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異能力者達の午後  作者: ゆーろ
9/32

復讐者達の週末

どんどこどんっ!どんどこどんどんっ!

0:『復讐者達の週末』





0:登場キャラ



カイ:男


アレジ:男


エマ:女


シャオ:女


ハゼット:男


ラインハルト:女


グローザ:女




0:んぴ




0:『アレジ。カイ。エマ。ハゼット。シャオ』







カイ:中央解放戦線。赤い林檎



アレジ:…



カイ:俺と、エマの故郷を奪った。クソ野郎どもだ



アレジ:…ああ。よく、解ったよ



カイ:……。



エマ:復讐だなんてくだらないって、アレジはそう思う?



アレジ:…いいや?思わないよ



カイ:…そうか



アレジ:人を突き動かす感情は様々だ。僕はそれを否定しない



カイ:ありがとう。



アレジ:君は、彼らの何を感じて。そう思ったんだい



カイ:端的に言えば、故郷を奪った。これに尽きる



アレジ:…。そっか



エマ:私とカイが通ってる学校は駅を三つ超えた先でさ。たまたま、助かった



カイ:…どうやら、あのくそ林檎は。こう宣言してるらしい。異常体の人権を確保する。って



アレジ:うん。いい事じゃない



カイ:人権確保の為に人を殺すのがか。こっちの人権はどうなる



アレジ:それはケースバイケースだ。大きい目で見れば、異常体を迫害する人間の方が割合がずっと多い



カイ:人種差別からまるで学んでない。異常体を取り巻く差別問題も、俺からしたら知ったこっちゃない。



カイ:それは、俺が異常体を恨まない理由にはならない



アレジ:…馬鹿みたいに、真っ直ぐだね



カイ:…。俺は、異常体を殺す為にここに来た。それ以外は、どうでもいい。



アレジ:…そっかぁ…。じゃあ、次は僕の番だね



カイ:…ああ。



エマ:…私、いない方がいい?



アレジ:いいよ。エマにも聞いて欲しい



エマ:うん



アレジ:律儀なカイのことだ、どーせ言ってないんだろ



カイ:…信用してるからだ



アレジ:ありがとう。じゃあ、単刀直入に



0:



アレジ:僕は、異常体だ



カイ:……。



エマ:……え?



0:場面転換



0:第二病室



シャオ:ハゼット。怪我、大丈夫?



ハゼット:ああ。お陰様でな。かなり良くなったとも



シャオ:よかった。ほんと、よかった



ハゼット:ふは。そう簡単に死んではやらんよ。いや実際死ぬかと思うたが



シャオ:……ハゼットは、どうしてアーヘンに来たの



ハゼット:む。どうしたね、藪から棒に



シャオ:私はアーヘンを卒業したら、中央には行かずエンドベルに行く



ハゼット:超名門大学じゃないか。アーヘンに来たのは経歴を飾る為か



シャオ:アーヘンだのローウェンだの中央学院卒はどこの企業でも学校でも有利な資格だから。実際、異常体についての見識も深まったし



ハゼット:ああ。実に勤勉だとも。見習いたいくらいだ



シャオ:そ。私このまま行けばエリートコースまっしぐらなんすよ。研究職で、危険とは縁遠い一等地に家を構えて暮らすんだ。君とは大違いだろ



ハゼット:ふむ。何が言いたいのだ?



シャオ:君は、なんの為にアーヘンに来た。なんの為に中央に行く。なんの為に、命を擲つんだ



ハゼット:……私は。そうだな



0:ハゼットは椅子に腰かけた



ハゼット:私には、殺すべき人間がいる。



シャオ:…



ハゼット:メビウス・ワーグナー。私の、実の姉だ



0:場面転換



0:第一病室



エマ:カイ?知ってたの?



