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プロローグ
深い闇の中にいた。
平泳ぎのように手足を動かしていた。どういう状況なのか定かではないが、息継ぎの必要性は感じない。泳いでいるというより、飛んでいると言った方が近いだろう。
闇に目が馴れてきた。よく見ると、犬かきや横泳ぎなど、やり方は違うが同じ方向に向かって泳いでいる人々が見えた。前を見れば青白い丸い光が近づいている。あの光が近づいたから、周りが見えてきたのかもしれない。
「満月が終わる、蓋が締まる前にたどり着かないとここまできた甲斐がなくなってしまう!」
誰かが言った。目を凝らすと、丸い光の右側に少し影がさしている。急がねば。理由もなくそう思った。不器用に手足を動かしていると追い風が吹いてきた。追い風に乗って必死で空を掻く。風はどんどん強くなり、まるで光に吸い込まれるようだ。…違う、これは光に向かって、落ちる!