閑話〜目が離せねぇ(フランシス視点)〜
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俺はフランシス・リード。
ウェルストル王国名家の一つ、リード侯爵家の当主であり宰相でもある父親を持つ……まぁ、いわゆる跡取り息子ってヤツだ。
みんなは俺の事を『フラン』って呼んでるぜ。
よろしくな☆
最近は『女好きチャラ男』って不名誉なあだ名付けられてるけどさ…何だよその雑なあだ名!!
そこは『プレイボーイ』とか『遊び人』とか『粋な色男』とかでいいじゃねーかよ!!
いや色んな女の子と付き合ってんのは認めるけどさ〜…同意の上だし……。
ん? 今彼女何人いるって??
ん〜〜…(←数え中)
十三人と六人だな!
え? 『六人って何』って??
口説き中で落ちかけてる子の人数な♡
でも俺は倫理を守る男だから原則彼氏や婚約者がいる子には手ェ出さねーし安心しろよ☆
『大勢の子と付き合い過ぎ』ってダチから言われた事あるけどさー。
可愛い子、綺麗な子、美人な子、エロい子、スタイルのいい子、清楚な子、元気な子、優しい子、明るい子、ノリ良い子……って各々の魅力を一気に堪能してぇとこなんだわ!!
モテ男でゴメンな☆
もちろん将来はたった一人に絞るつもりだぜ。
一応未来の宰相(予定)だからな!!
本音を言えば双子のお姉サマ、エブリンの方が俺より頭の出来良いし要領良いから宰相を継いでほしいんだけどよ…この国は余程の事がねぇ限り跡取りは男っていう暗黙の了解あるからなー。
しかもエブリン本人も宰相の地位にまっったく興味持ってねぇし……あ、そういやアイツちょっと前にまた俺の彼女に手ェ出して掻っ攫いやがったんだったチクショウ。
ん? 姉弟仲?
フツーじゃね??
アイツの性癖だって物心ついた時から『女の子が好き!!』って堂々と宣言してたし、俺にとってはそれが当たり前で違和感ねぇもん。
アイツがやりたいように……つっても人の彼女や婚約者略奪すんのはアウトだけど、まぁ弟としてはエブリンが楽しそうならそれでいんじゃね?って感じ。
あ、今 "姉想いな弟" で俺の好感度上がった??
やったぜ☆
そうだ!
話は変わるんだけど、最近やっと噂のエキドナ・オルティス侯爵令嬢に会えたぜ!!
あの子…珍しいタイプだよな〜。
沢山の女の子達を口説いてきた俺にはわかる…!(キュピーーン!!)
俺が口説いた時のアレは本気で嫌がってる反応だった!!
イーサン様には『だったらやめてやれよ…』って呆れ顔で止められちまったけどさぁ、わかってねぇんだよイーサン様はよ。
自分に興味ねぇ女をいかに本気にさせるかがオレたち男の腕の見せどころじゃねーか!!
それにドナは今迄会った事ねーくらいに男に冷たい女だ!
だからそのツンとした態度が崩れてデレデレになる姿が見てぇんだよ!!
そう力説したら今度はリアムに『令嬢や子どもの相手をしている時なら嫌でも見れるよ。あと強気で迫る男は嫌いだって昔ドナが言ってた』とか言われちまった。
アイツ言い方淡々としてて冷めてやがるからグサっと来るんだよなぁ…。
つーか何で水差す事ばっか言うんだよこの兄弟はッ!! ちょっとは応援してくれよ!!
『いやいやリアムの婚約者だろ! 人の婚約者には手を出さない主義じゃなかったの?』って??
確かにな。
俺は原則彼氏や婚約者持ちには本気で手は出さねぇ。
それは認める。
…………でも今回は "例外" だ。
それになーんかドナって結構複雑ってゆーか難儀な性格してる気がすんだよなぁ。
危なっかしくてほっとけねぇっつーか。
試しにちょっと突いてみたらまた訳アリで意味深な反応だったし…。
でも隠さねぇ辺りやっぱ素直な子だなーって思ったわ。うん。
目が離せねぇや。
恐らくリアム達もドナのそういう面をとっくの昔に勘付いてるっぽいんだけどよー。
敢えて触れない…いや、遠慮しちまってる感じ??
でもいいのかリアムー、そんなもたもたしてたら俺が掻っ攫っちまうぞー?
あん時そのまま去らずに優しく抱き締めて慰めればワンチャン…………いやあの子なら腹パンの一つや二つかましそうだな。しかも容赦ないヘビーなヤツ。
そういうお堅いところがあの子の魅力でもあるけどなー。
それに今迄だってエブリンの件があるとは言え何年もドナに会わせず俺の事ハブったのがワリーんだよ、マジ話。
イーサン様とかフィンとかみんなで楽しそうにしてさ……俺も仲間に加えろこのヤロー!!
