可笑しさが残す印
彼は今日も、煙草と香水とが混じった匂いで帰ってきた。
「今日はどこまで?」
「んー?今日はキャバで酒飲んだだけ」
「りょ」
お互い束縛しない。
子供を作らないならおっけー。
おかしなルール。
私はあの日から、哲之以外とは寝たことがない。
でもてつはきっと、今週のどこかで私以外の女と寝る。
「別にいい」ってすんなり割り切れる程ではない。
可笑しいって笑われて、実はその都度軽く傷つくけれど、
SMも3Pも溢れかえっているのにこっちにだけ可笑しいって言われてもさ。
メンヘラもいればその対極もいる。
それだけじゃない?
浮気、不倫が映画やドラマで描かれることは、実は倫理観を歪めているのだろうと思う。
宣伝でよく見る飲料や洗剤ほど買ってしまうでしょ?
それと同じ。
いけないことだって分かっているのに、
画面の中の人物がしているのを何度も見るうちに、
それがいけないことだという意識は薄くなり、
最悪の場合には本能だ、省がないだろ、などど言う人間が量産される。
てつはその最終形態なのだ。
こんな男。
そう思ったことはある。
でも、人を信じるとその分裏切られた対価は大きい。
どんなに純愛を貫いても裏切られることだって多々ある。
まして大人になってから、性交を前提とした関係なら尚更。
今までの彼氏は、およそ半分が浮気した。
信じることに飽きた。
疑うのにも飽きた。
私達お似合いなの。
見境なく寄ってきた女を抱くてつと、男を見る目のない私はただ、
お互いを最後にたどり着く場所として契約を結んでいるだけなのかもしれない。
ただ一つ、私は執拗に繰り返す。
時折失敗して血の味がしても。
「っ、だから痛いって」
「……てつの性欲以外は私のでしょ」
その首も、背中の黒子も、太腿も、私以外に見せて。
薄い膜越しなら、他の女を突いてもいいよ。
ただ、執拗に付ける密かな大胆なしるしが消えることだけは許さない。
それだけの執着が私たちを繋いでいる。




