自己破産
なやみごと
穴が空いていた。
経験が積もり、感情を産み落とし、個性を作り出すその場所に、覗けば底の見えない、大穴が空いているのだ。
今までの数々を振り返ると、理性は仕方ないと言って前を向き、意志と感情は泣き喚きながら過ちの謝罪と後悔を繰り返していた。
後悔は先に立たずに後を追い続け、謝罪はそれを振り切ろうと身勝手に走り続けている。
そうして全くの無関係のような顔をして、役目を忘れた理性は並走している。
大穴から一つ、また一つと後悔の感情が湧き上がって、間違いや、最善の選択を後になって考え始めていた。
悩み続ける事で進歩出来ると思い込んでいる自我を、理性は真っ向から否定した。
思考は熟成され、人間性は衰えていく。
既に諦めたはずの環境に、心はより所を求めて迷走する。断片的な思考は集団になって自我に問いかけた。
問の内容は必要性で、自我はその返答に詰まっている。理性がすまし顔を辞め、苦悩と虚栄を存在しない怒りに乗せて否定する。
理性は自分の役目を履き違え、忘れていた役目を思い出したつもりになりながら、否定のみを担う。
心が理性に否定され、理性は思考との縁を切り、理性は感情へと変化していった。
残された理性の欠片が、間違いだと訴え続ける。
欲望は訴えが聞こえないようにと叫び続けている。
自身の正しさを証明するために欲望が大穴を埋めようとすると、自我がそれを必死に食い止め、熱情がその最中大穴から湧き出ようと苦心し、汚された心は涙を流しながら諦め、後悔と謝罪は自分の出番を伺っていた。
大穴が地獄に変わると、それを理性の欠片が何事も無いかのように平然を装おうとする。
思考は欲望を自我だと思い込み、熱情と欲望とを履き違え、必要性を作り出せるという虚栄を張る。
そうして尊厳はいつしか崩れさり、尊厳の居た席に自尊心が座り込んでいる。
こうして理性の欠片は自分を取り繕う事を覚え、思考は正当性の証明を諦め、熱情は欲望と共に土に埋められ、自我は自分が正しいと思い込み、感情は思考との話し合いを辞め、自尊心は影でそれを笑い飛ばしながら、心はその事に目を瞑り、憩いの場であったそこには、諦念が寝そべり、怠惰が正当性を語り、相手の居ない怒りが獲物を探し、自分自身への失望と、定まらない虚ろな嫉妬が、それをまとめていた。