カイ:知ったのは三日前の実地遠征でだ。予定にない異常体と交戦中。無闇に突っ込んだ俺をアンドレイが助けてくれた。



カイ:異常性を使って。



エマ:…。アレジ。



アレジ:うん。本当だよ。そこに何も嘘はない



エマ:…聞かないことは山ほどあるけど。



カイ:ああ。まずは、なぜお前がアーヘンに来たのか。それを聞かせてくれ。金のためってのは、嘘だな



アレジ:うん。嘘だ。僕は。この世を正したくてアーヘンに来た。



カイ:ざっくりしてんな



アレジ:ざっくりしてんのよ、実際。異常体が迫害されるこの世はおかしい。そうでなくても。誰かが誰かを、陥れる。間違っているのは人そのものだ。



カイ:…



アレジ:僕は、異常体でありながら、君達人類の正しさを否定する。だから、カイ。エマ。



アレジ:君達とは、価値基準が合わないかもしれない



エマ:…



アレジ:最初、カイが僕に言ってた事だ。その通りだと思う。お互いが不快になってしまう前に。終わりにしよう



カイ:待てよ



アレジ:なに



カイ:お前がどうやって監察局をだまくらかしてここに居るのか、とか。お前の異常性の詳細とか。そんな事は聞かない



アレジ:うん



カイ:ひとつだけ。これに答えろ



エマ:カイ…



カイ:お前は、俺の友達か



アレジ:――――…



0:アレジは天井を見つめた



アレジ:僕にとっては、そうだよ。



アレジ:でももし。僕が本当に、あのまま。こうならずに君達と出会っていたのなら。



アレジ:きっと。君たちにとっても、そうだったんじゃないかな



カイ:…。アレジ。絶対に、俺と、エマと。お前で。中央に行こう



アレジ:…え?



カイ:お前にとって、俺たちが友人なら。もうそれ以上は何も言わない。お前の夢も、俺が手伝う



エマ:わ、私だって!手伝うよーっ。任せてっ



アレジ:でも君たちは異常体を憎んでるんだろう?僕とはまるでソリが合わないじゃないか



カイ:俺は確かに異常体を憎んでる。多少、差別視してる節もある。でも、そんなの知ったことか。



カイ:友達は、別だ



エマ:そーそーっ。デザート別腹理論っ



カイ:ああ。別腹だ。だからアレジ。お前の夢は。俺達が手伝う。



エマ:うんっ



アレジ:……君達の目標は。手伝わなくていいのかい?



カイ:これは俺と、エマの問題だ。お前を巻き込めない。文字通り命懸けだからな。本当はエマも置いていきたいくらいなんだが



エマ:ちょっと



アレジ:…はは。よっと。ぐわしっ



0:アレジは二人を抱き抱える



エマ:ちょっ、アレジっ!



カイ:お前っ、まだ腕治ってねぇんだから



アレジ:だいじょーーぶっ。君達なら、君なら。きっと出来る。僕が保証するっ



カイ:…おう…!



エマ:ふふん。任せんしゃい!



アレジ:僕と君達の行く先はきっと違う。違うけれどもっ。それでも僕らは友達だっ。



カイ:あたぼーよ



アレジ:それに。カイ、君はちょっと人を頼らなさすぎるきらいがある



エマ:そーだそーだ。いつも俺が俺がって



アレジ:昔の僕にそっくりだ。いつか、このままじゃ何か大事なものが手からこぼれ落ちる。救いきれない物がある



カイ:歳上風に言うな、ほぼ年齢変わらんだろ



アレジ:やかましいっ。



カイ:ってぇなぁ!やめろっ!



アレジ:カイ。君には。エマも。シャオ、ハゼット、ラインハルト教官、アスカ教官も居る。たまには周りを頼りなよ



カイ:……。お前はどうなんだよ。アンドレイ



アレジ:はっ。言うまでもねーだろ。存分に頼りな



カイ:…じゃあ。頼りにしてるぞ。アレジ



エマ:おっ!?



アレジ:言ったね。今。アレジって



カイ:…ああ。言った



アレジ:はっ。じゃあ今日から相棒だっ。カイ



カイ:足引っ張るなよ。アレジ



0:二人は拳を合わせる



エマ:ぶーぶー。私も混ぜろこら



アレジ:男の友情ってのがあるのよ



カイ:そういう事だ



エマ:カイ取られたんですけどーっ!



アレジ:冗談だよ。君も、よろしく。エマ



エマ:へんっ。任せなさいっ



0:場面転換



0:第二病室



シャオ:つまり君は、姉を殺す為に。アーヘンに来た。と



ハゼット:ああ。そうだとも



シャオ:どうして姉さんを殺そうと思ったの



ハゼット:あれは。人を殺し過ぎた。私の中で最も許し難い行為は、人の尊厳を踏みにじる事だ。あれは、それを繰り返した



シャオ:…



ハゼット:あれの弟として生を授かった以上、あれの尊厳を踏みにじるのは。私の役目なのだ。他の誰にも、譲れんよ



シャオ:…そっか。中央に入って、姉ちゃんを殺したあとは。どうするの



ハゼット:決めてないが、どうしようか。



シャオ:……。君、死ぬだろ



ハゼット:ふむ



シャオ:動機が殺意のやつってのは、それが終われば高確率で自害する傾向にある。燃え尽き症候群とも言うらしいけど



シャオ:その目標が達成されてしまった時。君は、きっと死んでしまう



ハゼット:そうだなぁ。つい最近までは、そうだったかもしれない。それこそ、ここに来るまでは



シャオ:…



ハゼット:半年前。君は聞いたな。この口調や振る舞いは何なのかと。これは虚勢だ。私は従来、暴力も、命のやり取りも好まない



ハゼット:臆病者なのだ。私は。きっととうに、自分の掲げた目標に挫けている。のだよ



シャオ:…だっさ



ハゼット:ふはっ。そう、ダサいのだよ。私は



シャオ:…もうさ。中央入んの、やめない?



