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キラキラ


________***


キンッカンッ!!


その後ニールはリアム達三人の相手をしたにも関わらず今度はエキドナの相手をしている。


「くらいやがれッ!」


ゲシゲシッ ガッ!!


剣で激しく打ち合ったかと思えばニールが高く飛び上がってそのまま連続蹴りをお見舞いした。


「くっ…このぉッ!!」


ビュンッ!!!


エキドナが剣や腕でガードしつつまた斬り込む。



そんなノリノリで闘う二人をリアム、イーサン、フィンレー、ステラの四人が遠巻きに眺めていた。


……二人は実に生き生きと戦っている。



まぁ無理もないだろう。

リアム達男子ズはニールとの決闘には惨敗したものの、当初の目的である『女の子の顔に傷をつけるのは良くない』という叱責をニール及び根本的な原因として色々認識が甘い様子のエキドナに…三時間かけて懇切丁寧なマジ説教したのだから。


ここまで本気な説教を前世でも今世でも受けた事が無かったエキドナはその圧に怯えて反省し、序盤から『すみません』『もう顔の怪我はしません』『許して下さい』と三人に半泣きでひたすら頭を下げ続けた。

一方のニールは『えぇッ! アーノルドのオッサンに殴られて父ちゃん達からメシ抜きで説教されて次の日にはチャド叔父ちゃんにも殴られて説教されたのにまた説教ッ!!?』と始め反抗的な態度を示していたが大人顔負けの圧と長過ぎる説教でこってり絞られたらしく終盤には『スミマセンでした…』とやつれた顔で謝罪し反省したのだった。


そんな二人を見たリアム達も、ひとまず今回の件に関しては先刻行った厳重注意処分及びニール限定で


『今後エキドナと訓練する際は①顔は狙わない。②身体も跡が残らない程度に力加減をして攻撃する(注:ニールは力の微調整が苦手との事なので "布で厚く保護した剣を使用する" というルールで落ち着いた)』


という約束事を制定したので、ようやくエキドナ達を解放したである。



だからこそ今の二人の姿はまるで散歩に…いや、脱走したばかりの自由に野を走り回る(わんこ)

煩わしいリードから解き放たれたように、そんな二匹の(わんこ)がキャッキャ キャッキャと楽しそうに……戦っているのだった。


「『剣術』って何でしたっけ」


姉さま大好き!! なフィンレーでさえ遠い目をしながら呟いている。


「もはや戦闘狂の域だな…。もう怪我の心配はないと思うが、これからどうするリアム」


「そうだね…」


言いながらリアムはその青の瞳で未だ激しく動きまくる金とオレンジの人物それぞれを理知的に見つめている。


「もらったぁッ!!」


「…ここだぁ!!」


「ウワッ!?」


ドガッ!!


上から下方に向かって飛び蹴りをしようとしたニールの攻撃をエキドナは回避しさらに…何とニールの肩に飛び乗ったのだ。

飛び蹴りの勢いを利用した攻撃でニールの足は地面に突き刺さり埋まる。


ズボッ!!


「わっ!」


「まだまだァッ!!」


(何故当たり前のように地面から飛び上がって脱出してるんだろう)


そんな感じで相変わらず飛んだり跳ねたり蹴ったり、もはや剣術の域を超えた二人の対決はかなりキラキラしながら続いていた。


「……」


スッ とリアムはその宝石のように綺麗なサファイアの目を静かに閉じる。そして微笑んだ。


「手遅れだから諦めて見捨てよう」シラっ


「見切るの早過ぎだろ」


「エキドナすごいですわ〜カッコいいですわ〜!」


「「「……」」」


男子ズの複雑な心情そっちのけでステラは無邪気にはしゃいでいるのだった。

すると、


「姉さま、僕とあそぶ時間へってるのに…」


俯きしょんぼり寂しそうな顔でフィンレーが呟く。


「フィン…!」


「まぁフィンくんっ…」


寂しそうな最年少のフィンレーに、年上組のイーサンとステラがハッとした表情になって慰めようと近付き肩に手を置いたり頭を撫でたりしている。


「十分、(エキドナ)に甘やかされてないかな?」


リアムは相変わらず悪気はないものの手加減もしない。

思った事そのままを口にするのだった。

するとフィンレーはムクれて言い返す。


「だって! 前はもっとずっといっしょでした! 一日中いっしょだったのに…」


「……エキドナと一緒に居たいと思う人が、それだけ増えてるって事でしょ」


「!?」


リアムの言葉で、ラベンダーの目が大きく見開いた。


「え"っいやです!! 姉さまといっしょにいたいと思うのは僕だけがいいですっ!!!」


「…!」


「姉さまはだれにもあげないです!!」


激しく反応するフィンレーは、言いながら焦りからか半泣きでリアムの背中をぽかぽか叩き続けるのだった。


そんなフィンレーの姿を見たイーサンは、


(お姉さんっ子だから独り占めしたいんだな〜 小さい子の独占欲ってなんだか可愛らしい…)


