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放課後


________***


登校初っ端からフランシスの女性に対するあまりに不誠実な対応を目の当たりにしたエキドナは、それ以降フランシスをがっつり敵認定した。

そしてこの数日間、懲りずかなりの頻度で声を掛け続けているフランシス相手にエキドナは……ひたすら無視し続けたのである。

冷ややかにまるで "居ないもの" のように。

或いは…ゴミ、いやまるで養豚場の豚でも見るかのように冷たい目で、フランシスを見つめるのだった。


普通の子息ならエキドナのあまりに冷酷で無慈悲過ぎる態度に心が折れ、構うのをやめているだろう。なんなら泣いちゃうだろう。

だがしかし、このフランシスという男は……



『同じクラスなんて、俺達運命じゃね?』


『そのリボンみたいな髪型見た事ねぇけど可愛いな〜! 綺麗なプラチナブロンドに映えてよく似合ってるぜ♡』


『甘い物好きなんだろ? 学園出てすぐの街で良い雰囲気のカフェあってさ〜♪』


エトセトラエトセトラ、




…………。


こいつ殴りてぇ…!(二回目)




そう。

このフランシスという男は……エキドナの冷酷無慈悲な対応で幾度叩き潰しても秒で復活する、ゴキブr…………タフな男だったのだッ!!




なお人目をかい潜り僅かな隙を見て、エキドナは同じ転生者のセレスティアからこの世界…『乙女に恋は欠かせません! 〜7人のシュヴァリエ〜』について話し、五人目の攻略キャラらしいフランシスの情報を得ようとした。

まぁ、また改めて聞き直した方がいいのかなと思ったのだが。


〜〜〜〜〜〜

(以下回想です)


『当時もフランシスはキラキラリア充過ぎて苦手でありました…。リア充キャラは三次元(リアル)でお腹いっぱいでござる』


言いながらセレスティアが申し訳なさそうに俯く。


『そうなんだ…』


『そもそもああいうウェイ系は一種の三次元オタクみたいなものでありますのに我々二次元オタクに突っかかり見下し嘲笑い…!』


『ティっティア氏??』


前触れなくスラスラ早口で捲し立てるセレスティアにエキドナが焦り始める。

何故かどんよりした負のオーラがセレスティアを包み込んでいる風に見えた。闇の魔力か?←

かと思えばセレスティアが叫び出した。


『いやむしろリア充爆ぜろ! どうせならチャラ男も男とイチャつけよおぉぉッ!!!』


『えええぇぇどうしたのティア氏ぃッ!!? いつもの口調どこ行った!? アイデンティティー崩壊するくらいチャラ男嫌いって事ぉ!!?』


〜〜〜〜〜〜


といった感じで、リア充チャラ男はセレスティアの地雷だったらしくほぼ情報が得られなかった。

多分オタクとパリピによる…種族の違い故の埋まらない溝的なアレが原因だと思われる。

うん、しばらくセレスティアはそっとしておこう。





ただフランシスは別件。

しつこい、マジでしつこい。


「なぁ待てってまたその綺麗可愛い声を聞かせてくれよ」


「っ……」


思わず舌打ちしたくなる衝動を抑える。

ちなみに今は放課後だ。

そして幸い今この場にいるのはリアム、フィンレー、イーサン、そしてフランシスだけである。(注:ステラ達女子ズはフランシスから守るため避難して貰いニールは元気に野を駆け回っている)

そう考えながらエキドナはくるりと振り返りフランシスの方を見た。

金の瞳は依然として冷たいが真っ直ぐフランシスを射抜く。


「私を揶揄う暇があるならまずあの女の子に謝れ」


「!」


突然何日も応えなかったエキドナが声を出したのとその内容からかフランシスは驚きで軽く瞠目した。


「あの後も彼女、傷付いてた」


そう。

エキドナへのナンパ行為もさる事ながら、フランシスの泣かせた女の子への対応が一番気に入らないのである。だからずっと怒って無視し続けた。

エキドナの言葉に何故かフランシスは少し寂しげな顔をする。


「それはドナからのお願いでも聞いてやれねーな」


「……どうして」


問い掛けに対しフランシスは困ったように肩を竦めた。


「あの手の女の子はさ、アフターフォローしたらちょっとでも希望持ちかねねーから。それなら俺が『ただの女好きな最低クズ野郎だ』ってずっと認識させたままの方があの子も楽だろうよ」