ハゼット:やめてどうする



シャオ:私は。アレジにも。カイにも。エマにも。ハゼット。君にも、死んで欲しくないんだ



ハゼット:死にに行くわけじゃない。私は、私のすべき事をする。他の誰でもない。きっと私にしか許されない殺生だ



ハゼット:揺るがんよ。これは



シャオ:…っ。なんでハゼットがそんな事する必要があるんだよ…!他の誰かに任せろよ!君よりずっと強いやついるだろっ。君弱いじゃんっ



ハゼット:強い弱いの話じゃない。私がするべきだと言う事だ



シャオ:だってそれ終わったら死ぬんだろお前!!



ハゼット:いいや。



シャオ:…



ハゼット:私にも。新しく夢ができた。ここに来て



シャオ:なに



ハゼット:君の夢の続きを、見たくなった



シャオ:…



ハゼット:中央に入って、それが終われば。そうだな。君の見る夢の向こう側を見る為に。生きらるだけ生きてみるさ



シャオ:なら。いい。



ハゼット:ああ。しかし、なんだ



シャオ:なに



ハゼット:寒くなってきたな



シャオ:…。うん。寒い



0:場面転換



0:『ハゼット、シャオOUT。グローザ、ラインハルトIN』



0:後日。教室



エマ:1998年11月30日。



エマ:今年最後の実戦任務を終え、夏もとっくに終わり、寒い空気が街を包み始めた



エマ:衣替えも終わり、皆それぞれ冬に備えた重装備で登校してくる。冬が来たって感じだ



エマ:いつもの寮を出て、いつもの校門を潜り、いつもの自販機でいつものジュースを買う



エマ:いつもの廊下を歩いて。いつもの教室に入ると。



エマ:もう見慣れた。いつもの皆がいる。何時からか。ここが私達の日常になった



ラインハルト:たばこたばこー。お。



グローザ:お疲れ様です



ラインハルト:よお。今日も早いな。しかしなんだ、お前もなかなか依存者だな



グローザ:そうでしょうか、教官には負けると思いますよ。



ラインハルト:はは、返す言葉も無いな



グローザ:教官。何吸ってるんでしたっけ



ラインハルト:煙草か?セブンスターだが



グローザ:そうですか。



ラインハルト:おう



グローザ:今日は何を食べました?



ラインハルト:えぇ?えっと。なんだっけ。メロンパン



グローザ:それだけですか



ラインハルト:え。えっと。あと。プロテイン



グローザ:…そうですか



ラインハルト:おう



グローザ:教官の好きな食べ物って



ラインハルト:なんだなんだっ。なんだってんだ。今日は珍しくよく喋るな。



グローザ:…そうでしょうか?



ラインハルト:さては私に興味津々かぁ?



グローザ:別にそんなんじゃないです。辞めてください



ラインハルト:ガチ感だすじゃん



グローザ:…



ラインハルト:照れるな照れるな〜っ



グローザ:触らないでください、火当たりますよ



ラインハルト:あっっづぅ!



グローザ:ほらもう…。はは、ありましたね。いつかも。こんな事



ラインハルト:あー。あったなぁ。懐かしい



グローザ:ですね



ラインハルト:ところでいまお前。笑ったな



グローザ:笑ってません



ラインハルト:この頑固もんが。それよりそろそろ学院祭だが



グローザ:ああ、なんかやるんでしたっけ



ラインハルト:あぁ。毎日クソほどしんどい訓練をしている褒美みたいな物だ。あと2日後だが。何か考えてあるのか?



グローザ:いえ何も。なんなら日程も今知りました



ラインハルト:お前まじでそういう類のものに興味ないな。



グローザ:縁遠いものですので



ラインハルト:あー。ふは、なんなら文化祭当日、私と二人っきりで過ごすか?



グローザ:・・・女二人でですか?



ラインハルト:女二人でだ



グローザ:教官、そういう趣味だったんですね



ラインハルト:違う!ただの冗談だ!ちゃんとつっこめ!



