表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/233

状況整理とさらなる問題


________***


(何でよりによってクラーク先生!!?)


予想外の人物の登場で驚き見つめているとクラークの後ろからフィンレーが『ごめん』と言わんばかりに両手を合わせ謝るポーズを取っている姿が視界に入った。


(あ〜…途中で出くわして誤魔化せなかったとかかな。ジェスチャー可愛いから許す) ←ブラコン


しかしそんなエキドナに対してクラークから非難の色が混ざった視線を受けているジェンナは先程まで悪かった顔色も怒りで真っ赤になり、わなわなと小刻みに震えていた。


「よくも…よくもお兄様に告げ口しましたわね!? ジェンナを嵌めてこんな恥辱を味合わせるなんて、絶対に許しませんわっ エキドナ・オルティス!!!」


(広がって行く誤解)


エキドナはつい死んだ目で立ち尽くす。

もはや諦めの境地に入ってしまい弁解する気力も無いのである。


「ジェンナ、これはどういうなのか説明…」


「お兄様に説明する事なんて何もありませんわ! 行くわよ貴女達!!」


クラークの声を遮るようにジェンナは一言そう告げると誰も居ない方の通路側に向かって小走りで立ち去るのだった。


「あっ! ジェンナ様!!」


「お待ち下さい〜!」


「これって大丈夫なんでしょうかジェンナさまぁ〜」


「知らないわよッ!!」


慌てて後を追う令嬢達とジェンナの会話が足音と共に忙しなく廊下に響き渡る。



(…うん、とりあえずうやむやな感じに誤魔化せ…いや誤魔化せなかったのかなこれは)


ぐるぐる縦ロールとの間に悔恨が残ってしまった気がするがエキドナはひとまず軽く脱力し気持ちを切り替えて振り返り、未だに床に座り込んでいるミアへ歩み寄った。


「……」


彼女は何も言わず俯いている。

ふわふわした柔らかそうな桃色の髪で表情が見えない。


「大変でしたね…大丈夫?」


ミアの前で止まって少し屈み、手を差し出す。

そんなエキドナに対してミアは下を向いたまま小さな声で…けれどもはっきりと呟くのだった。


「助けて頂きありがとうございました…でも、」


エキドナの手を取る事なく自力で立ち上がり、少し汚れがついた衣服を両手で軽く叩き始めた。

エキドナも自然とミアに合わせて姿勢を戻す。



「でも……あたしは大丈夫なんで、余計な事をしないで下さい」


「!」


エキドナを軽く睨むように綺麗な淡い薄緑の瞳で真っ直ぐ見つめている。

その意思の強そうな瞳にエキドナは直感で感じ取り……少しだけ、懐かしい気持ちになった。


「失礼します」


「フローレンス嬢!」


頭を下げ静かに立ち去ろうとするミアをクラークが呼び止める。


「ジェンナが迷惑を掛けたようですまなかった。…話を聞かせて貰えるか?」


問い掛けにミアは無言で首を縦に振る。

その反応を見たクラークは次にエキドナ達の方を向き口を開いた。


「お前達にも後日話を聞かせて貰う。それでいいな?」


「えぇっ 何で僕達まで…!?」


「流石に疑ってはいない。単なる事実確認だ。第三者の証言も重要だからな」


一瞬『ゲームの強制力が働いたのか?』とエキドナもフィンレーと一緒に身構えたが、クラークの様子を見る限りエキドナがミアを虐めていたと判断しないでくれたようだ。


「承知しました」


普段通りの声色でそう答えるとクラークは頷いてそのままミアを伴いその場を後にする。

…エキドナ達と視線を合わす事なく俯き沈黙を貫き続けるミアのその華奢な後ろ姿を、エキドナ達はただ無言で見送る事しか出来ないのであった。





「あら〜♡ もしかして迎えに来てくれたの〜?」


するとエキドナに向かって両手を広げ、駆け寄りながら明るく声を掛ける令嬢が一人。


「あ! エブリン居た!!」


「サラッとハグ拒否されたわ〜でもそんな簡単に流されないドナちゃんが大好き♡」


あいも変わらず……否、何故かいつもより積極的なエブリンの対応にエキドナの顔が引きつく。


「それはどうも…。ていうか貴女とフランをずっと探してたんだよ。どこ行ってたの〜?」


「フランのハーレムにお邪魔したらフランの今カノ達の中に私の元カノが居たの♡ せっかくだからその子と『どうすればノンケのドナちゃんを落とせるか』について色々相談しちゃったわ♡♡」


