17話
* オリー *
「娘が失礼なことを言って申し訳ない。許してもらえないだろうか」
「ウニャー、ニャア(ええ、大丈夫ですよ)」
「気にしていないと申しております」
そう言ってくれるとありがたい、と胸を撫で下ろす領主様。基本的にこの人もお姫様も善人なのだろう。あんな凄惨な出来事もあったけど、最初に出会えたのがこの人達で良かった。
「長いこと話し込んでしまったね。今日のところはここまでにしようか。また話すことがあれば明日にしよう」
「ニャ(はい)」
一礼して部屋を出る。母屋を出るときに見送ってくれた召使いの人がカンテラを保たせてくれた。室内でも常にあちこちにロウソクを点けておくわけにも行かないのでトイレに行く時とかはこれを持ち歩いてくれとのこと。寝室は複数あるのでどれを使っても構わないが、離れの二階真ん中にある西側の部屋が朝日が差し込まないし、庭の眺めも良いのでおすすめらしい。僕が返事にニャーニャー言ってたら必死に視線を逸して何かを我慢しているのが気の毒だった。
んでそこからは猫たちが離れまで先導してくれている。
都合の良いことを考えてるけど、領主様やお姫様の手助けが無いと帰還の手段を探すのは無理だろう。このまま放り出されては明日の食事にも事欠くありさまだ。あちこち調べて歩かなきゃいけないかもしれないし、ここでの滞在がいつまでかかるかもわからない。でも生きるための仕事なんか始めたら、それにかかりっきりになっちゃうよね。正直帰るまでにどれくらいかかるかわからないよな……。星を見ながらそんなことを考えていた。
猫たちがいくら強くても、狩ってきた獲物を料理はしてくれない。寒い晩に一緒に寝てくれるかもしれないけど、体を洗う石鹸や拭くためのタオルを用意してくれるわけではない。猫たちは僕を守ってくれているらしい。でも君たちだけでは生きてはいけないんだ。申し訳ないんだけどね。
色々考えることはあるけれど眠くてしょうがない。昨日から色々ありすぎた。今日はさっさと寝よう。
おすすめされた部屋に入ってカンテラを掛けるところを見つけたのでそこに吊るしておく。それから靴を脱いで天蓋付きの豪勢なベッドに飛び込んだ。庭の夜の景色も綺麗そうだけどもう眠気がやばくて意識が持ちそうにない。シーツに潜り込むと、猫二匹も隙間から入ってきた。
あー、猫をベッドにあげていいのか確認し忘れてたなぁ。
まぁ怒られたら謝ろう。
許してくれるよね。
たぶん。
んじゃおやす、み。