グローザ:はは、生憎冗談が通じるタイプじゃないので



ラインハルト:はい笑ったー!完全に笑いましたーっ!



グローザ:笑ってません



ラインハルト:いや今のはどう見ても笑っただろ!見苦しいぞっ



0:急いで煙草を吸い終わる



グローザ:私は先に戻ります。



ラインハルト:ったく、はいは〜い



グローザ:では、教官、また。



ラインハルト:…ふ。



ラインハルト:あぁ。また。



0:グローザが去るとアレジが物陰から現れる



アレジ:やあグローザ



グローザ:・・・



アレジ:仲良くしてるんだね、教官と



グローザ:悪いか



アレジ:別にいいんじゃない?学院生活謳歌してようって言ったのは僕だしね



グローザ:・・・



アレジ:グローザ、花火は四発上がったら決行する



グローザ:・・・分かった



アレジ:まさかとは思うと。土壇場でやっぱなし。は、ないよねぇ?



グローザ:…安心しろ。私はそういう風に作られていない



アレジ:ならいいけど。人ってほら。情が沸くものだから、ねぇ。君にそんなに感情があるのかしらないけど。移って、仕舞うから。ねぇ?



グローザ:…



アレジ:まぁ、それまでは楽しむといいさ。僕も楽しむから



0:アレジは手を振りながら校舎に戻る



グローザ:…あ。煙草、切れてる



カイ:(M)学院祭まで、あと一日



0:教室



ラインハルト:さあ!!



アレジ:はい!



ラインハルト:さあさあ!!



エマ:はいはい!



ラインハルト:連休だ!!



アレジ:わーーーい!



エマ:わーーーい!



ラインハルト:その前に、学院祭だ!!



アレジ:わーーーーーい!



エマ:わーーーーーい!



ラインハルト:その前に!私との模擬戦だ!全力のな!



カイ:よし…!



ラインハルト:カイはいい生徒だ



カイ:ありがとうございます!



アレジ:ありえねぇ



エマ:勘弁してほしい



ラインハルト:さーあ。弱音を吐いていても仕方がない。二人一組で私とガチンコ勝負だっ



アレジ:びゃぁぁああ…



ラインハルト:さーほれ。ペア組ペア組



エマ:やってらんねー。カイ、どーする?ラインハルト教官って二対一でどうにかなんの?



カイ:あー。すまん。エマ



エマ:?なに?



カイ:…その。なんだ



エマ:…?



カイ:…



エマ:あ。あーはーはーん。なるほど。私を捨てるのっ!



カイ:いや。そういうつもりじゃ



エマ:冗談だよめんどくさいな。いいじゃん。男の友情ってのがあるんでしょ。私、嫌いじゃない



カイ:ありがとう



アレジ:さーてー。カイ…は、エマと組むだろうし。グローザあいつどこいった



カイ:アレジ



アレジ:はいはいアンドレイじゃないアレジです



カイ:…



アレジ:え。なに?



エマ:(カイをこずく)



アレジ:なになに。え。こわい



カイ:その…なんだ。



アレジ:?



カイ:この模擬戦…なんだが…な



アレジ:はい?



0:時間経過



0:場面転換。校庭



ラインハルト:――で。成績ワンツートップが立ちはだかるか。しかし意外な組み合わせだ



アレジ:いやぁ、はは。同感です



カイ:なんだ。嫌だったか



アレジ:いいや、光栄だ



エマ:がんばれーーっ!カイーっ!アレジーっ!



ラインハルト:まぁいい。激務続きで鬱憤が溜まりに溜まった私は怖いぞ



アレジ:八つ当たりじゃん



カイ:八つ当たりだな



ラインハルト:やかましいっ。



0:急接近



アレジ:はっっや…!



カイ:く、っそ!相変わらず馬鹿みたいな運動神経してんなっ!



ラインハルト:ほれ。



カイ:ぶへっ!



ラインハルト:か弱い女の子と二対一だぞー。少しは粘れっ



カイ:ごぼゃっ…!



アレジ:女の子じゃないだろっ!おばさんっ!



0:防ぐ



ラインハルト:…。



アレジ:やばぁあ…



ラインハルト:か弱いを、否定しろよっ!!



0:吹っ飛んで地面を数回跳ねた



アレジ:まひるっっ!しんやっ!あけぼのっ!



エマ:あーーっ!アレジが!水面跳ねる石みたいになってるっ



カイ:こ、の…!鬼教官!



ラインハルト:予備動作でかすぎー



カイ:ぼへみぁっ…!



