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その6話 または、如何にして騎士団中隊長は強くなったのか?

おかしな国の、おかしな騎士団の物語。


今回は、騎士団の女性中隊長のお話。

鬼より強い中隊長が、全く勝てない相手とは?


私は、王国宮廷騎士団の中隊長。

私が、この騎士団に所属して、もう4年近くになる……


長い。

他の国なら、4年など新米の年齢だろうが、この国での騎士団4年は長い……

様々なことがあった。


騎士団に入って1年目。

あれよあれよという間に死ぬ一歩手前に陥り、騎士団の仲間や魔物、魔王に洞窟の外へ運びだされたのは数えきれず。

必死になって武器……というか装備?を鍛え、それこそ究極ボス魔王とも仲間数人で戦えるようになったのは、ようやく1年目の終わり頃。


ある朝、起きてみたら、妙に身体が気だるい……王と騎士団長の訓示によると、この国での騎士団員には、1年に一度、レベル1戻りという試練があるのだとか。

それからまた、必死の思いで魔物を倒し、魔王に挑戦し、ここが一番ハードな騎士団による戦闘訓練に励んだ。


そのかいあってか、レベル50という最高レベルまで行き着いたが、それからは、なにか虚しい日々……

2年目も過ぎ、レベル1戻りの日に、ようやく私は気がついた。


「そうか、レベル1戻りは呪いや試練ではない。自分の伸びしろが手詰まりになる不安を抱えること無く、いつまでもレベルアップを楽しめる、鍛錬の成果を実感できるようにするための褒美のようなものなのか!」


それからの私は、手に馴染んだ武器や装備だけでなく、新しいもの、日常品にも臆すること無く手を伸ばし、格好など気にせぬ本当の意味での騎士を目指す。


「そらそらそらそら、このゴブレットハンマーを喰らうが良い!こっちには、ショットグラスアッパーが待っているぞ!……トドメ!黒髪締めだぁ!」


ふぅ……今回も苦戦したな。


「おい、またウチの中隊長が、レベル120魔王に苦戦したとか言ってるぞ……」


「言ってることと、やってることが違いすぎるよな、ウチの中隊長。レベル120魔王にかすらせもせず、6撃くらいで倒してるのに、これで苦戦だと本気で言ってるんだもの……」


外野がうるさいな。


「おいそこ、まだ2年目の新米騎士達。お前たちも、たまには最前線で戦わねば、強くなれんぞ?」


「い、いえ!中隊長の戦い方見てるだけで、成長の糧になります!」


「そうですそうです!それに、一緒にパーティで戦わせてもらうだけで経験値入りますし……」


ああいう、後列での魔法援護組が増えてきてしまったなぁ、このごろ。

情けないことだ。

騎士ならば、先制攻撃を受けようが、耐えて一撃でも入れようという気概がなければ!


さて、今日の討伐ノルマは終了したな。

当番魔王が帰っていく。


「お前たち!今日の討伐試練は終了だ!今から訓練場へ戻って、残りの時間は、私と戦闘訓練だ!喜べよ……今日は手を抜かぬぞ!」


あー!もう最悪ぅ〜、とか、ふっ、俺の人生終わった……などと言い張る新人騎士をズルズル引っ張って、訓練場へ戻る。


と、そこには、我が愛しの子と孫達が!


「あ〜もう、ここに来ちゃダメだと言ったじゃ無いか〜。危ないからな。そこで見てなさい、今から戦闘訓練やるから。すぐに終わらせて、今日は一緒に帰ろうね〜」


戦闘訓練は、本当に、数分で終わった……

訓練後に残るは、本当に死ぬ一歩手前の状態になった新米騎士たちの残骸が多数……


「ばーばちゃん、強いんだね!(笑)」


などと孫に言われ、まんざらでもない表情の騎士団中隊長。


「そうだよー、ばーばちゃんは強いんだ!お前たちも、強くなりたいなら騎士団を目指すんだよ!国も、自分の愛する人も守れるようにね!」


その孫を見る目には、少し前の鬼の形相は、どこにも無かったという……


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