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勝手に話が進んでいます

コンコンと扉がノックされた。


「はい」

「失礼します。お食事をお持ちいたしました」


メイドさんがテーブルに素早く並べ、失礼しましたと部屋を退室した。入れ替わりに陛下が入ってきた。


(あ、なんか、嫌な予感が……)


陛下は一直線に鈴のもとにやって来た。


「よく眠れたか」

「おはようございます。ぐっすり眠れました」


鈴の返答に満足したのか頷き、鈴を抱き上げた。そして昨日のように膝の上に乗せ食事を食べさせ始める。やっぱりと鈴は思った。


「もう動けますから自分でっムグ」


はい、昨日と全く同じ展開です。ガックシと項垂れ、ようとして口にスプーンを差し込まれた。もうダメだ、と諦めて渋々口を開けて食べ進める。喜ばしくないですよ。役得とか思ってないですからね。と誰に言うわけでもなく心の中で否定した。


昨日よりかは少し多く食べれたがやはり用意された分は全部食べれなく、残った物はスライムが全部吸収した。


「あの、陛下様」

「名前で呼べば……ああ、名乗っていなかったな。我はソーリャヴィシィス。この魔国の王だ」

「魔国……?」

「リンが召喚されたブリカーラ王国から一つ森を超えた先にある国だ」


…………この世界の地理が分からない。けど、近隣だから干渉した、のかな。


「さて、アンジーに会いに行くぞ。会いたがっているからな」

「え……って、ちょ、待っ」


何も聞く間もなくソーリャヴィシィスは鈴を抱えてどこかに連れていく。移動の間、鈴は何度も自分で歩く、降ろしてくださいと訴えたが何も言わずに歩き続けた。

安定感があり、落ちる心配など微塵もしなかった。だが、横抱き自体初めてされる上にトンデモ美形が目の前すぐ近くにあるのだ。何もかも免疫がなく、ひたすらに羞恥心で顔を赤くした。プルプルと震え、顔を真っ赤にして俯く鈴を見たソーリャヴィシィスはフッと笑んだ。



 ☆ ★ ☆



「入るぞ」

「どうぞ」


ノックするために降ろされると期待していた鈴の希望はあっけなく砕け散った。驚くことに両手が塞がれているのに扉が開いた。扉の向こうに人がいたわけでもない。自動ドアかな。


連れてこられた部屋には一人の女性がソファに座っていた。白練の髪にピコンと生えた耳にふさふさと揺れる尻尾。長い髪も耳も尾も先端が水色になっている。色白の肌で淡い色のドレスを身にまとっている。そんな全体的に白い女性は藍白の瞳を輝かせて此方を見ている。


「やっと来たわね! ソル、その子がリンちゃん?」

「そうだ」

「きゃー可愛い! ね、早くこっちに連れてきて」


陛下様と親しげに話している。陛下様と仲良いののかな。耳と尾がせわしなく動くのを見て、とてもご機嫌がいいみたい。か、可愛い。

ソーリャヴィシィスはその女性の横に座る。鈴はもちろん膝の上。抵抗は無意味でした。


「それにしても残念ねぇ。こんなに痩せこけて」

ナデナデ、サワサワ

「こんな可愛いのに酷いことをするなんて許せないわ」

ツンツン、プニプニ

「そうだ、クッキー食べる? いっぱいあるわよ。ほら、食べさせてあげる。あーん」

ニコニコ

「あ、あー……ん」

「どう? 美味しい?」

「お、美味しい……です」


どんどん口に運ばれる。それもすごい笑顔で。食べている間も頭を撫でたり頬をつついたりとやたら触れてくる。陛下様といい、この女性といい、押しが強い。困惑した表情をした鈴になにやら察した様子の女性。


「ああ、わたくしはアンジェリカよ。よろしくね、わたくしの子」

「近江鈴です。よろしくお願いします。って子?」

「んもう、固いわ。わたくしの子になるもの。そうね……ママと呼んで」

「え、子ってどういうことですか?」

「あら、ソル話していないの?」


はい、何も聞かされずに連れてこられました。とは言えず心の中で呟いた。


「じゃあソルの代わりに説明するわね。あなたはソルがブリカーラ王国から連れて来たの。瀕死の状態でね。それが六日前ね」


六日前……目が覚めてから一日経ったから……えっ、五日も眠っていたの!?


「それでね、リンちゃんには魔国で暮らしてもらうつもりなんだけど、わたくしとソルの養子にしたわ」

「アンジェリカさんとソルさんの子……って、え?」


急に話が飛んだ。何をどうしたら養子なんて話が出たんだろう。


「アンジーは我の妻だ」

「二子授かったけれど女の子は生まれなくてね。それでも別に何というわけではないけどリンちゃんを見たらやっぱり娘も欲しかったなって思っちゃって。ああ、わたくしたちの子と言っても何か政務とかがあるわけではないのよ。そこは安心して」


何も言わない鈴を見て、アンジェリカは焦って言い訳の様に言い募る。鈴は何も言わないのではなく何も言葉が出てこないのだ。説明されても話が飛びに飛んでなんでそんなことになったのか理解できずに固まっているだけだった。

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