ラインハルト:なんだなんだ、こんなもんか。サウンドバッグの方がもっと頑張るぞ



アレジ:このあま…!



カイ:随分吹っ飛んでったな、大丈夫か



アレジ:大丈夫だ。けが人に容赦ないね



ラインハルト:私も顎割った次の日に口頭指示任務をこなした。我慢しろ



アレジ:ひぇー。ビットマン世代はやっぱブラックだ



ラインハルト:知った口を聞くなよ、ひよっこ。そーだそーだ、ハンデをやるよ。私はこれから、目を開けずに戦ってやる



アレジ:あー。これあれだ。舐められてる



カイ:ああ、やられっぱなしってのは



アレジ:あれだね



カイ:頭に来るってやつだ



ラインハルト:さあ来い凸凹ワンツー!



アレジ:よっしゃカイ!セクハラし放題だぞ!



カイ:馬鹿かお前は



ラインハルト:(M)足音、アレジのは跳ねるスキップの様な軽い踏み込み。カイのは、あからさまだな



カイ:ぉおおっ!



ラインハルト:猪が突進してるのかと思ったぞっ



カイ:ぶひっ



アレジ:豚じゃん



カイ:ったく。耳までいいのか、あの怪物は



アレジ:しょーがないっ。助っ人しょーかんっ



ラインハルト:…?



カイ:おいおい、これいいのか?ルール的に



アレジ:バレなきゃいーでしょ



ラインハルト:(M)足音が増えた。なんだ。普通にだめだろそれ



0:二人はとんでもない下衆顔



カイ:まあ、それもそうか。見えないなら反則もクソもない。悪ガキだな、お前は



アレジ:何言ってんの。僕ら、でしょうが



カイ:ぐへへへへへ



アレジ:ぐへへへへへ



ラインハルト:(M)え…?なに?こわいこわいこわい、なにこいつら。こわい。教え子の笑い声ではない



0:耳元で叫んだ



エマ:ポテトが半額でーすっ!!



ラインハルト:ぎゃああああああっ!



アレジ:よっしゃ間抜け面!



エマ:手は出してませんっ!ポテト半額なだけっ



カイ:行くぞアレジ!



アレジ:あいあいさー!



エマ:いけーーっ!



ラインハルト:やられたな、これは…!



カイ:ワン!



ラインハルト:っ…!



アレジ:ツー!



ラインハルト:ごほっ…!



カイ:スリーっ!



ラインハルト:ぶふっ



アレジ:フィニッシュ!



カイ:フィニッシュ!



0:ラインハルトは居ない



カイ:―…おい、どこいったあの鬼教官



アレジ:飛んで行っちゃった?



エマ:本当に飛んでる!上!上!



ラインハルト:こいつぁ驚いた!本当に不出来な良い生徒を持ったな!



アレジ:何メートル飛んでんだあれ…!



カイ:背面跳び、3メートル前後か…!?



ラインハルト:よっこら…



アレジ:あ、死ぬこれ



0:かかと落とす



ラインハルト:しょいーーーっ!



カイ:ぉおおおっ!ぐわしぃっ!



ラインハルト:お…っ!?



エマ:お、おーーーっ!足掴んだ!凄い!痛そう!



0:足を取った



カイ:このまま叩き付ける!



ラインハルト:っとぉお!?



アレジ:ナイスすぎ!ちんちんカイカイ!



ラインハルト:こりゃあ、文句なし…!



カイ:人の名前で―――



ラインハルト:満点だ…!



カイ:遊ぶなぁっ!!



0:地面に叩きつけた



ラインハルト:ごぶふっ!



アレジ:落としにかかるよ!



カイ:命令するな!



ラインハルト:うぉっ…!



カイ:ぉおおおおおっ!



アレジ:どりゃぁああああっ!



ラインハルト:っ…!こほっ…!



エマ:行け行け!一年分の恨みはらせーっ!



カイ:アレジっ!足!ちゃんと抑えろ!



アレジ:抑えてるっ!何だこの馬鹿力!



ラインハルト:あぁ…っ。ご立派だ…っ!だが…



0:殴る



カイ:きむちっ



アレジ:はぁ!?



ラインハルト:首を意識し過ぎたな、右腕が外れてる。



アレジ:この…!



ラインハルト:ほら。足も緩んだ、ぞっ!



0:蹴る



アレジ:なむるっ



エマ:ひゃー…これでも勝てんかぁ



ラインハルト:…ふぅ。いやはや、これは。一本取られたよ。見事じゃないか



アレジ:ってて…。何勝ち誇った目してるんすか!開けてるじゃん!目!



