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閑話 〜よかったよかった(イーサン視点)〜


________***


リアムとの最初の出会いがいつだったかは覚えていない。


ただ俺は、母の後ろから…或いは物陰からソッと覗くように遠巻きに弟の姿を見たのが始まりだったと思う。

自分とは全く違う容姿で、かつ父と揃いの金髪を持つ腹違いの俺の弟。


遠くで見た最初の印象は、


『俺より歳下なのに偉い人達に囲まれて、でも笑顔で堂々としててすごいな』


だった。


噂によると勉強も運動も何でも出来るらしい。元々王位を継ぐ気皆無だった俺は『天才』とみんなに賞賛されている(リアム)を見て、素直に納得した。

あぁなるほど、確かにリアムの方が良い王様になれるな。そもそも俺は王様なんて立派な仕事出来そうにないしよかったよかった…くらいに思っていた。

同時にそんなすごい子が俺の弟なのか〜と当時はあまり実感が湧かなかった気がする。


当時の俺は…純粋にリアムと仲良く出来るのなら仲良くなりたいと思っていた。

だって母親が違うけど父親は同じなんだ。

もしかしたら気が合うかもしれない。一緒に居て楽しいかもしれない。

そんな淡い期待が俺の胸を()ぎった。


しかし、俺は『妾の子』だからリアムに堂々と接する事が出来なかった。

周りの人達の視線……特にリアムの母親の実家であるジャクソン公爵家の人達の俺を見る目がものすごく怖かった。

だから簡単にはリアムに近付けなかった。

そしていつも俺に優しくしてくれる…敬愛すべき両親にも俺の事で余計な心配を掛けたくなかったから。

…だから、気付いた時には俺はリアムと関わる事を諦めていた。




しかしある日、俺はリアムのある一面を知る事になる。

それは離宮内の通路で偶然目撃したものだった。


(…………え?)


一瞬自分の目を疑った。何度も擦っては凝視した。見間違いじゃなかった。

……リアムのその表情にいつもの笑顔はなく、どこか悲しげで…壁に背を預け、綺麗な青い目を下に向けて、何かを諦めているような…辛そうな様子だった。

その項垂れた小さな身体が痛々しくて…何故か俺の方が泣きたくなりそうなくらいに胸が痛くなった。



(何が、『よかったよかった』だ。

あいつは……全然よくなさそうじゃないかッ!)



自分が恥ずかしくなった。

俺は自分よりも年下の男の子に…実の弟に、なんて重いものを背負わせて、苦しめて、何を呑気に暮らしていたんだろう。


この瞬間、俺の中でリアムの印象が『未来の天才国王』から『小さな男の子、たった一人の弟』に変わり、これが……俺がリアムと関わりたいと強く思った切っ掛けだったのだ。








その後協力者を得て、リアムに再度関わろうとするものの。


…リアムからの初めての伝言が『分を弁えろ』。

初めて直接言われた言葉が『うるさい、お前は黙っててよ』。


…………。


そういえば初めは俺の存在丸ごと無視されてたな…。

あ、ダメだ、なんか涙出てきた。


結構ショックだった。

そりゃ今迄まともに交流した事なかったからすぐに仲良くなれるとまでは思ってない。

でも、


『え、俺めちゃくちゃ嫌われてる…?』


そう感じた時の俺の気持ちはきっと想像し難いだろう…。


でも、その後のリアムがキレながら言った真実にはかなり驚かされた。

何故なら両親はそんな事を一度も俺に教えてくれなかったからだ。

父上と母上と…リアムの母上にそんな過去があったなんて、と。


でも真実を知ったからといっても……我ながら不思議なんだが…正直リアムの母上にはそれほど怒りを感じなかった。

結局俺の両親は今では仲睦まじくて幸せそうだし、何よりリアムの母上が居なければリアムはこの世に存在しないのだ。

だから上手くは言えないが…頭ごなしに否定する気にはなれなかった。


だがジャクソン公爵家は別問題。

強い怒りを感じた。ひどすぎる。

これほどまでに怒りを感じた事はなかった。

……まぁ、結果的にはリアムが主体となってジャクソン公爵家を潰そうとしているんだが。

あの笑い方は怖かったな…。

弟だけど敵に回したら本当に危険なやつだと直感した。



でも、その反面今迄の環境の所為か人の好意を全然受け取ろうとしない子でもあるんだ。

…あんな寂しそうな顔しといて『僕と一緒に居てお前に何の意味があるんだよ!』だぁ?


深く考え込み過ぎなんだよ馬鹿野郎!!

もう少し(おれ)の事を信じてくれたっていいじゃないか!!!


つい怒ってしまったが勢いで色々本音を伝えられたし、リアムにもちゃんと届いたみたいだし結果オーライだ。

それに……『兄上』と、呼んでくれた。感動だ。

ものすっっっっごく小さな声だったが聞き取れた俺の耳に感謝する。

…その後はずっと『イーサン』と呼び捨てだが、まぁいい。

これからもリアムを一人にさせないで仲良くなって、また『兄上』と呼んで貰えるよう努力するのみだッ!!




…そして話は変わるが、俺とリアムの橋渡しをしてくれたエキドナには本当に感謝している。


エキドナ・オルティス侯爵令嬢。

彼女はリアムの婚約者なので俺にとっては未来の義理の妹になる。

最初は目つきとか表情とか態度とかが冷たくて怖かったけど、中身は素直で心根の優しい良い子だった。


でも困ったなぁ。

正直……俺、エキドナの事好きになっちゃったんだよな…。

ああ見えて意外とちゃんと笑うし……笑った顔も結構可愛いんだ。

リアムの婚約者じゃなければな…と少し心のどこかで残念に思ってしまう自分がいる。


でも俺はリアムの兄だからな。

エキドナもリアムもどちらも大切なんだ。

それに俺の婚約者も良い子だから大事にしたいしな!

…というか、リアムは俺の事をああだこうだ言っていたが俺からしてみれば、婚約者があんな優しくて素直で身体張ってでも向き合おうとする面倒見の良い可愛い子なんて羨ましいぞ!! マジで!!!



……こほん、しまったつい羨ましさから取り乱してしまった…。


そういえばエキドナがあんなに剣強かったのは驚いたな…。

でも、じゃあなんでいつも強い力で掴まれるとビクッと身体を強張らせて怖がるんだ?

気の所為かもしれないが……特に後ろから急に掴まれるのが嫌みたいだ。今後も気を付けよう。


さて、話を戻して…リアムの事を父上と母上にも伝えた事だしリアムと両親の関係も少しは良くなればいいなと思っている。

エキドナは『不仲のままでもいい』と言っていたが……大人な意見だ。

だからエキドナの意見も取り入れつつ、今はリアムの意思を尊重しながらとりあえず俺がそばで支えれば良いと思ったのでそれを継続して行くつもりだ。


あぁそうだ、今度のお茶会にリアムも誘おう。

俺が選んだ紅茶とお菓子、気に入ってくれるといいな。


…よしっ これからも頑張るぞ!!!


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