表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Another World Adventure 旅の記録  作者: sukehami
6/44

旅の始まり:エルフ・リリアードの場合

 来る時は数十分はかけて歩いた薄暗い路地裏を、男の案内で数分もかからずに大通りに辿り着く。

「あー、お嬢さん、あっしはここで失礼しやす。町のチンピラと歩いてる所なんて見られたらお嬢さんの今後に関わるでしょう。」

 大通りを目の前にし、未だ薄暗い路地からリリアードに話しかける。

(こっちにもメンツがあるんだ…。こんなガキと一緒に歩いてる所なんてそこらへんの奴らにみられたかぁねぇわ)


「え?あ、そうですね…。でも私は気にしませんよ?これから頑張ってお仕事される方なのです。胸を張ってあなたは悪い人じゃないと言えますから。」

 優しい笑顔で男に答えるリリアード。


(……ほんとこいつ頭の中大丈夫なのか?)

 呆れた表情をギリギリで押し留め、応えるようにニコリと笑う。

「そう言ってくれるのは嬉しいんですけどねぇ、まだ何もしてない今じゃぁそういうわけにもいかねぇんですわ。宿屋はここから左に行けばすぐ見えてくるんで、約束の金だけ渡して俺は戻りますわ。」

 このまま話しているとめんどくさいことになると感じ取った男は、金貨を一枚渡して道を戻り始める。


「ありがとうございます…。あの、応援してますので、頑張ってくださいね!」

 戻っていく男に、相手から見えていなくても丁寧にお辞儀をする。


 男が見えなくなった後に大通りに出るリリアード。

(そういえばこれなんだろう…。これいくらくらいのお金なんだかわかんない…。)

 そもそも貨幣をほとんど見る機会の無かったリリアードには、幾ら受け取ったかすら分かっていない。

 かろうじて知っているのは知識上の物だけ…値段と名前は知っているが、実物は見たことがないのだ…。




 大通りを少し歩くと、宿屋の共通看板が目に入る。

 外観は他の家を数個繋げたような大きさ、窓が他の家と比べると圧倒的に多いのがよく分かる。

 扉もかなりがっしりとした作りになっており、背の高い人でも入れるような大きさだ。

 扉に手をかけて開けてみる。重さは見た目ほどではなく、スムーズに開く。

 中は誰も居らず、正面のカウンターがあるだけだ。


「あのー!すみませーん!誰かいらっしゃいませんかー?」


「はいはいなんですか?用があるならそこのベルを押してって書いてたはずだけど?大声出すと他の客に迷惑なんでねぇ。」

 声を投げかけると、奥から非常にめんどくさそうな雰囲気を纏った女が出てくる。

 注意書きまで書いたベルを見過ごして大声をあげる客というのは、字が読めないか、クレームを出すタイプの客というのが常識だ。


「えっ、あ、すみません、そういう物があったんですね…」

 高圧的な態度におされながらも、ベルを確認する。確かにその旨が書いてある…。

「町に来たのは初めてだったもので…迷惑をおかけして申し訳ないです…」

 開幕平謝りからのスタート。だが、その姿勢は相手には悪くない印象を与えたようだ。


「あぁ、なんだい。それなら構わないよ。今後気をつけておくれ。」

 先程のめんどくさそうな雰囲気は無くなり、気のいいおばさ…お姉さんといった雰囲気になる。

「それで、今日は何の用だい?といっても宿泊か食事しか無いけど」


「宿泊したいのですが…お値段はおいくらでしょうか?」


「宿屋の料金も知らないのかい。しょうがないねぇ…」

 そう言うと、カウンターの下から紙束を取り出す。

「大事な所だけ教えるよ。宿屋のマークが付いてる店は公認宿屋って言われていてね、一定のサービスが共通で受けられて、料金は同じなんだ。


 物を取られたらギルドが動いてくれたり、火事等で消失した場合は同じ物を購入できるだけの金額が返ってくる。ちなみに故意に行われたかどうかは確実に分かるから、変な気を起こすんじゃないよ?