「…? 女好き最低クズ野郎は事実では?」


「容赦ねーな! …まぁいいけど。俺もしくじったしな」


フランシスは笑顔で返したかと思えば僅かに俯き自嘲を含んだ笑みをする。


「…………??」


そんな彼の言動に違和感を感じて、思わず眉間に眉を寄せ、首を傾げた。

なんかあの女子生徒と目の前にいるフランシスの言動に…矛盾が生じている気がする。

思い立ったが吉日、エキドナはすぐさまフランシスに尋ねるのだった。


「…ねぇ、一つ確認してもいい?」


「んー?」


「貴方、彼女を誑かして肉体関係を持ったのに浮気したからぶたれたんじゃないの??」


「なっ! ななな何を聞いちゃってるの姉さまァ!!?」


「ニク…!!? ウッ、ゲホゲホっゴッホ!!」


「動揺し過ぎだよ馬鹿イーサン。フィンレーも」


エキドナの率直過ぎる物言い…むしろキャラに似つかない爆弾発言でずっと静観していた男子ズ、厳密にはリアムを除いたフィンレーとイーサンが狼狽しまくる。


「だって『肉体関係』って…! なんか言い方生々し…ムグッ」


「う、うむわかったからフィン! 頼むからそれ以上は喋らないでくれ!!」


慣れない単語(ワード)で照れまくるイーサンがフィンレーの口を塞ぐ。耳まで真っ赤だ。

しかしそんな男子ズとは対照的にフランシスは豪快に笑い飛ばすのだった。


「ははっ!! ド直球(ストレート)だな!!! いいのか〜? 王子(リアム)の婚約者たるエキドナ様がそんな破廉恥な事を聞いて」


「質問に答えて」


二人の反応とフランシスの揶揄う声にエキドナも少し恥ずかしくなって来る。

だがそれを抑えつつ、努めて冷静にハッキリと尋ねた。


「「……」」


金の目と銀朱の目が静かにぶつかり合った。


「…あぁ、なるほど」


フランシスはそう言いながら何やら含んだ笑みをこぼし始める。


「?」


「つまり "そういう事" に興味あるんだ? へぇ〜お堅そうなのに超意外♡」


「は? 何故そうなった…「俺が教えてやるよ。色々とな…」


エキドナの言葉を遮り、フランシスがペロリと自身の唇を軽く舐めエキドナに手を伸ばす。

リアムが厳しい顔つきで動こうとした刹那、



ガシィッ!!!



「!!?」


エキドナへと伸ばそうとしたフランシスの腕を掴むのは……フィンレーだった。

いつの間にイーサンの軽い拘束から抜けたのだろうか。また顔は俯き前髪で隠れているため表情は見えない。


「姉さまがいかがわしい単語(ワード)を口にするシチュはむしろ最高だけど、手ぇ出すなよ」


ボソッ早口でフィンレーが呟く。


「あ? つかイテーし離せよ」


「無理、」


ギリィッ!


「い"っってぇ!!」


言いながら握る力を強くする。

痛みでフランシスが叫ぶもフィンレーは止まらない。


「…ていうかよく考えればっ 姉さまにいかがわしい単語(ワード)言わせた切っ掛けが女好き最低クズヤローなのってムカつくぅぅぅッ!!!」 

注:姉絡みだとちょっと知能が低下する子


ギリギリギリギリ


「さっきから何言ってんのこの子ォ!? ()たたたた折れるッ!! マジで腕折れるぅぅぅ!!」


「待て待てフィンっ! 流石にやり過ぎだ!!」


大慌てでイーサンが若干頭のネジぶっ飛び中のフィンレーをがばっ! と後ろから羽交い締めにしてフランシスの腕を解放する。


「離してよサン様ッ!! こいつムカつく!! 姉さまにナンパしてるのも含めてこいつムカつく!!!」


「こら暴れるな! フィンに本気で暴れられると俺も抑えられないから!!」


体格的には背が高いイーサンの方が有利だが、実はフィンレーはその愛らしい見た目に反して腕っぷしが強いのだ。

そしてどっかの姉の影響で普段優しい癖に必要に迫られればだいぶ容赦ない面がある。

だからイーサンも今かなり苦戦しているのである。


「ドナ、貴女もフランとフィンレーを刺激し過ぎだ」


「……うん。ほんとだね。まさかフィンがあぁなるとは思わなかったよ…」


リアムの指摘に、エキドナは後悔気味に返しながら未だ変なスイッチが入ったまま荒ぶっている? 弟を見る。

エキドナのその目は呆然と見開いておりちょっとショックを受けていた。


(なんかうちの可愛い(てんし)がすんごい事言った気がする…。な、なんて言ったっけ?ははは、あはははは)

注:現実逃避による部分性健忘


()って〜…でも健気に守ってくれた弟に対してそれもどうなんだよ『エキドナ姉さま』」


「『姉さま』呼びは弟の僕の特権だから!!」


「気持ちはわかるが落ち着け!! ほら見てみろっあそこの窓! 鳥とリスが仲良く「イーサンも落ち着け」ゲシッ


「痛たっ!!」「わっちょっ…!?」


バターーン!!


冷酷リアムが冷めた声で突っ込み、フィンレーを抑えていたイーサンごと蹴り飛ばしたので二人まとめて倒れ込んだ。


「何やってんだあの三人、コントかよ…あ〜本気で折れるかと思ったぜ…。マジでどこのゴリラ…?」


言いながらフランシスは握られた腕をさする。

そんなフランシスを見ながら…エキドナはふぅ、と自身の顔に手を添え静かに息を吐いた。

その顔は心なしか少し残念そうである。


「…そもそもフィンが手出しする前に私が貴方に背負い投げ食らわせるなり関節技決めるなり、指の骨を折るなり対応はちゃんと考えてたんだけどなぁ〜…」シラっ


「アンタも骨折る系なのかよッ!!? 何このバイオレンス姉弟(きょうだい)!!!」


真実を知り慄くのフランシスであった。


「…とにかく折れてはいないだろうけど医務室で氷貰った方がいいよフラン。それとフィンレー、さっきの言動について話がある。来い」


「チッ」


「フラン。俺も医務室まで付き添うぞ」


「え、待って! じゃあ姉さま一人じゃ…」


「大丈夫だよフィン。このまま自室に帰るから」


「でも、」


「フランシスはサン様と医務室行くから居ないし逆に安全」


「それもそうだね!!」


こうしてイーサンがフィンレーに握り潰されかけて腕を赤くしたフランシスに付き添い医務室へ、リアムは先刻のフランシス(及びエキドナ)に対する言動へのお話……もとい説教をするためフィンレーを後ろに伴って早々と部屋を後にするのだった。

気付けばエキドナだけがただ一人が残される。


「……はーっ。さて、私は私で動きますか…」


伸びをしながらエキドナもその場を立ち去るのであった。


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