「情報量が多いッ!!!」


生き生きと満面の笑みで答えるエブリンにエキドナが叫ぶ。

余談だがエブリンの場合、今迄付き合った恋人とは全員円満に別れているそうで現在でも友人として良好な関係を築いているらしかった。


するとそばで話を聞いていたフィンレーが若干引きつつ尋ねる。


「という事はフランはまだ学内? どこに居るの」


「このまま真っ直ぐ行くとサロンを借りられる棟があるでしょ? そこの一番奥よ♡ 今カノ名義で借りてるからわからなかったのね♡♡」


「なるほど…とりあえずフラン捕獲してくるね姉さま!!」


「うん行ってらっしゃ〜い」


こうして『クラークルート』の悪役令嬢ジェンナによるミアへの虐めを妨害したエキドナは、当初の目的だった双子探しに戻ってフィンレーを送り出すのであった。



________***


「『余計な事しないで下さい』…。う〜ん、ミアはやっぱり転生者なのかなぁ。もしそうだとすると、ミアって『クラークルート』を目指しているんじゃないかと思えてきた」


その後フランシスを引きずったフィンレーと合流したエキドナ達は一通り生徒会業務を終えたあとでセレスティアと落ち合い、彼女の自室にお邪魔して先程起こった出来事を情報共有していた。


「いやはやミア氏が転生者かはさておき『クラークルート』に入っているかもしれませぬなぁ」


ミルク入りの紅茶を口に含みつつ…セレスティアが口を開く。


「うろ覚えの記憶でござるが、攻略キャラの一人『クラーク先生』と悪役令嬢『ジェンナ・イネス』はお互いの両親がはとこ同士の…つまり三従兄妹(みいとこ)の関係であります!!」


「え、想像以上にすっごい遠い親戚なんだね。あと "三従兄妹" って単語初めて聞いたわ……もしかしてさ、イネス伯爵家ってアイビン子爵家の本家?」


「いかにも! あのお二人の曽祖父母の代でイネス伯爵家から派生してアイビン子爵家が出来たのでござる〜」


「そっか〜」


セレスティアの説明にエキドナも紅茶を飲みながら納得する。

一応貴族令嬢の立場なので、ある程度の貴族の名前や立場などは頭に入れているのだ。

……時々『あの貴族なんて名前だっけ??』と思う程度には穴あき状態であるが。


「話を聞く限りではミア氏の転生者疑惑が黒よりのグレーになったという感じですかなぁ。ただ確かに状況からして『クラークルート』が一番可能性高そうでござる。あとは『イーサンルート』と『フランシスルート』も一応フラグ建っておりますぞ」


「個人的にはサン様はステラとくっついてほしいし逆に女好きチャラ男とヒロインがくっ付いたらミアが苦労しそうだし、クラーク先生が一番安全なのかもねぇ」


しかし、そう答えつつエキドナ脳裏にふと浮かんだのは深緑色ぐるぐる縦ロールの後ろ姿。


「…じゃあジェンナが『悪役令嬢』として立ちはだかるって事か」


「そうなりますなぁ」


「なかなか難しい話だね。……いやそもそも人の恋路をあぁだこうだ言って介入する事自体が傲慢過ぎるか」


「まぁまぁ。とりあえず難しく考えずにワタクシ達は様子見しましょうぞ〜」


「おー」





こうしてセレスティアとの情報共有及び今後の方針について意見がまとまりその日は何事も無く平穏に過ごす事が出来た。

さらに翌日登校した際には、クラークに叱られたのかジェンナはミアを遠巻きで睨み付ける以外あからさまな問題行動は起こさなかった。

このような日々が数日ほど穏やかに流れて行くのだった。

……数日間は。




「ドナ! お願い助けて!!」

「ドナちゃんお願いっ…」

「エキドナ様のお力を貸して頂きたいのです! フローレンスさんに何度もやめるようお伝えしても聞いて下さらなくって…!!」


ある日の放課後、エキドナは数名の友人達と顔見知り程度の令嬢達に囲まれひたすら懇願されていた。

目に涙を浮かべる令嬢まで居る中で…思いがけない相談をされて頭が痛くなるのを感じる。

思わずエキドナは指先で自身のこめかみを押さえて俯くのだった。


(ミアさん…アウトだよ。人の婚約者誘惑はアウトだよ…!!!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ★多くの方にこの小説の存在を知って頂きたいので良かったら投票よろしくお願いします! 2021年6月24日にタグの修正をしました★
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