表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/85

 昔からよく見る夢がある。

 青く澄んだ水の中を漂う夢だ。

 海、なのだろうか。水面は見えず、底も見えない。

 他に生き物はおらず、岩や水草などもない。本当に水だけなのだ。

 夢だと気づく時もあれば、そうでない時もある。

 何にせよ、流れに身を任せるほかない。


(綺麗だな……)


 光と静寂は儚げな美しさを演出していた。

 だが、俺は“美しい”とは思えない。

 綺麗ではあるが美しいとは言えない。

 言葉の定義ではなく、俺の感性での話だ。

 綺麗との言葉にはどことなく消えいく切なさがある。

 美しいとの言葉には生命の輝きがある。

 だから、俺は二つを分ける。


(ここは、綺麗だけど、美しくはない)


 この夢が深層意識を表しているのなら己に失望する。

 俺の理想は、“美しい”だからだ。

 ここには生命が足りない。

 こんな世界では満足できない。

 だからこそ願う。

 生命よーー


(ーー咲き誇れ)


 言葉は意志、夢だというのなら変化が起きて然るべき。

 だが、頑なに世界は姿を変えない。

 わかっていたことだ。幾度となく繰り返してきたことだから。

 だから、この先にいる存在も知っている。


(相変わらず陰気な姿だな)


 目の前に現れた黒い塊に苦笑する。

 塊……モヤと言った方が適切だろうか。

 視界納めきれない程、巨大な黒いモヤは決まって現れる。


(うーん、俺が抱える不安とかが具現化したとか?)


 思えば、昔より大きくなっている気もする。

 精神科の先生に診断してもらいたい気分だ。

 不平不満はないはずだが……。

 人生は結構楽しんでいるつもりだ。何より最近は刺激的な毎日に心躍らせている。


(ストレスとかならあるいは)


 身体への負荷はままあるだろう。

 能力やらも使えるようになったし。


(そういえば水じゃないんだな)


 俺が操るのは風だった。

 漠然と感覚で理解しているだけだが、皆そうらしいので確定で良いだろう。

 とはいえ、風ではなく透明な盾を操っているイメージなので実感は薄いが。

 夢のこともあり、水関係かと決めつけていた。

 パーソナルな部分と関係はないのだろうか。


(性格に合わない能力が開花するケースあるって言ってたか)


 あの大剣の気まぐれなのだろうか。


(……明らかに自意識を持ってたよな)


 意識に語りかけてきた声、あれは大剣で間違いないだろう。

 彩菜も声を聞いた気がすると言っていたし。

 最古のリュウ殺しであり、学園創設のキッカケとなる遺物。

 胡散臭いことこの上ない。そもそも、残された伝承など話半分に聞くべきことだ。

 権力側の都合の良い様にいくらでも改変できるし、一部の情報を伏せている可能性ある。

 目の前のことと合わせながら、納得できる答えを出していこう。


(……まあ、もう関わる気はないけど)


 あの大剣に会いに行くつもりはない。怖いし。

 ただ、その日は来るかもしれない。学園のことを何も知らないからだ。


(なんつーか、壮大な人生になってきたなあ)


 リュウに比べればちっぽけな話だが。

 それに比べれば、この黒だって可愛いモノでしかない。


(何せ、俺のパーソナルなモノでしかないもんな)


 他人の思惑が交差する現実よりシンプルなのは当然であろう。

 そう思い、なんとなしに手を伸ばす。

 今まで触れようとしたことはない。それで何かが変わるわけでもあるまいしと。


(っ!?)


 だが、変化はあった。

 黒の中に瞳が、金色の瞳が現れた。

 あの金色のリュウオウとは違い、重く鈍い輝きを放つ。


『ーーーー』


 瞳は言葉を発さない。

 けれど、意志は感じ取れる。

 訴えかけている? 観察している? 助けを求めている?

 そのどれもが正解で、どれもが不正解な気がした。

 静寂の中に俺と瞳だけがあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