 そしてそういう事をする人物はブラックリスト登録されて、全ての公認宿屋の結界に登録される。二度と宿屋の扉は開かなくなるから気をつけるんだね。もちろん犯罪歴がある人物も入れないよ。


 そういった通常の宿屋では受けられないような安全の提供が公認宿屋の特徴って所さね。代わりに料金は割高だから駆け出しには難しいけどね。


 一泊二日と食事無料券三枚セットで銀貨一枚。鍵代が銀貨一枚、食事は一食銅貨三枚だ。宿屋の施設は宿泊時利用無料、宿泊外で利用する場合は全て銅貨1枚。


 もちろん値段に見合った部屋と食事が出るから大丈夫だよ。その辺は公認宿屋になる時にチェックが入るし、不定期でサービスのチェックをしに宿屋の協会から人が来るから間違いはないはずよ。


 以上で大方の説明は終了。何か質問はある?」


 紙束をペラペラとめくりながら説明をしてくれる。リリアードは真面目にメモを取りつつ聞く。

「えーっと…鍵代?ってなんでしょうか?」


「あぁ、鍵代っていうのはね、最初に泊まる時に預かる金額の事さ。出先で鍵を無くす、鍵を持ってこれない状況になるなんてことはたまにあることなんだ。そういった時に部屋の鍵を変更しないと、その鍵を手に入れた人物が夜中に忍び込むかもしれないだろう?まぁ大体はそういう輩は結界にはじかれるとはいえ、もしもってのは起こり得るんだ。つまり、安全のために鍵を変更するためのお金で、鍵を無くさなければこの鍵代はチェックアウト時に返ってくるよ。」


「なるほど…そういう事でしたか。えっと、とりあえず一泊分お願いしたいのですが…」

 メモを取り終えたリリアードは、財布(巾着袋)を取り出して、先程貰った()()をカウンターに置く。

「数日滞在するかもしれませんが、その時はまた追加で支払えばいいんですよね?」


「あぁ、それでいいよ。」

 受け取った()()を軽く見回し、偽物じゃないことを確認してから、カウンター内から銀貨を18枚置く。

「はい、お釣りだよ。部屋は二階の202号室。両隣も上下も今は人が入ってないから多少なら何かしらの作業をしても大丈夫だからね。」


「あ、ありがとうございます。」

(あれ金貨だったんだ…。思ったよりいっぱい貰っちゃってたんだなぁ…。)

 お釣りの銀貨を受け取り、収納する。長くなれば数十日滞在すると言っていたので、多分そのせいでこんなに貰ってたんだろうと気付く。

(うーん…ギルドでのお仕事でどれくらいお金貯まるか分からなかったからとはいえ、長い日数指定しすぎたかなぁ…)

 鍵を受け取り、階段へと向かう。

「では、部屋へ行きますが、あとでまた外出すると思います。」


「あぁ、外出の時は特に声をかけなくて良いよ。部屋に入ってるかどうかってのはこっちで分かるから。食事はあっちの食堂に行けばいつでも食べれるからね。ごゆっくりどうぞ。」

 軽く手を振り合い、階段を登る。指定された自分の部屋はすぐに目に止まった。

 扉を開けると、自宅の自室よりも遥かに綺麗な部屋がそこにはあった。

 洋服掛けは木目が美しく、備え付けの鏡台は質素ながらも安いものではないのがよく分かる。磨かれた鏡は一切の曇りも無い。来客の想定もされているのか数脚の椅子と丸テーブルが置いてある。

 ベッドはシーツがピシッと張られており、布団も枕も全てが純白。触れていなくてもふかふかとしているのであろうと容易に想像できる。

 当然窓も曇りは無く、太陽の光をガラスの抵抗を最大限に緩和して取り込んでいる。

 カーテンはシルクのような柔らかな白いカーテンと、分厚い遮光カーテンの二種類で構成されている。絨毯も見るからに肌触りが良さそうだ。全体的に落ち着く色合いで、綺麗な部屋だとは思うが緊張はしない。


