解除する。


「……お前、友達無くすぞ」


 男はドン引きしていた。

 ディスコミュニケーションここに極まれりってか。


「らしいけど?」

「俺に聞くのかよ! ……別にこれぐらいで友達辞めはしないけど」


 俺の返答を聞き、適当なことこいてんじゃねーぞと言わんばかりに男の座る椅子を蹴る。


「弱みでも握られてんのかよ?」

「恩人なもので」

「それとこれとは別だろ。それとも、こいつはそんなに恩義せがましいのか?」

「そんな煽り効きませんよ。子供ですか」


 なあ彩菜と視線を向ける。

 慌てて手のひらの炎を消す彩菜。


「効いてるな」

「効いたのか」

「……効いてません」


 否定しながら視線を逸らす。

 羞恥からかようやっと落ち着いてくれたようだ。


「二人とも落ち着いたみたいなんで話を戻しますよ。まあ、貴方が坂本さんの何なのかは別に良いです。ただ、犯罪だけはやめてくださいね」

「何もしねーよ!」

「はいはい。……それで、組織が作ってる……坂本さんが使った薬ですが」

「素直に話すかよ」

「捻くれて話しても構いませんよ」


 どうせ、細かい仕様などは理解できないだろう。

 なら、おおまかな事態さえ把握できれば良い。


「……皮肉が効かねえな」

「俺からすればツンデレにしか見えませんからね。誰得っすか」

「…………やめてくれ、謝るから」


 ツンデレ呼びは堪えたのか、肩を落とし、お願いしてくる。


「じゃあ、素直に話してください。……ところで、今更ですが盗聴とか大丈夫ですか?」

「本当に今更だな。この部屋は大丈夫だ。だが、廊下は知らん。大きな声は出さないことだな」


 結構出してたけど大丈夫だろうか。


「彩菜、気をつけるように」


 注意するも彩菜は我関せずといったご様子。

 まあ、気をつけるだろう。


「えーっと、薬なんですけど」

「……その前に、俺からも聞きたいことがある」

(はよ言えや)


 口には出さない。大人だから。


「どうぞ」

「これは、お前の能力か?」


 風の盾を叩き、聞いてくる。

 わざわざ確認する程のことだろうか。彩菜の能力は知っていそうなのに。

 実際、彩菜も怪訝そうな顔をしている。


「そうですけど……気になる点でも?」

「いや別に。大したものだなって」

「あーあ、絶対裏があるよ。でも、答えないんだろうなあ。はー、嫌だ嫌だ」

「……少しは心の声を隠せよ」

「意味深なこと言う人ばかりでいい加減、うんざりなんですよ」


 彩菜が肩をビクッと揺らす。

 男は小刻みに頷き、


「学園の連中は秘密主義者だものな。わかるぜ、お前の気持ち」

「アンタは隠してる側でしょ。理解者面しないでください」

「悪かったって。学園の関係者だろうから意地悪したくなっただけさ」


 男は気に入ったと続け、


「理由を教えてやるよ」

(やるって時点で偉そうだよなあ)

「お前らがさっき通った扉、あそこには能力者かどうかを判定する装置が付いてるんだ」

「「っ!」」


 やはり、あの甲高い音は異常を知らせる音だったのか。


「安心しろ。幸い、監視ルームには俺しかいなかった。録画も差し替えてある」

(……差し替えてある?)

「……要求は何?」


 俺の疑問は彩菜の言葉ですぐに解消される。

 取引材料にするつもりなのか。


「まあ待てよ。反応したのは彩菜だけだ。この意味が分かるか?」

「……俺に反応しなかったんですか?」

「そこだ。確かにまだ試作段階の代物だが、強い力への反応は完璧だと俺たちは結論づけた。だが、実際はどうだ? これ程の力を素通しだ。聞きたくもなるってもんだろ」

「例外はあって然るべきよ」

「小娘がわかったような口を聞くな。当然、例外はあり、その共通点、理由もおおよそ検討をつけていた。……ま、今や過去の話だがな」


 男はズレたメガネを直し、ニヤニヤしながら口を開く。


「お前、本当に人間か?」


 ………………。

 …………。

 ……。


「は?」


 あまりにあまりな問いに脳がフリーズしてしまった。

 この人は何を言っているのだ?

 俺が人間かだって?


「当たり前でしょ。何を言ってるんですか。……え、人の姿をしたリュウとかいるの? マジで?」

「あ、あー」


 俺のリアクションが想定外だったのか、男は唸り声をあげながら額を中指で突く。


「俺の気のせいなら良いんだ。悪かったな」

「で、リュウって人の姿をするんですか?」

「……それより、薬の話だろうが」

「ちっ、結局これか。わかりましたよ。いるってことですね。その方向で進めます」


 人の姿をしたリュウ、か。

 わざわざなる必要性は感じないが……。

 いや、俺が知っているのは頂点に立つリュウオウだ。

 理由などいくらでも存在するだろう。


「彩菜は知らない?」

「知らない」


 知らなそうな反応だった。

 彩菜は嘘つくの下手そうだし、信じて良さそうだ。


「んじゃ、薬の話をしますか」

「よし、俺は何も見なかったフリをするからお前らは帰れ。それで良いだろ?」


 教官連中が調べる方が良いだろうし、といきなり煙に巻こうとする。


「……圧迫死って辛そうですよね」


 ボソリと呟く。

 男は途端に顔色を変え、額に汗が滲む。


「…………お、脅しか?」

「脅しではありませんよ。俺はやりますから」


 笑顔で告げる。

 嘘は言っていない。多分、やれる。


「ま、まさか……お前、入ったばかりだろ? 平和ボケしたガキがいきなりそんなことーー」

「彼」


 尚も受け入れようとしない男に彩菜はこともなげに、


「入って二週間で二体のリュウオウと会ってるのよ」

「………………おいおい、マジかよ」


 流石にリュウオウの件については知っているらしく、顔面蒼白にした男はゆっくりと話し始めた。


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