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猫二匹と始める異世界下水生活  作者: 友若宇兵
第一章
24/75

24話

今更ですが、以前投下分もこのような感じで誰視点かわかるようにしようかと

* オリー *



 感謝の言葉を述べる宿場町の人たちを振り切って急ぎニールについたとき、ちょうどフォド・ニール攻撃の対策を練っているところだった。そこに勝利の知らせが入って、辺境伯も喜びのあまり玄関ポーチまで出てきて僕らを迎え入れてくれたくらいだ。お姫様にも大変感謝されたしね。家宰さんは騎士や従士たちに何度も何度も確認を取ってたけど、「我々の言葉が信じられなければ宿場町で人質にされた人たちを問いただしてください」とまで言われて黙っちゃった。先にトカゲ犬の首を持って帰ってた二人も無事についていて、デカブツ三匹の首も合わせて検分され、西門に晒されることになったよ。これは流石にさっさと埋めればいいのにと思ったけどね。


 で、僕はまた賓客として離れに泊めてもらっている。晩餐も前回よりさらに豪勢だった。傭兵たちも呼ばれたくらいで、ヒゲモジャが街での戦闘を誇張もいれつつ情感たっぷりに皆に語って聞かせ、何度も何度も繰り返させられてヘトヘトになってた。彼は特に報酬多目だったようで満足げだったけどね。


 とはいえ疲れたので今日のところはさっさと寝よう。僕が食後にウツラウツラしてたら、辺境伯もお姫様もまだ話したそうだったけど、解放してくれた。


 離れについて二階に上がり、上着だけ脱いですぐにベッドに潜り込む。猫たちも僕の横に入ってきた。今日はモノを壊したりしないでくれよ?


 さて、明日はどうしようか。今回は何とかなったとは言え、元の世界への帰還の目処は全くついてない。


「ニャー」


 ため息までこれかよ。結局僕はいつまでこのままなんだ?


 猫の体温を感じながらすぐに意識は薄れていった。




 * マリークレスト *



 襲撃の報を受けたときは私も含め屋敷にいるもの皆が取り乱しました。すぐさまお父様にも無理を言って起きて頂いて会議を開くことになりました。とはいえ、対策など講じようはずもなく。ニールにまで攻めてきたら城門を閉めて王都に援軍を乞うくらいしか出来なかったでしょう。そう、完全にフォド・ニールのことは切り捨てていたのです。


 そして、集まってみたものの、会議と呼べるほどのものでもありませんでした。私も出席こそ認められはしましたが、ほとんど発言できません。騎士団長と言い合いをする叔父を横目に、無理に参加した父の手を握り背中を擦るだけ。そんな中です。息を切らした騎士団の先触れから、魔軍を討ち果たしたとの報告があったのは。



 猫が、猫が、と切れ切れに要領を得ない物言いをする先触れ。余人には到底理解しうるものではありません。ですが、私にはわかりました。彼らがやってくれたのだと。やはり彼らに賭けるしか無いのだと。




 * ヒュー *



 ニールの貧民街にある安酒場で麦酒を傾ける。あー不味いそして薄い。水入れすぎだろ。とはいえ下手に上等な酒を飲んでても目立っちまう。


 酒場の隅の壁際に陣取り、部下が来るのを待つ。ツマミにも手をつけるがこれまた不味い。さっきの晩餐会も正直大概だった。酒はなかなか良かったけどな。この国の料理は昔から大味らしいのだが、このニールは貿易で栄えてるだけ他よりはマシらしい。実際これらの料理も値段相応のものだし、わりかし悪くない方ではあるのだろうが、無闇に自分の舌が肥えてしまったせいか不味くてしょうがない。


 心の中で愚痴っている間に待ち人たる部下が来た。平凡な顔立ちでどこにでも潜り込めそうな目立ちにくい、人の印象に残らない男だった。部下は来る途中できちんと注文をしてから席に座った。


「恐らく本物だろうな。あんなものは今まで見たことも聞いたこともない」


 開口一番結論から告げる。部下のおもだったものにはある程度の事情を打ち明けてあった。


「そうですか、では発見の知らせを都に送っておきます」


「いや待て、上にはあげなくて良い」


「よろしいのですか?」


 主に逆らうような命令を出しているのに、表情一つ変えない。そう言えばこの男が驚いたり取り乱したりしたところは見たことがなかった。


「あぁ、構わん。もうしばらくは」


「お言葉とあらば」


 しかしなぁ、と腕を組んでへの字口をする。


「眉唾だと思ってたんだがなぁ」


「主のお言葉を信じてなかったのですか?」


 俺がその主の言葉をお前たちに伝えたときはみんな欠片も信じてなさそうに見えたぞ?


