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子守


____***


ギデオンと遊びつつのんびり過ごしていると、


「ドナ」


リアムが様子を見に来た。


「…………遠くない?」


「泣かれたら面倒でしょ」


エキドナとギデオンから二メートルほど離れた距離でリアムが答える。

どうやら先程のギャン泣きを警戒しているらしい。


「今寝てるから大丈夫だよ」


言いながら手招きして呼び寄せる。

ついさっきミルクをあげたりオムツを替えたりしたからかスヤスヤ眠っているのだ。

(注:オムツ交換はさせて貰えなかった。出来るのに…)


「…そう」


泣かれる心配がないと判断したリアムもエキドナの隣に座った。


「みんなと遊ばないの?」


「休憩中」


「ふ〜んそっかぁ」


「…眠ってるなら揺りかごに戻したら?」


言いながらリアムがエキドナの斜め後ろをちらりと見る。ニール達が持参して来た揺りかごがあるのだ。

しかしそれでもエキドナはギデオンを抱っこしたままだった。

少し冷えた風がサァッと通り抜けて気持ちいい。


「う〜ん、なんか抱っこしたままでいたくて…抱き心地良いからねぇ赤ちゃんって」


「そういうものなの?」


「うん。はい」


「えぇっ!?」


急にギデオンを手渡されリアムが固まる。


「もう首すわってるけど寝てるから手はこうで良いと思うよ」


強く抵抗しないのでエキドナもささっとリアムの腕を動かしながら軽く説明して抱かせたのだった。

…お気付きだろうか。

『戸惑ってるリアムが面白いから』というエキドナの悪ノリである。ぷぷぷ。


(珍しく焦ってて楽しい)


ついニヤリと悪い顔をしてしまう。

しかしそんなエキドナに気付かないほどリアムは動揺しており未だに恐る恐るギデオンの小さな頭や首を手と腕で支えていた。

一方のギデオンは抱っこしている人間がチェンジしたにも関わらずグースカよく寝ている。

やはりニールの弟か…。


「なんだかすぐ壊れそうで怖いな…」


「そういうものだよ赤ちゃんって。上手上手」


初めて赤ちゃんを抱っこした人が言いがちな台詞を口にするリアムにエキドナも内心楽しみつつ励ますのだった。


「……」


なんだかんだ言いつつもリアムだって赤ちゃんが珍しいのだろう。

黙ってまじまじと観察している。

そんなリアムとギデオンの二人を…エキドナも微笑ましく見守っていた。


「姉さま! ギデオンはリアム様にまかせてあそぼ♡」


「!?」「わっ!」


突然フィンレーが二人の間からひょこっと顔を出したので驚きで声を上げてしまう。


「早く早く〜!」


「え、待っ フィン」


「待っ…!!」


そのまま勢いよくエキドナの手を引いてフィンレーが連れて行く。

リアムも慌てるが未だギデオンが自身の腕と膝の上にいる状態で動けないのだ。


「フェ…!」


目が覚めたかのようなギデオンの声に、リアムはビクゥッと肩が跳ね冷や汗を流して、固まった…。







「流石にリー様置いて行ったのは不味いんじゃ…」


「だいじょうぶだよ! いざとなったらエミリー達がたすけるだろうし」


(まぁそれもそうか)


エキドナはあっさりリアムを見捨てるのだった。


「そ・れ・に! リアム様ばっかりずるいよ僕ともあそんで!!」


言いながらぎゅうっ! とエキドナに笑顔で抱きつき甘える。


「……」


(いや貴方とは毎日顔合わせるし『毎日のハグ』もめっちゃしてると思うんだけどねぇ)