そーいやフィンも中々おもしれーよな、あんだけ周囲にシスコンっぷりを隠さない潔さはいっそ清々しいわ。
同じ弟ポジションだけどマジで真似できねーよ。お姉ちゃん大好きっ子か。
…つーか、あの雰囲気はシスコンってゆーより……?
いや、んな訳ねーか考え過ぎだな。
あぁ話が逸れちまったぜ……今更だがこんな出自だから俺は幼少期から王族とも親交があって、次期国王のリアムとヤツの異母兄のイーサン様とは幼馴染でもあるんだ。
昔から思うけど、よく後継者争い起きなかったよなー…。
リアムの天才も去る事ながらイーサン様が欲のねぇ人間だったの、かなりデカイと思うぜ?
つってもリアム自身、別に玉座に執着してねぇみたいだけどな。
まっ 国や王家が平和なのは有り難え事だわ。
そんなリアムは、我が姉ながら要領良くて天才肌のエブリンを唯一凌駕する実力を持った未来の王様だ。
……本音を言えば、昔のリアムは結構苦手だったっけ。
すげぇヤツなのは知ってるけどなんつーか……どこか近寄り難くて…………まるで感情がない人形みたいなヤツだと思ってた。
どれだけ難しい課題だって眉一つ動かさず、淡々とこなす。でも何やっても何も感じていない・興味を示さない…そんな一面が、理解出来なくてちょっと怖えーと思ってた。
それがある日からなんか楽しそうになって……段々と…上手く言えねぇけど、な〜んか親しみやすくなったっつーか丸くなったつーか……そんな感じで少しずつ変わっていったんだよなぁ。
で、『何があった!?』って思って調べてみたらリアムの婚約者のエキドナ・オルティスが理由だってすぐわかった。
そーいやドナって昔を思い出す限り『何でリアムの婚約者なんだ?』って疑問に思うくらいに引っ込み思案で大人しい子の印象的だったのにな〜…それはそれで庇護欲掻き立てられて可愛いけど。
まぁ、女ってちょっとした事でスッゲー変わるもんな。そこが女の子の魅力か♪
こうしてドナの存在を知った当時の俺はすぐに納得した。
なるほど恋か!!
リアムがエキドナ嬢に惚れた!!
だからあんなにもお前は変わったんだな!!!
かぁ〜〜ッリアムも隅におけねぇな!!
って思いノリノリでリアムにドナの事を聞いたんだが…
『気に入ってるのは認める。でもそれは "そばに居ると楽しい幼馴染" ってだけだよ』
真顔でバッサリ断言されて、あの時は訳わかんねーって固まったのをよく覚えてるぜ…。
そんでそのままエブリンとセットでドナへの接近禁止令出されたんだよなぁ…懐かしい。
まっ 素直に聞く俺じゃねーからずっと好機を伺って…(夜会とかで声を掛けようとしたらめちゃくちゃ妨害された)。
そして偶然装いつつやっと何年か越しにドナとの出会いを果たせたって訳♡
つーか間近でアイツらのやり取り見て思った事があんだけど。
『気に入ってるのは認める。でもそれは "そばに居ると楽しい幼馴染" ってだけだよ』(注:リプレイ)
……は? 嘘だろリアム絶対アレじゃん。
好きな女の子に構ってほしくて虐めてるガキンチョと一緒じゃん。
定期的にからかっては怒られて謝って仲直りするまでがテンプレなんだろ?? ルーティンなんだろ??
どうでもいい相手にそんな事するお前じゃないだろ??
めっちゃ好きじゃん。
そもそもアイツは自覚ないのかドナだけでなくイーサン様やフィンレー……オレにも対応が雑というか何というか…少なくともその他大勢にかましてる猫被りなキラキラ王子様対応はしていない。
多分、アイツなりにオレ達に素を出して甘えてるんじゃねーかなって思ってる。
それをドナもイーサン様も…オレも心のどっかで気付いてるからこそ何だかんだでリアムのそーゆーところを受け入れちゃってんだよなぁ。
だからこそ、アレだ。
リアムがドナに恋愛感情ないとか嘘だろ絶対。
或いは無自覚か。…いや意外にあり得る。
ならオレは自覚して貰うためのお手伝いしねぇとなー♪
そしてチャンスがあれば俺が貰う…って感じで☆
うんうん、こっちの仕事の方が向いてて好きだわ。
そういえば念のためイーサン様にも確認したら、
『俺もそう思う。だから一緒にリアム達の仲を応援しないか!?』
って勧誘されたわ。
何でも今ステラ様と二人で "リアムとエキドナをくっつけ隊" とやらを結成してるらしい。
名前クソダセー。
…でもまっ 面白そうだからしばらくは様子見だねぇ。