カイ:あ!まじだ!いいんですかそれっ



ラインハルト:ああ。私の負けでいいよ。くれてやる、満点だ



アレジ:…。うしっ。やったね、カイ



カイ:おう。アレジ



0:拳を合わせた



エマ:お疲れ様ーふたりともっ。大健闘っ



カイ:あの化け物が死ぬ日は来るのか



アレジ:来るでしょ、いつかは



ラインハルト:さーさー。次だぞ次ー。



エマ:ピンピンしてるけど



カイ:あの化け物が死ぬ日は来るのか



アレジ:来ないでしょ



ラインハルト:…おや。最後はお前か



グローザ:…



エマ:おっ!グローザだっ!がんばれーー!



アレジ:がんばがんばーっ



カイ:…?おい、グローザのペアはどこだ



ラインハルト:まさか、一人で挑む気か?



グローザ:…自分は、友達作りが苦手ですので



ラインハルト:二人一組と言ったはずだが…まぁいい。お前らしいと言えばらしいからな。ほれ。精々足掻くといい



グローザ:はい



ラインハルト:準備はいいな



ラインハルト:殺す気で行く。死ぬ気で来いよ



グローザ:どの道死ぬんじゃないですか



ラインハルト:はは、洒落が聞くようになったじゃないか。



ラインハルト:さて、加減なしで行くぞー。グローザ



グローザ:はい。ラインハルト教官



0:場面転換



アレジ:グローザ、ねぇねぇグローザ。ほんとに一人で教官に挑むなんて本当に馬鹿なんだねぇ



エマ:酷い怪我、大丈夫?グローザ



グローザ:問題ない



カイ:痛かったろ



グローザ:まぁ、痛かったな



アレジ:ぷぷ。無理せず誰かと組めば良かったのに



グローザ:いいんだ、悪くない時間だったから



カイ:ん?なんて言った?



グローザ:なんでもない。



エマ:ちょっと笑ってたよね!グローザ!



アレジ:うそっ!まじ?!



カイ:まじでか!?



グローザ:うるさい笑ってない



カイ:あ、おいっ。待てよグローザっ



エマ:照れてるーっ



グローザ:ついてくるな



カイ:今笑ってたろ。なあ。なあ



エマ:めっちゃ食いつくじゃん



0:一人教室に残るアレジ



アレジ:・・・難儀だねぇ



エマ:(N)こうして、教官との1on2は終わった。改めて認識した。あの人やっぱ怖い



0:『グローザ、ラインハルトOUT



0:シャオ、ハゼットIN』



0:場面転換。学院祭



アレジ:と。言うわけで。明日はいよいよ、待ちに待った学院祭だっ!



エマ:うひょーっ!きたこれっ



アレジ:はしゃげるウチにはしゃごうっ!ラインハルト教官から伝言っ!



エマ:はいっっ



アレジ:出し物したいやつは施設勝手に使え。出店やる奴もいるらしい。好きなように遊べよ。私は酒を飲む。以上!



エマ:だと思いましたまるっ



アレジ:僕もそう思いますまるっ



ハゼット:ふむ。乙なものだな



エマ:ハゼットはなんかやんの?演劇とか



ハゼット:なぜだ



シャオ:うわぁーやってそー



エマ:だよね?やってそうだよね?ロミジュリとかね?



アレジ:わかるなぁー。



ハゼット:どんな偏見だ。やらんよ。皆の出し物を堪能しつつ回るつもりだからな



シャオ:お。いいねー



エマ:(ハゼットをこずく)



ハゼット:なんだ



エマ:いつもの、行っとこう



カイ:おお。いいな。行っとけハゼット。あのよく分からんやつ



アレジ:お。始まるか、お家芸



ハゼット:まったく。言われずともだったが。んんんシャオっ!



シャオ:はいな



ハゼット:私とっ!回るべくして巡るまいかっ!んんんん学院祭っ!



シャオ:うん。いいよ



0:『沈黙』



ハゼット:もっかいいって貰って



シャオ:いいよって



0:『思考停止』



エマ:…



カイ:…



アレジ:…



0:『理解』



ハゼット:うおおおおおお!?



エマ:うおおおおおっ!



アレジ:おおおおおお!!



カイ:おお…っ?



シャオ:ずっと断ってたしねー。一緒に回る相手探してたところだったんだよ



ハゼット:うお!?おおお!?



エマ:ああ!ハゼットがまだ現実を受け止めきれてない!



アレジ:無理もないでしょ…!念願叶ったね…ハゼット…!



カイ:なんか分からんが、よく諦めずに挑戦した!