とは思いつつも姉から少し離れて上目遣いでじっと見つめてくる弟の可愛いが過ぎる。

つい顔が緩み自身と同じ髪色の頭を撫でた。


「…フフッ 何して遊ぼっか?」


姉の言葉にフィンレーはパァッと顔を明るくし笑顔を見せる。


「ボールあそびがいい!」


「じゃあまずはボールを借りないとだね」


「うん! あのねあのねっ! 前より遠くまで投げられるようになったんだよ!」


「おっ! それはすごいねぇ〜 遊ぶ時に見せてね」


「うん!」


そう言いながらボールを用意して貰うため使用人の元へ仲良く手を繋いで向かうのだった。


その後しばらくフィンレーとボール投げをして遊び、途中でステラ達女子ズとも合流。

お花の首飾りを貰ったりしながらみんなでワイワイ過ごしていた。


「ドナおねえさんのおててかたーい! ゴツゴツしてるね〜」


「これは "剣だこ" って言うんだよ〜♡」


ステラのお陰でニールの妹であるレクシーもだいぶ緊張が解けたらしく笑顔でエキドナの手を触っている。

そんな愛らしいレクシーにエキドナは癒されデレデレだった。

…平和だ。実に平和だ。


「ん? そういえば何かを忘れてる気が」


「ド〜ナ〜…」


「!!?」


低く恨めしそうな声にエキドナがビクゥッ!! となる。

しまった忘れてたァァッ!!!


「アッ! センパイお疲れ様です!」


「……全くだよ。イーサンが来なかったら結構不味かった」


「サン様?」


「ほらあれ」


言いながらリアムは後ろを振り返ってエキドナに見るよう促す。


「キャッ キャッ」


「イテテテ ギデオン、髪の毛を掴むのはやめてくれ」


「アゥーッ!」


「いや引っ張らなくていいぞっ!」


言いながらイーサンがギデオンを抱っこしてこちらにやって来たのだ。


「サン様すごいですね〜 ギデオンもすっかり懐いて…」


(そういえばサン様動物とかにも好かれやすいんだよな〜)


そう、

最近発覚した事だがイーサンは動物に好かれやすくすぐ仲良くなれるのである。

当然のように鳥や猫を呼び寄せて戯れているのを初めて見た時は『ジ○リ…いやディ○ニーのヒロインか』と心の中で突っ込んだ。

そのまま歌い出すんじゃないかとさえ思った。(注:なお一緒に目撃したリアムは引いていた)

ちなみにイーサン自身は指摘されるまで動物寄せは誰にでも出来る事だと思っていたらしい。


「それほどでもないさ。この子は元気な良い子だし…イテテ」


「アゥアッ!」


「あららギデオン…」


言いながらエキドナは二人に近付き未だに引っ張られているイーサンの髪をギデオンの手から解放する。

ギデオンはまだ髪の毛を狙っているようなのでそのまま彼の両手を弱い力で握りリズム良く揺らしてあやし始めた。


「ありがとうドナ、助かった…」


「いえいえお疲れ様です」


エキドナとイーサンが穏やかに微笑みながら労い合う。

するとイーサンがハッと何かを思い出したような顔をした。


「あ、でもリアムも頑張ってたぞ! ドナが歌ってた歌を歌っていたし」


「えっ!?」


「…余計な事を言うなよ」


「ひぇ…っ!」


リアムの低い声と冷たい圧にイーサンがギデオンを抱いたままそれ以上喋れなくなる。

エキドナはエキドナで驚きを隠せずに固まっていた。


(え、アレ一発で全部覚えたって事!? 確かに単調だし子どもでも歌える歌だけど……いやそっちじゃなくてっ "あの" リー様がギデオンのために手遊び歌を歌ったの…?)


想像が出来ない。

赤ちゃんに興味を持ってはいたが苦手意識も強そうだったからすぐエミリー達に預けるだろうなと思っていたし。


(というかそんなレアなリー様見たかった惜しい事した…ッ!!)


「アッ! アァーッ!!」


ギデオンの明るく楽しげな声だけが辺りに響く。

リアムはその声に少し微笑んでいたのだが、そばにいたイーサンとエキドナは各々諸事情で固まっていたため誰一人として気付かなかったのであった。

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