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+α閑話〜あの本と後日談〜


________***


セレスティアと友達になり、お近付きの証としてBL本を貰ったエキドナの……後日談。


「姉さま何読んでるのー?」


バァンッ!!


つい勢いよく本を閉じてしまう。

よりによってヒーロー(♂)とヒロイン?(♂)がいい雰囲気で抱きしめ合っている場面で、斜め後方からフィンレーが覗き込んだのだ。

挿絵(さしえ)のとこじゃなくて良かったぁ!


「…びっくりした〜! どうしたの姉さま」


「うっうんこれはねーおぞま…いや怖い内容だったから見ない方がいいよー♡」


本を胸に抱き引きつった笑顔で言い訳するエキドナにフィンレーは不思議そうな顔をする。


「えっ? 姉さまお化けとかが出る話は苦手じゃ…」


「とっ とにかく! 貴方は読まなくていい本なんだよー!」


「あっ! 姉さま!!」


言いながらエキドナは立ち上がりフィンレーからダッシュで走って逃げたのだった。

ダメだこれフィンレー達に見つかるからリビングで読んだらあかんやつだ!!


…そしてその日の夕食時にフィンレーが両親の前で本の話題を振らないか気が気じゃなかった。

だがしかし、幸いにもフィンレーは本の事など忘れたのか一言も話題に出ずエキドナの杞憂(きゆう)であった



と思っていた。





王宮での定期お茶会(ステラ、フィンレー、ニール不在バージョン)にて、


「そういえばフィンレーから聞いたけど、ドナは一体何の本を読んでるの?」


「へ!!?」


予想外からの一撃で思わず大きい声が出るハズい。

……どうやら(エキドナ)が居ない時にフィンレーから聞いたようだ。


(いやあんたら仲が良いのか悪いのかほんとよくわからんなっ!! いっつも喧嘩してるのに何で普通に情報共有もしてるの!? 男子ムッッズ!!)


思わず心の中で毒づく。


「いやいや興味を持とうとしないで! てゆーか忘れて!」


「…一体どんな本なんだ?」


慌てているエキドナにやり取りを見ていたイーサンが苦笑しながら尋ねる。


「はいその…中々アグレッシブというか個性派な本でして…」


思わず遠い目をしてまた黄昏てしまうのだった。

だがリアムには逆に好奇心を刺激してしまったらしい。


「ドナがそんな評価をするのは珍しいね。僕も読んでみたいな」


「……リー様は絶対読まない方がいいよ色々ダメージすごそう」


「ふぅん? で、いつ貸してくれるの?」


(拒否のメッセージをわかってて無視してるなコイツ!!)


片手で額を押さえながら俯く。


「……せめてサン様が確認してオッケー出たらにしよ? うんそっちのが傷は浅く(←?)済みそう」


「…なんでイーサンは良くて僕はダメなのかな?」


不穏な空気が若干出始めるリアムに対して、


「サン様の方が柔軟性ありそうだから」


真顔できっぱりと言い放つのであった。

エキドナにとってこの兄弟はそんなイメージだ。

イーサンは温和でちょっと天然が入ってる感じがするが、逆にリアムは良くも悪くも完璧主義で潔癖な印象があるのだ。


「……」


「まっ まぁドナがそこまで言うなら…」


その断言っぷりにリアムは不満そうな目でエキドナを黙って見つめ、イーサンは頬を染めテレテレしている。


「心の準備は良いですか? ……はいサン様 」


言いながらスッ…とイーサンに手渡した。

待ち時間に読み進めようと思っていたので偶然持っていたのだ。



ぱらっ


「!!!?」


めくった瞬間、その紺色の目を大きく開いて固まった。


「……」


ぱらぱら


その後も目を見開いたままただ紙を無言で早くめくり続ける。めくりつつ途中で止めて少しだけ読んでみたり。

そんなイーサンを、エキドナとリアムも黙って見守る。


しばらくして、


「……」


ぱたん


最後までかなりざっくり見終えたらしく本を閉じた。

そして顔を上げる。

いつもの柔らかい表情に対して珍しく真顔だ。


「うん、リアムは読んだらダメだ。絶対ダメだ!」


「でしょう!?」


「よくわからないけど僕だけ仲間外れなんて意地悪なんじゃないかな?」


速攻で意気投合するイーサンとエキドナにリアムは不穏なオーラをより強めるのだった。

…こうしてしばらくはあれこれ二人でリアムを説得するやり取りが続いたのだが、


「…それなら僕にも考えがあるよ」


リアムはニヤッ…と笑みを浮かべた。

……悪い顔だ。


「『僕にも教えられない本をドナが隠れて読んでる』ってオルティス侯爵に伝えよう。…今日は王宮に居るかな?」


椅子から立ち上がりリアムはとても楽しそうな黒い笑顔で周囲をキョロキョロ見渡す。

今すぐ探しに行きそうな勢いだ。

エキドナが焦る。


「ちょっ 待っ! なんつー嫌なやり方をするの! まるで私が(やま)しい本持ってるみたいじゃんか!! 」


「ドナが見せてくれないからだよ。イーサンには見せられるのに何でかな? そうだ折角だから父上にも「攻撃範囲を拡大しないでぇッ!!」


「そうだぞリアム早まるなっ! 父上が見たら卒倒しかねない!!」


「……じゃあ、見せてくれるよね?」


焦る二人にリアムは言いながら笑顔圧(スマイルプレッシャー)を掛けてくる。

…なんかドス黒いオーラも付いてるし!!

こいつッ いつの間に腕を上げたのか…ッ!


「…どうしますサン様」コソッ


「う〜〜ん、あいつの性格的にはやめた方がいいと思うんだけどなぁ」


「さぁ、どうするの?」


あっ 圧が強くなった。あっ あっ (焦り)


「「……」」


あまりの圧力に二人とも全身冷や汗を流して数刻フリーズしてしまう。

しばらくして、


「もう自己責任で良いですかね…」


エキドナは諦め気味に最終確認をした。


「……!!」


イーサンに至っては圧にやられて声が出ないらしくコクコクッ! と焦りながら頷いている。

結局、リアムから放たれるあまりの圧力に押し負けてエキドナとイーサンは早々にあの本を手渡すのであった。


「最初から渡せば良かったんだよ」


得意げな笑みをこぼしながらリアムが本を受け取った。


ぱらっ…






四十秒後。


結局リアムは本をめくり始めた瞬間に固まり、その後も何とかパラパラ中身を確認しようとしていたが精神的なダメージが重過ぎたようで半分ほど開いたまま本を静かに置いて……何故かしばらくエキドナにしがみついていたのだった。

プルプル震えている。


大人びているがリアムも所詮まだ八歳。

きっと色々想定外過ぎたのだろう。刺激が強過ぎたのだろう。


「っ……あんな物が、この世にあるなんて…」


「ほら〜だから言ったでしょ〜? も〜」


呆れつつもリアムの背中をポンポンして慰める(?)エキドナであった。

…この後、二人に入手ルートとかあれこれ確認されて説明するのが大変だったけど『とにかくフィンレーに見せるのだけはやめておこう』とみんなで決めましたとさ。


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小説家になろう 勝手にランキング ★多くの方にこの小説の存在を知って頂きたいので良かったら投票よろしくお願いします! 2021年6月24日にタグの修正をしました★
― 新着の感想 ―
[一言] 薄い本は、純粋少年たちには刺激が強かったかな? (笑) フィンレー君には見せちゃダメ、絶対。 リー様は普段サン様よりも大人に見えるけど、こういうところはサン様はやっぱり年上だな、と思います…
2020/05/29 13:04 退会済み
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