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+α閑話 〜よく見たらわかるしわかり易い〜


________***


アーノルドによる剣の指南を終え休憩がてらエキドナ、フィンレー、リアム、イーサンの四人でまったりお茶をしていた時の事。


「そういえば…なんでエキドナはあまり目を合わせようとしないんだ?」


「…はい?」


イーサンの唐突な質問にエキドナがイーサンを見ながらキョトンとした顔になる。


「いや、今は目が合ってるけど君は時々視線を敢えて逸らしてるというか……逸らす回数が多い気がして何でかなって」


「確かに昔ほどでなくてもこちらをあまり見ようとしないよね」


しどろもどろに理由を話すイーサンにリアムも賛同した。


「あぁ…そういう事ですか」


エキドナも二人の言葉に納得し、顔をやや下に向けながら説明する。


「私って…自分で言うのもアレですがちょっと目力強過ぎる気がするんで……。昔ただ目が合っただけで『睨まれた』と何回か言われまして」


「えっ! 姉さまそんな事があったの?」


「……それは、傷付くな」


「いえいえ過去の話ですから」


エキドナの理由に各々反応したフィンレーとイーサンにエキドナが顔を上げ明るい口調でフォローする。

蛇足だが前世でも目が合ってだけで『睨まれた』と言われた事があったから私の目付きはやはり良くはないらしい。


「へぇ…そういう理由だったんだ。でもエキドナ、僕達にはそんな気遣い必要ないんじゃない?」


リアムの指摘にエキドナは一瞬思案した。


(え? でもこの目が不快にさせるかもならあんまりガン見したら不味いと思うんだけど…)


「今迷ってるみたいだけど、そういう遠慮は要らないよ。…イーサンもそう思うでしょ?」


「あっ あぁ! 俺達の事は気にしなくても良いんだぞ」


「…そうですか。わかりました」


そこまで言われたら改めるしかないな。

……正直見つめ合うのって少し恥ずかしいんだが。


「それでいいんだよ。…そもそも、僕は先程貴女と同じ目をしたオルティス侯爵に睨まれたばかりだしね。何とも思わないよ」


「……」


楽しげに笑うリアムにエキドナが複雑な気持ちになる。


(え? お父様と同じ? …確かに同じ金眼だけどお父様ほど目付きヤバくはないんじゃ……)


「エキドナ、今ムクれてるでしょ」


「!」


「貴女は意外とわかりやすいからね」


今度は少し呆れを含ませてリアムが笑った。


「リアム、よくエキドナの変化がわかったな。俺には変わらず無表情のままに見えたぞ」


二人のやり取りを見たイーサンが関心したように言う。


「よく見ると結構わかり易いんだよ」


「たしかに姉さまはわかりやすいです」


フィンレーもリアムの言葉に頷きながら同意する。


(いや私ってそんなわかり易い方か?)


エキドナが内心戸惑っていると、


「フム、そうなのか…」


言いながらイーサンが椅子から立ち上がりエキドナのすぐ横まで移動した。

イーサンの方へ顔を向けているエキドナの視線に合わせるように姿勢を低くして顔を覗き込む。


じーーーーーーーー…


間隔およそ十五センチ。かなりの至近距離である。

イーサンがエキドナの顔を凝視し過ぎてお互いの目にお互いの顔が映り込んでいる。


「「…………」」


じぃぃーーーーーーーー……


(…いや見過ぎでしょ。近いし。…なんか照れるわ)


あまりの視線に耐え切れず、エキドナはフイッ…と顔ごと視線斜め下に逸らした。

頬が少しだけ熱を持つ。

そんなエキドナの僅かな変化を垣間見たイーサンは、


「か、かわいい…」


顔を赤らめ軽い驚きと共に呟くのだった。

その瞬間エキドナは「は?」と怪訝な表情を浮かべながら顔を上げ、リアムとフィンレーは素早くイーサンの方へ視線を送る。


「…イーサン」


「ちっ違う! 誤解だ! 思わず言っただけだ!! そんな低い声を出さなくとも、」


「…いくらサン様でも、姉さまはダメですゆるしません…」


「君も君で誤解だ!」


表情を落として冷めた視線を送るリアムと殺気立つフィンレーにイーサンは慌てて弁解するのだった。


結局、イーサンがエキドナの僅かな表情の変化をバッチリ理解出来るようになるのはもう少し先の話である。





その後。


「フィンレー、イーサンはダメでも僕は貴方の姉に手を出しても良いんだよね? 婚約者だから」


イーサンが席を外した僅かな時間を狙ってリアムがフィンレーに声を掛ける。からかい半分のようだ。

するとフィンレーはジト目でリアムを軽く睨みながら冷静に言い返した。


「…あなたと姉さまのこんやくはうそだって聞いてますけど?」


「! …………エキドナ?」


「……」


リアムの何か言いたげな視線をエキドナへと注ぐ。

そんなリアムにエキドナもつい反対方向へと顔を背けるのであった。


「「……」」


リアムはその青い目を決して逸らさない。

二人の間で無言のやり取り…否、リアムの一方的な無言の圧だけがエキドナに注がれて行く。

エキドナの中で言葉に出来ないいたたまれなさと罪悪感が時間と共に降り積もる。

結局、


「ごめんなさいカミングアウトしましたぁぁぁッ!!」


リアムから放たれる圧に負け、エキドナは白状し謝罪した。

こうして偶然にしろ、偽の婚約関係をフィンレーが把握しているのをリアムに知られたのであった。


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