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食堂

「いやはや、何度見てもでっかいなあ」


 食堂を前にし、独り言を呟く。

 ナカツノクニ学園の食堂は大きい。知らない人が見たら立派な教会と勘違いするのではないだろうか。

 まず天井が高い。圧迫感がなくて良いが、掃除はどうするのだろうか。能力を使って?

 次いでステンドグラスがオシャレ。学校全体では別に西洋風が目につくことはないが、ここに関しては明らかに日本のそれっぽくはなかった。


(まあ、和風にする理由はないか)


 日本語が通じるためてっきり日本人メインかと思いきや特別多いわけでもなかった。

 ただ、過去の研究資料に日本語の物も多いため、第二外国語として取得している人が多いらしい。

 ちなみに意思疎通に関しては能力で補助がされており、全くできなくても問題ないとか。

 便利すぎて人間世界で発表できたら世界が変わるね。

 範囲は広くはないらしいが、学園を覆えるなら十分だろう。


『能力の自動発動?』

『常時発動の方が正確ね。熟練された能力は呼吸同然に扱える』

『彩菜だと炎だよな? 危なくね?』

『攻撃系の場合は反射で放つ感じかしら』

『……お化け屋敷とか行っちゃダメなやつだ』


 彩菜との会話を思い出す。

 俺はまだ意識しなければ使えない。というか、使えることに違和感すらある。

 操ること自体はスムーズなのだが、手の届かない空間に手があるみたいな……言いようもない感覚なのだ。

 ちなみに一部例外を除き、学園内では特定の場所以外での能力発動は御法度。違反者にはこわーいお仕置きがあるとか。


(……のはずだよな)


 食堂の中、食券機の前で繰り広げられるバトルを見つめる。

 お昼どころか朝飯なのだが、とあるメニューを巡ってどちらが買うか争っているらしい。

 そして、段々とヒートアップしていき、能力バトルへと移行した。

 周りの生徒はそそくさと避難したので、危険地域にいるのは俺だけ。


(良い練習かも)


 指導教官が決まっていない俺は能力を鍛える時間がない。

 とはいえ、部屋の中で転がしているだけってのも。

 なので、騒ぎに託けて使うことにした。

 流れ弾を風の盾で防ぐ。範囲、速度、形状、出来る限り変化させる。


(無形であろうと感覚的な“形”はある……って話だったよな)


 彩菜だけでなく、授業でも言っていた。

 だとすればおかしい。


(俺の“形”ってなんなんだ?)


 感覚でわかるとの話だったのに、全くもってわからない。

 割と好き勝手にできる。最初は盾っぽくしたかは防御系かと思ったけど、細く鋭くしたら殺傷力も高そうだ。


(……言わないでおこう)


 最初に盾の形と説明したため、そのように登録されたとのこと。

 その場合、基本的役割は防御。速度や耐久度によって前方支援か後方支援か決まるとのことだった。

 生憎、リュウをヤル気はない。支援に努めさせてもらおう。


(まあ、それはそれで重宝されそうだし良いよな)


 トップクラスの生徒は往々にして攻撃よりな能力らしい。

 性格は千差万別なれど勇ましい者が大半。

 下のクラスの生徒らが支援するのは困難を極めるので、むしろ待ち望んでいたまであると言われた。

 でも、俺一人じゃん? 体一つよ?


(……遠い未来のことは考えないでおこう)


 目を逸らすことにした。

 知らないことを悩んでも仕方がないし。

 それよりも目の前のことだ。

 二人の生徒取っ組み合いは激しさを増す。

 いい加減止めないとと思ったその時だった。


「いい加減にしなさい」


 燃えるような紅色の髪を靡かせ、瞬く間に二人の生徒を打ち払う女性が現れた。


「お見事」


 鮮やかな手際を褒める。

 だが、女性は不服そうだ。


「お見事、じゃないわよ。止めなさいよね」

「オレ、テンコウセイ、ムズカシイ」

「馬鹿にしてるの?」


 三白眼で睨んでくる女性ーー円野彩菜はため息を吐く。


「はあ、今後は止めてよね」

「はーい」

「返事だけは良いんだから……。それで、何を食べるの?」

「そういえば、こいつらは何で争ってたんだ?」

「これ」


 彩菜が食券機のとあるメニューを指す。


「スペシャルサンド……」

「数量限定のスペシャルサンド。いつも奪い合いが起きてるわ」

「へえ、そんなに美味しいのか」


 彩菜は小首をかしげた。どうやら、食べたことはないらしい。


「私、朝はご飯派だから」


 そう言って鮭の塩焼きセットのボタンを押す。


「鮭か、良いな」

「ふふーん、オススメよ」


 何故か得意げな彩菜。

 まあ、いいか。


「じゃあ、俺もそれにするか」

「毎度あり〜」


 だから、何故か彩菜が……。可愛いから良いけど。


「じゃあ、スペシャルサンドは僕がもらとくね」


 どこからともなく現れたテオがスペシャルサンドのボタンを押す。


「僕はプレッツェルにしようっと」


 更に、長身のテオの後ろからルーシャスが出てくる。

 プレッツェル……響きがオシャレ。明日食べてみようかな。


「…………」

「い、いつの間に」


 気配を感じ、振り向くと既にオボンを持っているセツがいた。

 確かに最初はいなかったのに、誰よりも早く注文を終わらせていた。


「あ、セツ! おはよう!」

「おはようございます」


 あれ以来、すっかり仲良くなったらしい二人は朗らかに挨拶を交わす。

 良きかな良きかな。


「はい、しっかり食べなさいね」

「ありがとうございます」


 食堂のオバ様からご飯をいただき、席へと向かう。


「こっちこっち」


 彩菜が手招きする。

 近づくと彩菜と向かい合って座るセツが無言で横の席を見る。


「ここ、良いか」

「はい」


 確認して座る。


「彩菜ちゃーん、横座っても「は?」……柳瀬きゅんの隣にしよーっと」


 一瞬、彩菜の真似をしようかと思うも流石に可哀想なのでやめる。

 最後にルーシャスが、


「僕はここにします」


 テオの向かいに座る。

 彩菜の隣が空いた形だ。


「ルーシャス、こっち」

「え? で、でも、僕はここで」

「お い で」

「……はい」


 ……イジメじゃないよ。愛情表現だよ。


「まんま舎弟やな」


 テオが呟く。

 心の中で頷く。現実でやったら……、


「ふふっ」

「ほんますんません!」


 彩菜に睨まれるからね。


「いただきます」


 平謝りするテオをBGMに朝食に手をつける。

 ちなみに、レオンは朝食は自室で食べるらしい。


「朝弱いねん」

「あらま」


 ちょっと意外なことを知った朝だった。


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