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エピローグ。またの名をプロローグ
その日、少女は太陽を見上げた。
空に一条の光を差す太陽は以前と変わらず奇怪な姿をしている。男が膝を抱えて丸まっているような形だ。
しかし少女はその太陽から目を話せなかった。どうしてもそれが愛おしく見えて仕方が無いのだ。
尚も少女は傷だらけの体で太陽を見つめ続ける。煌々とした光がジリジリと顔を焼き付けても目を逸らそうとはしない。
世界はボロボロになってしまった。少女の周りには人が存在せず、生物の気配すらも無い。かつて国だった場所は活気も何も無く、世迷言すらも出てこない。
だが、太陽は輝いている。何にも遮られることの無い地平を果ての果てまで照らしている。
やはりこの光は愛おしい。そして誇らしい。
そう思ったと同時に、随分と長い間佇立していた少女は満足げな表情で悠々と歩き出す。
笑みを浮かべた少女の顔は仄かな橙色に染まっていた。