テオ
「僕の名前は国木テオドールや。テオって呼んでな」
茶色の髪の男性ーーテオは気さくに話しかけてきた。
180半ばあるであろう身長に、スラリと長い足、人懐っこい笑顔も相まっているだけで場が明るくなる。
「あ、パパがな、関西出身やからこんな口調なんや。よーエセ関西弁言われるわ。柳瀬君はどこ出身?」
「神奈川です」
「はー神奈川か。ええなあ、行ってみたいわ。横浜やろ箱根やろ」
指を折りながら行きたい場所を数える。
「テオは日本には」
「行ったことないねん。正確には幼少期あるらしいんやけど覚えてないんや」
そやそやとテオは彩菜の方を向き、
「彩菜ちゃんは北海道やっけ。北海道も行ってみたいんよ。雪まつりとかめっちゃ興味あるねん」
「……寒いの苦手でしょ」
「はっはっは、遊びなら暑かろうが寒かろうが問題なし、オールオッケー。そんでーー」
「コホン」
テオの後ろ、部屋の中から咳払いが聞こえた。
「あーすまんすまん。つい盛り上がってしもうた。ほらほら、入って入って。会長様がお待ちや」
手巻きしてくる。
彩菜を見る。頷く。
用事があるのは会長様なのか。
(あのプラチナブランドの人か)
用事はわからないが、教室でのやり取りから理不尽な人ではないだろう。
ここで断っても角が立つし、話ぐらい聞くか。
「お邪魔します」
「自分家やおもてゆっくりしてや」
俺に続いて彩菜、セツが入ろうとするが、
「ごめんな。君はお呼びやないねん」
テオがセツを止める。
「ちょっと、別に良いじゃない。あくまで生徒会は生徒を代表する組織よ」
彩菜が嗜める。
生徒会だったのか。まあ、会長呼びを考えたら自然か。
「君の言う通りやけど、時と場合によっては遠慮してもらうこともありうる。不思議なことやないやろ? 柳瀬君の保護者とかならええけど……流石にちゃうやろ」
見た目からして良くて同い年、多分年下だ。
保護者とは考えにくい。
けれど……。
「保護者です」
「はい?」
テオが素っ頓狂な声を上げる。
セツは堂々とした態度で繰り返す。
「私は隆治さんの保護者です」
真っ直ぐな目が怖い。
そんな堂々と嘘つけるの? 嘘つけないから黙っちゃうタイプだと思っていたのに。
「いやいや、いくらなんでも無理やろ」
「無理とは?」
「え、えー、保護者どころか保護者が必要な立場やん」
「認識の違いです」
「認識の違いで済むん!?」
テオが気圧されている。
「……ほんま?」
俺に尋ねる。
半信半疑の様子。凄いな、よく半々にまで持っていけたな。
感心すると同時に不思議になる。
何故、そこまでして俺についてくるのか。
不思議系少女だからあまり気にしていないが……。
(まあ良いか)
世話になっているし、これからもなりそうだ。
「うん、保護者保護者」
「マジかいな!? 君、おもろい人生すぎひんか!」
「最近、急激に面白さが加速してるんだよ」
「むっちゃ羨ましいわ! 僕にもこんな可愛い保護者がいてくれたらなあ」
「テオならいくらでも寄ってくるんじゃ?」
外見も性格もモテる人のそれだと思う。
「ふっ」
彩菜が鼻で笑う。
俺の見立てが間違っていると言わんばかりに。
「ちょ、こら彩菜ちゃん。それはあかんで。傷つくから」
「…………」
「ガン無視!?」
もしかしてテオってイジられ役?
人は見た目によらないな。
「コホン!」
再び、会長が咳払いする。
長引きそうだったので当然か。
「あー、会長爆発しそうやな。しゃーない、君も入っておいで」
「…………」
セツは無言で扉を潜り、俺の横へ。
保護者というかボディガードのような雰囲気かも。
彩菜はソファーに腰を下ろし、テオは席に座る会長の横へ。
「まずは、よく来てくれた柳瀬隆治君」
「こちらこそ、お招きに預かり光栄です」
それっぽい言葉で返す。
貴族様のような会長を前にしても緊張はない。
何なら待ちぼうけを喰らってた人かと笑ってしまいそうになる。
「テオがすまなかった。余計なことばかり口にする奴でな」
「友好関係を結んでただけやん」
「ふざけていただけだろ」
テオの言い分を一蹴し、少し間をあけ、
「遠回しなのは性に合わない。故に単刀直入に聞こう。君はーー」
ーー敵か。