(わぁ…すごいいい部屋。何ヶ月でも暮らせそうな感じだなぁ。)

 早速椅子を一つ引いて座る。今日学んだ事の確認と今後の方針の決定のために。

(ええっと、風の街へ行くまでに大体銀貨一枚…宿一泊分って考えるとやっぱりここ高いんだなぁ…。

 で、後は移動中の食事とか寝床…寝床は木の上でも大丈夫だから、食事かぁ。保存食を3日分と水を買い込んでおけば大丈夫かな。)

 おおよその値段を予想しながら机の上に銀貨を置き、使う分を取り分ける。

(後は何か補充しなきゃならない物があるかもしれないから予備でこれくらい……)

 取り分けた銀貨は7枚。残った銀貨は11枚(と鍵代の1枚)。

(…あれ?もう十分じゃない?今日には出発できるんじゃない?もしかして、無駄に泊まっちゃった…?)

 ここでようやく現実に気付くリリアード。とはいえ、別に急ぐ旅ではないのだ。エルフの中でも感覚が人間寄りのリリアードだが、人間からすればかなり気が長い方だ。

(まぁ、いっか。今日はもうお休みして明日にしよう。お店だけ見て回りに行こうかな。)



 それからしばらく時間が経った。夕暮れももうすぐ終わり、夜を迎えようと空が赤金から烏羽色にゆっくりと移り変わっていく。

 宿から出て各店を見て回ったリリアードは、予定よりも少ない金額での買い物を終え、今は部屋で手紙を書いている。

 そう、荒くれ者(仮)への仕事の斡旋を頼む手紙だ。

 ………連絡先を知らないが。

(えーっと…まぁいいや、お父さんに出しておけばついでに届くよね。)

 楽観的に…いや適当にそう決める。

 ついでに親への手紙も書き、同じ封筒に入れておく。

 宿屋の施設には入浴施設は勿論、軽食売り場や郵便物預かり所等様々な物が有る。

 書き終わった手紙を郵便物預かり所に渡し、再度部屋に戻る。

(お風呂も大きくて凄く良かったし、ご飯もかなり美味しかった。あんまり贅沢するわけにはいかないけど、お金に余裕はあるからこの町でちょっとゆっくりしていこうかな…。)

 装備を外し、机の上に。服を洋服掛けにかけ、就寝用の服に着替える。

 バッグに入れてあった物は等しく獣臭が付いていたが、道具屋で売っていたバッグに入れるだけで臭いが取れるというアイテムが仕事をしてくれたようで無臭になっている。

(うーん、無臭だといつもとちょっと感覚が違うけど、まぁ臭いよりはいっか…)

 そんなどうでもいいことを考えながらベッドに身を沈める。

 なんだかんだ言っても明日には旅に出るつもりではある。早めに身体を休めておきたいのだ。









 ---------------------------


 以下「住民法全書」の「偽造硬貨の製造と使用時に適用される法律について」の項目から一部抜粋

 偽造硬貨の製造・偽造硬貨の使用は硬貨全体の信用を著しく下げる物として厳罰に処する。

 状況によって以下の罰則を与える

 ・製造を主導した者:    公衆への通達と一族の家系で生存している者全ての処刑

 ・製造を自ら望んで行った者:公衆への通達と処刑

 ・製造を強制された者:   内容によって変動。最大で終身刑

 ・使用を意図的に行った者: 使用した金額分の賠償と3年以上の最下級兵役

 ・使用を意図せず行った者: 使用した金額分の賠償と偽造硬貨を見分ける講習

 ・所持している者:     使用の意図の有無に関わらず没収


 製造されている硬貨には様々な特殊加工がしてあるため、偽造かどうかの判断は一般人でも可能。

 そのため、確実に偽造かどうかを確認するべきである。

 ---------------------------



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