シャオ:うっさい。大袈裟だから。私先帰るよ



ハゼット:あ、ああ…!



シャオ:ハゼット。また明日



ハゼット:あ、ああ…っ!!



0:『シャオOUT。ラインハルトIN』



エマ:ひょえ…



ハゼット:ほぇ…



エマ:ふむむ…



ハゼット:エマ。やったのか。私は



エマ:うん。やった。と思う



ハゼット:やった、のだな…



0:エマはハゼットの肩に手を置いた



エマ:ナイスガッツっ。ハゼッツ!



ハゼット:誰だそれは。だが、ありがとう…!友よ…!



0:カイも手を置いた



カイ:なんかよく分からんが、よくやった…!それでこそお前だ!ナイスガッツハゼッツ!



ハゼット:誰だそれは。だが、ありがとう…!!友よ…!!



0:アレジも手を置いた



アレジ:おめでとう…!今日という日に立ち会えて僕は幸せだ…っ。ナイスガッツハゼッツ



ハゼット:誰なんだそれは。だが、ありがとう…!心の友たちよ…!



エマ:さ。明日の準備してきなっ



ハゼット:ああっ。行ってくる!また明日!朝日が昇る頃に!



0:『ハゼットOUT。グローザIN』



アレジ:おー。また明日ー



カイ:…さて。



アレジ:行こっか



エマ:う、うん。



ラインハルト:(M)こうして。学院祭が繰り広げられるのであった。



エマ:で・・・私達の準備した出し物が



アレジ:花火、だ。確か日本のものだったっけ



カイ:あぁそうだ。昔、俺とエマとで花火祭りに行って遊んだことがあってな。綺麗だったから



エマ:にしても打ち上げ花火って・・・あんたそんなのどうやって



アレジ:僕が持ってきた



エマ:わぁ〜お



カイ:こいつ、運賃不要の配達員だから



アレジ:ひっでぇおまっ。カイが買って来いっていったんだろっ



カイ:はは、悪い悪い。



エマ:最近カイ笑顔増えた〜?私かなり嬉しい



カイ:まぁ、そうだな。前よりは。



アレジ:おやおや。そりゃ僕のおかげってやつですかい?



カイ:ああ。そうだ



アレジ:なんだいなんだい急に、恥ずかしいからやめなって



エマ:…ぷっ



0:三人、少し笑う



カイ:…よし。いい思い出、作ろうな



アレジ:は。当然でしょうよっ



エマ:当然でしょうねっ



0:文化祭 花火



アレジ:いいかい?君がこのバーナーで花火に火をつける。僕はこの花火を上空200メートルまで飛ばす



カイ:異常性を花火に使うやつなんて聞いたことないぞ



アレジ:じゃあ、僕が初めだ



エマ:こういう使い方だけなら世の中平和なのに



カイ:ああ。まったくだ。さぁ!行くぞ!



アレジ:はいよっ



エマ:おお。おおっ。わくわくするっ。



カイ:近過ぎて綺麗には見えないだろうけどな



アレジ:安心してくれ、花火を移動させたと同時に僕らも移動する



エマ:え・・・でもアレジ、異常性のクールタイムは・・・



アレジ:言っとくけど。僕の異常性はかなり汎用性が高い。クールタイムは僅か6秒だ



カイ:ったく、本当にお前は悪ガキだな



アレジ:僕達、だろ。



カイ:は。だな。



エマ:え。私もなの?



カイ:黙認はほら



アレジ:共犯でしょ



エマ:はぁー。しゃあない。罪被ったろ!



アレジ:よひ。さぁ!行くよ!



カイ:あぁ!



エマ:がんばれ〜!



カイ:えっ、と…。ここを捻って。こう、かっ



エマ:(M)バチバチっと音を立て、花火の導火線に火が付いた



アレジ:よーし。SCRAMBLEスクランブル



カイ:(N)花火が俺たちの前から姿を消す。何時ぶりだろう、こんなにワクワクするのは



アレジ:もういっちょ!SCRAMBLEスクランブル



0:屋上



カイ:(M)もう一度アレジがそう唱えると、俺達は校舎の屋上にいた。



エマ:(M)そこから見えた花火は



カイ:(M)涙が出そうになるほど綺麗だった。



0:場面転換。喫煙所



ラインハルト:…ほぉ、花火か。



グローザ:みたいですね。



ラインハルト:お。なんだグローザ。結局来たのか



グローザ:息抜きにと思ってきたら、まさか本当にこんな所で一人寂しく煙草を吸ってるだなんて思いませんでしたよ



ラインハルト:うるさい。



グローザ:まあ。少しだけ期待していたのはありますが



ラインハルト:…お前、可愛い奴だな



グローザ:言っていることが毎度違いますね



ラインハルト:評価ってのは変わるもんだ



グローザ:都合のいい大人ですね。



ラインハルト:君だって充分大人じゃないか。



グローザ:は。それもそうです



ラインハルト:前々から思ってたが。お前は。私の昔の友人によく似てる



グローザ:昔の?



