002 厄介ごとの気配
世界観や設定を説明するのって、難しいですよね~。
物語から外れて、延々と説明をするのも、雰囲気が壊れるし。
話の中で、少しずつこの世界がどうなっているのか、主人公の置かれている状況などがわかるようにできればいいのですが。
力及ばず、説明が多くなってすみません。
「親父が呼んでいるんなら、無視はできないな~。今度はどんなやっかいごとなんだい、兄さん」
聞いても、兄の答えは要領を得ない。
俺が呼ばれるときは、たいてい面倒が起きた時だ。
というのもほとんどの場合、俺がいなくてもどうとでもなることがほとんどだからだ。
親父、シュッテン子爵は広大な領地を治めている。
書類上は。
ただ、そのほとんどが森や山で、人口は非常に少ない。
一応、親父のいるのは町となっているが、人口は500人にも満たない。
他の領だったら村レベルだろう。
さらに領内には4つの村があるが、150~250人程度。
まさに村を維持するのにギリギリの人数しかいないのだ。
親父はなんとか人口を増やそうと、領外から移住を募ったりもしているみたいだが、環境がけっこう厳しいのだ。
畑で作物を作ろうにも、森から野生動物が押し寄せ、慣れていない人の畑だとあっという間に食い散らかされてしまう。
さらに問題なのが、広大な森や山々の中に、いくつもダンジョンがあるのだ。
ダンジョン。
そこからあふれ出るのは魔物である。
普通の野生動物と違うのは、体内に魔石を持っていること。
これがダンジョンから定期的にあふれて出てきてしまう。
たいていは人里に近づくまでに死んでしまうが、魔石が残される。
これを野生動物が食べると、そいつらまで魔物化してしまうのだ。
おかげで村はよく魔ネズミや魔イタチ、時には魔猪や魔熊などが出没する。
ただ、昔からの住民は慣れたもので、普通の野生動物ならその辺のおばさんたちがボコボコにしてその夜には食卓に並べられる。
西の村に住むオルトさん(42歳・女性)は牛の放牧場所の柵を補修しているとき、森から200キロを超える猪が突進してきたが、持っていた杭うち用のハンマーで一撃、頭蓋骨を砕いて仕留めたそうだ。
子どもたちも10歳になる前から、森と畑の間に罠をしかけ、ウサギや野ネズミ、時にはキツネなどもしとめている。
そんな土地だから、新しく移住してきた人はほとんど定着せず、すぐに逃げ出してしまう。
ただ、元々の住民たちの能力が変な方向に振り切られているせいで、治安はいいし、猪や熊程度では問題にならない。
しかし魔物化しているなら話は別だ。
今日、おれが捌いていた魔猪のように、魔獣化すると基本的に巨大化する。
森にいる野生のイノシシは150キロから大きくて300キロ程度だろう。
だが魔猪は500キロオーバーは当たり前、今日の奴は800キロを超えている。
こうなると普通の住民たちでは手に負えない、
各村にいる狩人が退治することになるが、それでも手に負えない時は領主である親父や兄貴にお鉢が回ってくる。
ただ、巨大なだけなら対処できるが、魔石の力を使いこなし魔法などを使ってきたり、身体を硬質化させるような特殊な変化をした個体が出た時は、俺に声がかかる。
こいつらは放っておくと、村どころか領主家のある町を一晩で壊滅させかねない。
だから見つけたら狼煙などですぐに知らされるはずだ。
だからなぜわざわざ兄貴が呼びに来たのだろう、といぶかしく思えたのだ。
「まあ、今日これから山を下りても、すぐに暗くなるだろうから、小屋に泊まって朝出発するか」
それほど焦る必要もなさそうなので、とりあえず解体した獲物を大きな山刀でぶつ切りにしつつ、夕食の準備に取り掛かった。
お読みいただき、ありがとうございます。
どうもスタイルや文体が定まりきらず、読みづらい部分もあるかと思いますが…。
次話もすぐに投稿予定です。