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猫二匹と始める異世界下水生活  作者: 友若宇兵
第一章
21/75

21話

* オリー *



 目標は宿場町から北に少し歩いたところの麦畑近辺で何度か見つかっているらしい。今の所主な被害は家畜くらいだそうな。かといって放置しておく訳にはいかないんだろうね。一人旅の旅人が襲われて、食べ物を投げて逃げてきたという話もある。数がいたら襲われないのなら、僕らは結構居るし襲ってこないんじゃないかなぁと思った。


 ロバも荷馬車も宿に預けて置いてきたから、騎士の二人が馬に乗ってるくらい。ほかはみんな徒歩で、1時間か2時間くらい歩いたところ。急にカルネが尻尾をピンと立てて、顔を道端の木が群叢している陰に向けた。


「ニャー(そこにいるぞ)」


 逃がすとまずいんだよね。でもこちらの数を見たら頭の良い獣は逃げちゃうだろうし、カルネに後ろへ回ってもらおうか。

 ビアンコ、オータル卿に合図を出して。


「オータル卿、獲物が見つかりました。その木立と草陰に潜んでいますよ」


 カルネは音もなく矢のように駆け抜けるとすぐに見えなくなった。


「おい、今猫が喋ったぞ!」


 流石に今まで話してなかったからね。驚くのは仕方ないと思う。でも今はそれどころじゃあないんだ。


「それはあとにせんか、魔獣がそこに居るらしいぞ!」


 射掛けてみよ、と騎士が指示を出すと従士の一人が弓矢を構えてひょうっと草むらに矢を放った。どこに飛んでいったかもわからないヒョロヒョロの矢だったけど、魔獣は誘われるように出てきた。


 これが魔獣? 確かに大きさは犬くらいだけど、あんまり犬らしくはない動物だ。ラプトルとかああいう系統に似てるけど、前足も長めで地面につけてリズムを取りながら移動してる感じ。明らかに爬虫類なのでトカゲ呼ばわりは間違ってないとは思う。


 三匹は固まってこちらの様子を伺っている。


「こんなの犬ころと変わらねえじゃねえか、俺一人でやってやるぜ!!」


 双方互いに様子見をしているところで、急に傭兵の一人が飛び出した。


「おい、待て無謀過ぎるっ」


 静止も聞かずに短槍片手に突っ込んで傭兵はあっという間に返り討ちにあった。手足を噛まれて引きずり倒され、アチコチ噛まれて悲鳴をあげている。早く助けないとヤバイなぁ。カルネはどこまで行ったんだろ。


「いわんこっちゃねえ」 


 ヒューが懐から短剣を取り出すと投げつけた。そのまま本人も駆け出して剣を抜く。先に到達した短剣がトカゲ犬の一頭に刺さるも背中で傷は浅そう。


「お前らも動けよ! 一人じゃ流石に面倒だっ、オラァ!」


 ヒューは引き倒された傭兵を飛び越えるとそ、のまま周りのトカゲ犬を追い散らすように剣を振った。距離を取るも逆にヒューが囲まれるような形になっている。このままだと不味いだろう。


 とはいえ、おっとり刀で駆けつけた他の傭兵たちがその場に至り、均衡は崩れた。一匹はヒューを相手に、他の二匹は他の傭兵たち6人が。負傷した一人はまだうずくまっているが、命に別状はなさそうかな?


 騎士と従士はというと、逃がすなーとか、そのまま囲んでやっちまえ! とか適当な野次を入れている。この人らは何もしなくて良いのかね。まぁ傭兵にやらせるために雇ってはいるんだろうけどさ。


 さて、こちらも仕事をしなきゃいけないんだけど……。


「ニャー? (ビアンコどう?)」


「いや、あれだけかたまると、私の魔法では精密な狙いができないので巻き添えになりますね。それでも問題無ければ炎の嵐で焼き払いますが」


 アカン。


 となるとあとはカルネ次第なんだけど。


「よっしゃ、まずは一匹!」


 どうしたものかと手をこまねいて見てたらヒューが一匹に倒したらしい。本当にあのオッサン強いな。ちなみに他の傭兵たちは6人がかりでまだ一進一退を繰り広げてる。まぁあれだけピョンピョン動いたり飛びかかってきたりしたらなかなか難しそうではある。僕なら無理。


 で、ヒューがそちらの加勢に行こうとしたら、トカゲ犬たちも不味いと思ったのか逃げ出した。当然傭兵たちには止めようもない。


「おい、逃がすな、面倒なことになる!」


 カムナンさんが声をあげる。逃がすわけにも行かないし、傭兵たちと離れたから巻き添えにすることもないだろうと、ビアンコに指示を出そうとしたときだった。草むらから猫が一匹走り出て、逃げようとするトカゲ犬二匹とすれ違いざま一閃。


 勿論カルネだった。今回はミンチにはしなかった。そこまでしなくても生き物は殺せるからね。


 二匹のトカゲ犬は逃げる勢いそのままに、どうっと倒れ込んでその拍子に体が真っ二つになり転がった。カルネは見事獲物にとどめを刺すと、そのまま獲物の上で毛づくろいをしている。


 オータル卿以外は固まってしまったようだ。騎士と従士二人はまだ話を聞いていたらしくて、おおとかああとか声にならない声をあげている。傭兵たちも、さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。


「これで一応、我々も仕事を果たしたということでよろしいでしょうか」


「やっぱり猫がしゃべったぁ!!」


 今度は悲鳴があがった。歴戦の勇士っぽかったヒューですら驚いてる。そこからは酷かった。傭兵たちがトカゲ犬そっちのけで僕と猫たちを囲んで大騒ぎになった。


「お前の猫すげーじゃねえか! だから連れてきてたのか。西方人が何しに来たんだってずっと思ってたんだよな」


 ヒューも大興奮。あーでも、傭兵のみなさん臭いわ。ごめんマジでしんどいっす。褒めてくれるのはありがたいけど、猫に無理やり触ると怒ると思うんだ。だから出来れば汚いオッサンたちは触らないで欲しい。


「ニャニャー (あー、まあね)」


「おいおい、猫の鳴き真似なんてしなくていいんだぞ?」


「お前たち、いい加減に落ち着け。あとオリー殿は猫語しか喋れんのだ」


 オータル卿の不用意な発言でまたもう一山盛り上がりが。みんな大笑いしてる。


「ブッ、そんなわきゃねーだろ、冗談にしちゃあ面白くねぇぜ」


「ウニャァ…… (まぁこうなるよね……)」


「マジかよ、ブヒャヒャヒャ」


 ヒューも他の傭兵たちも笑いが止まらず、過呼吸になるものも出てきた始末だった。突っ込んで怪我をしたマヌケも一緒になって笑ってる。いいから早く血止めしろ。


「お前らいい加減にしろ、さっさと帰って街寄って飯食ったらニールに戻るぞ!」


 カムナンさんも怒って傭兵たちを街の方に押しやり始めた。それでも傭兵たちはゲラゲラ笑ってる。このオッサンどもはほんとにアカン。


 んでとりあえず証拠としてトカゲ犬3匹の首を持ち帰ることに。ヒューは見事一匹仕留めたので追加報酬がもらえることになって喜んでた。

 さて、もう2日もお風呂入ってないしさっさと帰ろうよ。今から急げば明日の晩には着くでしょ?


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