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リュウオウの神殿IV

 B2へはより警戒して下りる。

 潜伏している敵を判別する方法はないらしい。


『未熟なものならわかりますが、彼女のように熟練者だと実際に動くまでは……』


 先ほどは敵が一人だったため、攻撃方法は銃だった。

 おかげで反射的な行使でも受け止めることができたのだ。

 あれが熟練者による能力だったら……。


(貫通されて死んでたな)


 盾が間に合わなかったら銃でも死ねるが。

 避けることが必須な攻撃と比べたらいくらかマシだ。


『個々によりますが、能力の方が感知しやすいので銃の方が厄介です』


 セツの言葉だ。

 感知とは何ぞやの身としては理解できない。

 レオンの時、全然わからなかったし。


(なまじ見えてたから感知できなかったとか?)


 セツが特別な可能性もある。

 熟練度の差も当然あるだろう。


(あーくそ、わからないことだらけだ)


 想定外の事態だが、監視任務に就けるのなら訓練の時間を増やしてほしかった。


(……そこら辺も自分で考えて動けってことか)


 学生ではあるものの、現場組ーー兵士の役目も担っているのだ。

 己の命が関わっている自覚が薄すぎる。


(結局、わかってなかったんだよな)


 そりゃ、レオンたちに厳しい言葉をぶつけられるさ。

 その上でこれなのだから救いようがない。


(反省は後だ。今は目の前のことに集中しよう)


 とにかく周囲の気配を探り続ける。

 違和感があれば全方位に盾を展開できるように。


「っ!」


 セツを見る。彼女も俺を見ていた。

 頷きあい、より小声で会話する。


「声が聞こえる」

「下ですね」


 正面に大きく開かれた階段、その奥から声が聞こえる。内容まではわからないが一人ではない。

 

(言い合ってる?)


 時折怒声が混じっている。

 少なくとも穏やかな雰囲気ではない。


「セツ、下には何があるんだ?」

「……祭壇です」


 やはり、蒼炎のリュウオウのではなく、蒼炎のリュウオウを祀っているだけに感じる。

 だとすれば、リュウオウに連なる物はなさそうだが……。


(研究資料でもあるんだろうか)


 祀る以上、蒼炎のリュウオウについて詳しい団体が関わったに違いない。

 中には生態や住処に関する情報もあるかも。

 だが、


「……調査は終わってるんだよな」

「遠い昔に」


 学園が存在を把握し、危険だと警戒している組織なら知っているのではなかろうか。

 それとも、それすら知らない木っ端な組織なのか……。


「さっきの女の人、知り合いなのか?」


 聞かないでおこうかと思ったが今は情報が欲しい。

 セツは僅かに目を伏せ、


「昔の知り合いです」

「学園での?」


 セツは無言で首を横に振る。

 学園外での知り合いが能力を?


「なら、彼女が所属していそうな組織については」

「……わかりません。ただ、大きな組織は嫌いそうな気がします」

「そうか。となると、調査済みなのを知らずに調べに来たって可能性が高いか」


 耳を澄ます。

 リュウを連想させる音は聞こえない。


(下手に動くと、いらない騒動を引き起こすかもしれない)


 先ほどの女性が自死を図った時、嫌な予感がした。

 未だに肌を何かしらが這いずっているような気持ち悪い違和感が残っている。

 この感覚はあの大剣を握った時に近い。


「セツはどう思う」


 意見を尋ねる。

 セツは色々なことを知っているし、何より経験値でいえば雲泥の差があった。

 俺の勘より余程信用に足る。


「隆治さんに従います」


 しかし、セツは俺にぶん投げてきた。


(おいおい、マジかよ)


 セツの行動は会ったあの時からずっと変だった。


 何故、彼女は俺の横にいようとするのか。

 何故、俺の言葉に従うのか。

 何故、真っ直ぐ突き進めたのか。


 B1で敵を制圧する時、セツは何の躊躇いもなく走り出した。

 銃弾は俺が何とかしてくれると信じているかのように。

 どうかしている。信頼関係など全く築けていないのに。


(俺は信じたいから信じてるけど)


 セツはそんな衝動的な人間か?

 それすらもわからない。その程度の付き合い。


「……なんで、俺なんだ」


 彩菜の、クラスメイトたちの態度でわかる。

 セツは明らかに浮いていた。

 距離をとり、リュウに好意的な態度をとっていた。


(隆治さんはリュウだからとか言われたらどうしよう)


 リュウ認定されたら……それはそれで納得できて楽かもしれない。

 期待に添えず申し訳ないが。

 少なくとも自認は人間だ。


「…………私は、見極めるだけ」


 ポツリと呟く。


(見極める)


 金色のリュウオウの目的に対し、彼女自身が発した言葉だった。

 あれは金色のリュウオウではなく、彼女自身のものだったのか?


(ポッとでの俺を?)


 運良く湧いてきた男にしては評価が高い。

 光栄を通り越して実感が湧かない。


「だけってのは寂しいな」

「…………」


 軽口を叩くが、セツの表情は晴れない。

 わざとらしくため息を吐く。


「付き合ってもらうからな。俺のやりたいことに」

「っ!」


 そう言ってニヤリと笑う。

 わからないことだらけだ。一つや二つ増えたところで何も変わらない。

 従うっていうのなら付いてきてもらおう。


「嫌な予感がする。行くぞ」


 返事は聞かず、階段に向かって歩き出す。

 セツは一瞬遅れてから軽やかに地を蹴るのだった。

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