とステラと一緒に微笑ましそうに見つめ癒されていた。

しかし未だ背中をぽかぽかされているリアムの方はというと、


(『シスターコンプレックス』ってフィンレーのような子を指すんじゃないか? これから大変そうだな…………エキドナが)



この姉弟(きょうだい)の将来をにわかに悟っていたのだった。



その後、エキドナとニールは戦うだけ戦ったので頃合いのいいところで試合を切り上げ、みんなで休憩がてらお茶をするのだった。賑やかな会話を楽しみながら各々茶菓子を頬張る。


「つーかオマエちっこいのによくあんな強い一撃出せんなーッ! どっから力出てんだッ?」


「アレ腕力だけじゃなくて全身使って打ち込んでるからあぁなるんだよ。その代わり溜めに数秒時間掛かるのが欠点なんだけどね〜」


「そうなのか! じゃあオレも練習すれば出来るのかッ!?」


「出来ると思うよ。それはそうとニールこそ身体でかいのによくあんなに跳ねまわれるよね、身体の重さとか感じないの?」


叔父(おじ)ちゃんに鍛えられたからなーッ! 『たいかん』ってゆーとこ鍛えるトレーニング法あってよーエキドナもやるかッ?」「うんぜひ!!!」


「返事が早いなっ!!」


即答するエキドナにイーサンがつい突っ込むのだった。


「けどよー、まさか "あの" エキドナとダチになるとは思わなかったぜッ。だってお前ユーメーだもんな!!」


「ああ、リー様の婚約者だから?」


「ちげーよその名前ッ!」


「??」


(名前?)


思わず首をかしげる。


「だから〜『キラキラネーム』でユーメーじゃねーかッ! "エキドナ" って "悪魔" って言葉とほぼ同じ意味だしよッ!」


…………………は?



この時ッ!

エキドナの魂は一瞬宇宙空間に放出された!!



「オレでも知ってるジョーシキだぜ〜ッ!!」


数刻思考が停止したのち……恐る恐る、横を振り返ってリアム達を見る。青い目と視線が合った。


「ははっ! あははっ 知らなかっ…た、の!!?」


リアムはめちゃくちゃ楽しそうである。

隠す気皆無でお腹を抱えてゲラゲラ笑っている。


(前から思ってたけどあんた実は意外とよく笑うよな)


「ふふっ! …はっゴホゴホッ! ンン"っ…ええと、……こっ、個性的で、良い、名前なんじゃないっ、かなぁー」


イーサンは笑い過ぎてむせつつも必死にフォローしようとしていた。かなり棒読みだけど。


(…ありがとういつも優しいね。こっちを見てくれてもいいんだよ?)


イーサンは首がねじ曲がりそうなくらいに誰も居ない後方を振り返って話している。

しかも全身プルプル震えている。

震えすぎて持っているカップも震えてお茶こぼれてる。

(注:震える王子2) ←NEW!!


「だっ だだだ大丈夫だよ姉さま!! ほらっ リアだって "天使(アンジェリア)" なんだし!!!」


(めちゃくちゃ動揺してるねフィンちゃん。ここまで声うわずってるのは初めてじゃあないかなぁ)


うん、アンジェが "天使" って意味なのは知ってた。現にリアル天使だし(←シスコン)

つか『天使と悪魔』……姉妹でセットなんかいっ!!


「大丈夫ですわエキドナ! (わたくし)の "ステラ" も珍しい名前ですから♡」


動揺しているエキドナにも笑い転げているイーサン達にも気付いてないのかいつも通りぽわぽわにこにこ話すステラ。


(うんそーだねありがとー♡ …いやいや "(ステラ)" と "悪魔(エキドナ)" の名前の痛々しさに差を感じるのは私だけぇッ!?)


というか、前世と神話とかちょいちょい話が違ってた癖になんで『エキドナ』がDQNネーム扱いの価値観だけ一緒なのッ!?

なんでちゃっかりキラキラネームの概念は存在してんの!?

なんで私が前世(むかし)を思い出したての頃に言ってた『前世で言うところの "悪魔(あくま)ちゃん" だよ!!』がフリみたいになってんのぉぉぉッ!!?



心の中の激しいツッコミに自分自身が飲み込まれそうになっているさなかエキドナは、


「……これからは『ドナ』とでも呼んで下さい〜〜」


そう、絞り出すような弱々しい涙声でテーブルに突っ伏すのであった。

考え込み過ぎて力尽きたのだ。


こうしてフィンレーの『フィン』、イーサンの『サン』、リアムの『リー』に引き続きエキドナの『ドナ』の愛称が誕生した。

そしてこの宣言以降、本人達の血の滲むような努力(と懇願)により友人間で『ドナ』の愛称呼びは確実に定着して行ったのだった。

リアムだけは最後までしつこく『エキドナ』呼びだったが。(注:絶対嫌がらせ)

あまりにもしつこくて腹が立ったので、後日剣の試合でめちゃくちゃプライドへし折りにかかりましたとさ。

貧弱! 貧弱ゥ!!


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