「あんな訳のわからん言葉を信じられるほど俺は純粋無垢じゃあない。陛下には『目標今だ発見ならず、引き続き捜索を続ける』と伝えろ」


「ではその通りに」


「陛下とて、出現を予見しただけで別にそれをどうしろとおっしゃったわけではないからな。まぁこっちは可能ならなんとか利用したいと思ってる」


 部下たちには素直に伝えておく。何が目的で利用するかについてまでは言ってないがね。言う必要も無い。


 秘密にしたことを他の魔将に知られたら正直面倒ではあるが、その時は「確認中でした」とか言えば良い。大した問題にはならないだろう。そもそも、発見を聞いたとしても動くとしたらあの狂人くらいかね。んで、あいつの担当地域は西方で、大掛かりな手段は取れないはずだ。


「俺はしばらくここら辺をうろつくことにする。細かい指示は後で文書をしたためるのでそれに従え」


 部下はため息をついて頷いてみせた。また気まぐれをおこしやがってとか思ってるんだろうな。まぁ気まぐれだってのは当たってるんだが、俺の勘は多分外れてない。うちの部下は優秀なのが多いし、しばらくなら留守にしても大丈夫だろう。


 あぁ、あいつにも手紙を書くことを忘れんようにせねば。



 元々、後方支援国家群を牽制し、混乱させるために手広く活動しようとしていた矢先のことだった。難民に紛れて古王国に潜入させた盗賊団が一日で半壊したとの報告を受けて予感というかピンとくるものを感じる。原因を知るために辺境伯家に近付こうとしていたところ、傭兵募集は渡りに船だった。


 自分で派遣した魔獣を討伐する仕事に自分で参加するとは思っていなかったが、これがまさかの大当たり。同行した騎士は詳細を話さないし、西方人はこちらの言葉を話せないしでどうなるかと思った。まぁ一晩同行して、確信こそ持てなかったが、盗賊皆殺しにはあの西方人が関わっているんじゃあないかとあたりをつけることは出来た。あんな胡散臭い連中を騎士がお客様扱いして、怪我をしたくなければ近寄るなとか言われりゃあ予想もつく。もっとも猫の方がやったとは思わなかったがね。


 宿場町の襲撃も俺の指示だ。実際どれほどの連中なのか戦力を測らなきゃならんので、町に入ってすぐ、配下の連絡員に通達し、付近に居た破壊工作部隊を呼び寄せる。ああいうのを幾つも戦線後方に浸透させるよう進言しておいて正解だったな。それに第二軍所属の部隊だったので手勢を無駄死にさせずに、思い切り良く使い捨てることが出来た。やつの配下を死なせたことは文句を言われるかもしれねえが、次のでかい戦争でまた山程死ぬ。先に少し減ったところで気にするほどのことじゃあない。




 さて……あの猫たちはどうか。正直現状では期待はずれと言ったところだろう。あの程度では魔将を一人でも倒せるか疑問だ。


 白猫は魔力量こそ多そうだが、魔術の使い方ってものをわかってない。知識も足りてなさそうだ。精霊石を持ってないどころか精霊との契約もしていない可能性がある。勿論そんな状態であれだけの魔法を使えるのは凄いと思うがね。


 キジトラはそうだな、素早いとは思うがそれだけだ。あの軽さで肉弾戦を挑むというのが自分の特性を理解していない証拠だろう。見ていたところ、爪だけしか有効に活用出来ていない。人型の首程度なら落とせてるようではある。少し大きいか硬い相手ではまともに戦えなくなるじゃなかろうか。体の使い方もまだまだだし、身体能力の高さが体に馴染んでいなさそうな感じがする。そもそも、人の弱点を知らないのではないか? とは言え白猫よりは遥かにマシかもしれん。獣の一番の攻撃は爪ではなく牙だと言うし。


 それにやつらは猫だ。猫は視力が弱く、人間を顔で判別していない。よほど人と姿かたちがかけ離れていない限りは敵味方の区別がつかないということだ。人間同士の軍隊が敵味方入り乱れて、となると同士討ちを避けるために手出しはできなくなるんじゃないか。臭いで判断するというのなら、臭いは誤魔化せば良い。そう言えば人間よりずっと鼻が強いのだったか。なら猫の嫌う臭いを使っても良いかもしれん。


 そしてもう一つ、重要な弱点がある。あの西方人、奴自体には何の力もない。知識や知恵があるのかはわからないが、立ち居振る舞いを見ても鍛えられた感じは一切しない。猫が居なければ西方帝国の商家の馬鹿息子にしか見えないだろう。あの西方人が望まなければ、あの猫たち自体は自分から動くことは無いようだ。主が害されそうになったら反応するくらいか。


 現時点でなら如何様にも料理のしようがある。やりようによっては戦う必要すら無く味方につけることも可能だろう。奴らが本当に予言の通りの存在なら俺の目的を達成するために今しばらくは生きていてもらわなければならん。幸い、他の連中より先に見つけることが出来たのだから。


これで第一章は終わりになります。現在続きを書いているところでして、まとまった量になったらまた投下しようと思っています。


ご通読ありがとうございました。なるべく早く戻ってこれるように努力致します。


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