ラインハルト:ああ。お前に似て、眉ひとつ動かさない鉄仮面で、生真面目な割にどこか一歩引いた様なやつだったよ。お前よりも頑固だったけど



グローザ:監察局の人、でしょうか



ラインハルト:そーだよ。可愛げの欠片もない。でもそーゆとこが逆に可愛い。良い奴だったよ。ほんと



グローザ:そうですか。しかしこう忙しいと暫く会えてないでしょう。中央までは距離もかなりある



ラインハルト:あーいや、もう死んでんだよ。そいつ



グローザ:…そうですか



ラインハルト:なんてことはないさ、その辺の任務でな。その頃には私はアーヘンに居たからな。死に目に立ち会う所か、最後の一言も交わせないまま逝きやがったよ



ラインハルト:劇的な死なんてなんない。現実は小説より奇なりって言うが、ありゃ嘘だと思ってるね



グローザ:…だから、教官は。よく「また」と、声をかけるんですか



ラインハルト:ん。あー、そういえば、そうだな。癖みたいなもんかもしれん。口約束だが、安心するだろ



グローザ:そんなもんですか



ラインハルト:そんなもんだ。



0:二人は煙草を吸った



ラインハルト:こうしてダラダラと話せるのも。あと一年か。



グローザ:…。はい。



0:『沈黙』



ラインハルト:綺麗だな。花火。



グローザ:…そうですね。



0:場面転換 屋上



エマ:おお。本当に綺麗



アレジ:う〜ん天晴れだねぇ。



カイ:…。ありがとうな、アレジ



アレジ:え、何さ急に改まって



カイ:正直最初はお前のこと苦手だった。



アレジ:だろうね。



カイ:でも今は…俺の、相棒で。俺たちの…。親友だ



アレジ:…。熱ある?



カイ:茶化すな



エマ:そーだよ。アレジは私達の親友。嫌?



アレジ:…。まさか。嫌なわけ



カイ:だろうが。だから、ありがとうだ



アレジ:…うん。こちらこそ、ありがとう。



アレジ:…だね…!



カイ:なんだそれ



0:三人少し笑いあった



エマ:そろそろ花火、終わっちゃうね



カイ:来年も、見ような。三人で



エマ:うん



アレジ:終わる前に、一ついいかな。少し大事な話を



カイ:ん。なんだよ



アレジ:この前話した、僕がここに来た目的の続きを話したい。



カイ:?そりゃお前、もう聞いたぞ



アレジ:うん。異常体が差別されない世界を作るってのは本当だ。でも、あとひとつ。まだ話してないことがある。



アレジ:聞いてくれるかな



カイ:そりゃもちろん。けど、今でいいのか。花火の音うるさいだろ



アレジ:今がいいんだ。最高に綺麗な物を見て、最高に綺麗な友情を手にして、こんな時だからこそーーーー



0:場面転換



ラインハルト:グローザ、着信。なってるぞ



グローザ:…



ラインハルト:?出ないのか?



グローザ:出た方が、いいでしょうか



ラインハルト:そりゃあ、そうだろ



グローザ:…なんだ。……ああ。マルボロの方はもういいのか。…そうか。分かった。ああ。



0:ラインハルトは煙草を吸っている



ラインハルト:…。



グローザ:……なあ。メビウス。もう少し待てないか。



0:花火。三発目



グローザ:せめてこの花火が終わるまで、待って欲しい。



ラインハルト:(M)風が吹いて、煙草の煙が目に染みた。



ラインハルト:―――痛かった。



0:場面転換



0:屋上



アレジ:ーーー僕はアレジ・ロンドン。



アレジ:中央解放戦線。赤い林檎の主犯リーダー



カイ:ーーーー。



アレジ:今回の解放作戦は。中央を潰す為の足がかりとして。



アレジ:中央職員育成機関を潰すこと。即ち



カイ:…………は?



アレジ:今から。ここ。アーヘン高等学院を



0:アレジは手を空に掲げた



アレジ:―――襲撃する。



カイ:(M)時計の針は、午後を過ぎ。午前を指していた。



0:ーーー復讐者達の週末ーーー

どんどこどんっ!どんどこどんどんっ!

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