希望の光
久しぶりの投稿です。
練習がてらに書いてみました。
ヒーロー、正義の味方、これらは他の人のために自らの損得勘定を投げうち、助けを求める人がいるならばその人のために助けに行く人々の名称である。
そして、全ての男が幼少期に必ずと言っていいほどに憧れる存在でもある。しかし、人間というものは大人になるにつれて社会に触れ、現実を知り、昔自分らが抱いていたモノはただの覚めてしまう夢であると知り、夢を捨て、諦め平坦な道を歩み始める。
だからといってサラリーマンを否定するわけではない。彼らは自分たちの家族を養うために働いているわけであり、そんな人々がいるからこそ社会は成り立ち、日常が存在する。
ただ大人は子供にこう教えるのだ。
「いいか。夢を見るのは結構。だが夢が叶う人は一握りの才能があるやつだけだと。だからこそ凡人の君を含めた私たちは、そこそこの大学へ進学し、そこそこの会社へと就職するんだぞ」
そう教えられた社会人の1人は今日も何かに急かされて、数えきれないほどの人々が行き交う歩行者天国で歩いていた。
「すみません、おばあちゃんが目の前で倒れてしまいまして」
そう電話の相手に伝えるとそんなものほかっておけ、お前が遅れるだけで我が社の利益が減ると慈悲もない言葉が返ってきた。
何故だと困っている人がいれば助ける。それが人というものじゃないのか。どうしてそこまで無関心でいられる。
彼は常にそういった葛藤を抱えている。
正義感など社会には必要のないものだ。他人には無関心でいろ。
まるでそう言っているようにコンクリートジャングルを歩く人々は、他人に無関心で少しでも大衆と違う行動をしようものなら奇異の目を向ける。
青年が疲れ果て、ベンチに座った時だった。不意に目線を向けた先で地面が盛り上がったのだ。その盛り上がりは止まることを知らず、周囲は壊滅状態になった。
そして地面から現れたのは体長40メートルはありそうな怪獣であった。街の人々は呆気を取られ、声すら出なかったが、1人の女性が叫んだことにより一瞬にしてパニックへと陥った。皆が我先にと逃げている。他人を蹴落とし、自分が生き残るためなら何をしてでもといった人間が多く見られた。
青年は逃げることなく、突然の非日常を受け入れ死を待つばかりと座ったままである。
耳を澄ますと邪魔だどけ!私が先に行くの!と様々な声が青年の耳に聞こえてきた。
ヒーローや正義の味方はこの世界には存在しない。
「お母さん!ねぇ!起きてよ!」
「あなた!今助けるわ!待ってて!」
「まさと……! お父さんのことはいいから、はや……く逃げな……さい……」
困り果ててる人間の声も青年には聞こえている。しかし、青年自身も自分じゃない誰かが助けてくれるはずだ、俺がヒーローになれるはずがない、こんな正義感なんて持っていても仕方がないと諦めていた。
「誰か!お母さんを」
「誰か!夫を」
「誰か!お父さんを」
「「「助けて!」」」
血が沸騰するような熱さを自分の内に青年は感じた。そして、1つの小さい頃の記憶が蘇る。
夕暮れの公園で2人の子供が2つの約束をした。
1人は将来絶対にヒーローになって、困っている人たちを全員助けると。もう1人はそんな君を支えて、僕が死んでも君の力になると。
1人の人間と1人の宇宙人の約束。
「俺は……俺は! こんなことをするために大人になったんじゃない‼︎」
青年はベンチから立ち上がり、街を破壊している怪獣へと立ちはだかる。
そして、昔の約束を違えぬために、誰かを助けるために、将来の自分に昔の自分に、昔の友人に胸を張るために燃えかすとなっていた正義の心に炎を灯した。
彼は叫ぶ懐かしい名を、友人の名を。
「力を貸してくれ! 「 」‼︎」
後にこの日は世界の変化点として記録された。世界最初の怪獣の出現。人々を恐怖へと誘うために現れた化け物は街を破壊し、事実人間は恐怖のどん底へと落とされた。しかし、怪獣の出現と同時に現れたのはその後の世界で希望の象徴となった巨人である。
人々は正義の象徴へ畏敬の念を込め、「ルクス」と呼んだ。