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クラスメイト

 教養科目を終え、専門科目の時間になる。

 前者は学力に合わせ、後者は能力の力に合わせるので……。


(うーん、居心地が悪い)


 俺のカードの色は金。これは最高クラスを意味するらしい。

 つまり、今目の前にいる人達は……。


(上位者、学園の主戦力か)


 人数は俺と隣にいるセツも含めて20名程度か。

 彩菜やルーシャスの姿もある。

 皆、俺たちが教室に入ったと同時に口を閉ざした。

 転校生は珍しいらしいが、沈黙の理由はそれだけではないだろう。

 彩菜は涼しげに、ルーシャスはバツが悪そうにしている。


(……彩菜は怒ってるか)


 薄らと青筋が立っていた。

 言いつけは破るわ、危ないことはするわ、目立つところでリュウに絡むわ。


(怒られない方がおかしいわな)


 むしろ、見限られないだけ感謝するべきだろう。

 彼女の評価にも影響するわけだし。


(後でもう一回謝っておこう)


 でも、同じことになったら会いに行っちゃうだろうなあ。

 直せないのに謝りはするってタチが悪い。


(すまない。迷惑かける)


 心の中で先に断っておく。もちろん、意味はない。


「柳瀬隆治」


 扉付近から動かない俺に中央に位置する生徒が声をかけてきた。

 視線を彼へと向ける。

 整った顔立ち、プラチナブランドの髪色、澄んだ碧眼……正にお貴族様と呼ぶに相応しい。

 座っているだけなのに、風格が滲み出しており、リーダーの気質をひしひしと感じる。

 おそらく、彼がこのクラスの中心的存在なのだろう。

 証拠に、彼が声を発した瞬間、刺すような視線は解かれた。


「座席は決まっていない。好きなところに座ると良い」


 目力が強いため威圧感はあるが、言ってる内容は転校生への配慮だった。


「決まらないようだったら隣に座るが良い」


 そう言って隣の席を見やる。

 と同時に騒つくクラスメイト。予想外の事態らしい。


「あ、ありがとう」


 この空気の中、隣に座る勇気は……あるにはあるが、そもそも座りたいわけではない。


「でも、ここにするよ」


 またもざわざわと騒ぐ生徒。

 どちらにせよ反感を買うパターンだったか。

 すぐに座らなかった時点で詰んでいた。


「…………」


 我関せずとばかりに突っ立っていたセツは迷うことなく俺の隣に座る。

 三度色めき立つ。

 彩菜の青筋が濃くなる。後ろに座るルーシャスは恐怖からか静かに移動する。


「……俺なんかの隣で良いのか?」


 手持ち無沙汰だったので聞く。

 セツは俺の目を真っ直ぐ見ながら、


「隆治さんの隣が良いんです」


 四度目……とはならなかった。

 声が小さく、他の生徒には聞こえなかったようだ。


(なつき度が上がったな)


 セツと名付けてから距離感が近くなった気がする。

 これは……何なんだ?

 セツの表情を伺う。


(……全然、わからん)


 無表情。

 先ほどにしても声のトーンに変化は見られない。

 好意……と考えられるほどモテる人生ではなかった。


(リュウ好きらしいし)


 様子を見るに友達らしい友達もいなかったようなので、初めて出会った感性の似てる人に付いて回ってるって解釈で良かろうか。

 リュウ好きが広まったため、俺も友達を作るのは難しそうだし、ありがたいっちゃありがたい。


(リュウに詳しいしな)


 色々と話を聞けるかもしれない。

 他の生徒には聞きづらい話だし。

 あの日の行い一つでこれだ。想像以上にリュウとの確執は大きいようだ。


(金色のリュウオウ……)


 荘厳なるリュウを思い出す。

 圧倒的な存在感、美しさ、そして内に秘める強大な力。

 人が恐怖を覚えるのは当然だ。

 だが、皆の反応は天敵に対するそれや仇に対するそれに似ている。


(ま、リュウにも性格悪いやつはいるよな)


 知的生命体なら余計に。

 恨みを買う行いをするリュウも珍しくないだろう。

 だとしてもーー、


「美しいものは美しいんだよな……」


 心の奥底から溢れ出る感情には嘘をつけない。

 俺がやるべきは迎合することではなく、芯を曲げないことだろう。

 どちらにも良い顔をするのが一番良くない。俺はそれをよく知っている。


(次に会えるのはどんなリュウかな)


 探るような視線は無視し、まだ見ぬリュウへと思いを馳せるのであった。


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