その7話 または、如何にして最強と言われた元騎士団員がお助け仮面となったのか?
おかしな世界の、おかしな国の、おかしな騎士団の物語。
今回は、元騎士団員の、ちょっと変わった冒険者の物語……
わたしの趣味は、人助け。
これでも、元は、とある国の、とある騎士団の一員だったんだ。
え?
そんな名誉ある立場だったなら、どうして辞めたんだ?
ですって?
さあ、そこだ。
どこ見てるの、方向じゃないよ。
私の趣味は、人助けと言ったよね?
あの国の騎士団にいたんじゃ、人助けにならないからよ。
その理由、知りたい?
知りたいよね〜、教えて、あ、げ、な、い。
うそうそ、教えてあげるわよ。
それはね〜、あの国の魔物、魔王の行動と関係してるの。
あれは、わたしが新米騎士の頃だったな〜、実力もないのにレベル120魔王なんてのにソロで挑戦してね。
こっぴどく、タコ殴り状態よ。
あ~、もうダメだ〜、と、思う間もなく意識が無くなってね。
気がついたら、魔王の洞窟の入口付近に運ばれてた。
無謀なことやったな〜、と思いながらも、入り口付近にいた騎士団の人たちに見付けてもらって治療所へ担ぎ込まれたのよ。
叱責されるかと思ったわ、新人騎士が死にかけたんだもの。
でも、隊長からも何も言われなかった。
後で聞いたら、あの魔王の洞窟って、ソロで挑戦した場合に負けると、魔物や魔王が入口付近まで運んでくれるらしいのよね。
わたしの場合も、魔王に運ばれた口。
その時は悔しくてね。
それから死ぬ気で訓練して、武器、というか装備を強化して、1発の攻撃の重みと強さを増していったわよ。
毎日のノルマとなってた魔物や魔王退治も、自分のレベルに合わせたものにして、段々とわたしは強くなっていったの。
レベル40と少し位行った頃かしらね〜、レベル1の試練が来たのは。
びっくりしたわよ、昨日までレベル40以上だった自分が、朝起きたらレベル1じゃない!
どうしようかと思ったわよ、その時には。
隊長たちに聞いたら、1年でレベル1に戻るってのは、あの国の騎士団にとってふつうの事態らしいのよね。
私は驚き、呆れたわよ。
どうして、こんな理不尽な呪いに我慢しているのかって聞いたわよ。
そしたらさ、返ってきた答えが……
これは呪いにあらず。
祝福だ。
なのよ。
だって、騎士団じゃなければ、普通に最高レベルの50まで行って、そのままレベル1に戻るようなこともなく魔物や魔王も倒し続けられるのよ?!
聞いた自分が信じられなかった。
でもね、あの騎士団を辞めて、あの国を出た今なら分かる、あの時の隊長たちの言葉。
自分が成長するって事を、感じながら毎日生きていけるのは素晴らしいことなのよね〜。
私は、今はここにいるんで、もうレベル戻りなんてしないんだけどね。
あの国を出てからしばらくは、レベル戻りしないのは素晴らしいと感じてたわよ、本当に。
でもね、レベル50に到達して、装備も何もかも最強クラスにして、もう強化するものもない、自分もレベルアップしないのが実感できてしまったら、どうなると思う?
そう、虚しいのよね〜。
あの国より外に出ると、魔物も魔王も、レベルなんて低い低い!
最高でも60まで行かないんじゃないかしらね?
え?それでも俺達には大変な相手だ?
そりゃそうよ。
あの国以外じゃ、レベル50になる人なんて滅多にいないからね。
で、退屈の極みになったあたしが、何を始めたかというと……人助け。
丁度いい着ぐるみと仮面があったんでね、装備の中に。
「世のため人のため、手助けします仮面の騎士。困っている人あらば、西へ東へ南へ北へ、ただ今参上!」
って、口上でね。
うまい具合に、この仮面つけると、
力は6600倍♪
じゃなくて!
力が倍増するのよ。
魔物退治に魔王の討伐援護、盗賊撃退に、おばあちゃんの荷物持ちまで!
人助けするようになって、毎日が充実してるわ〜……
うちの町の、ただ一人のS級冒険者である姉御(という呼び名だけしか分からない。本名は誰も知らない)が、酒精に弱いのに酒を飲んで、今日もクダを巻いている。
姉御は、騎士の生活に戻りたいんだろうか?
一度、聞いてみたことがある。
その時には……
「う〜ん、どうだろうね?このままでも良いって気もするし、もう一度くらいは騎士生活に戻って、レベル1からやり直したいって気になる時もあるね〜……まあ、今の生活も気に入ってるから、このままがいいのかな?」
との答え。
俺達、レベルの低い冒険者には、到底分からぬ世界ではあるな。




