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その2話 または、如何にして新米騎士は騎士団の習慣に慣れるのだろうか?

おかしな国の、おかしな騎士団の話、その2です。


新米騎士見習いが見た、異常な光景……


私は、宮廷騎士団の一員、つまりは栄光ある騎士である。

我が手に剣や槍、盾などの武器や防具は似合わない。


我が戦いの相棒は……

着ぐるみコスチュームに絵筆、ベレー帽を被り、ハイヒールを履く。

腰には必殺の、猫と犬。


ん?

それは武装なのか?

ですと?

もちろんですよ!

これが武装でなくて、何が武装と言うのでしょうか?


え?

違うだろう、と言われますか?

武装といえば、鎧に盾、腰には剣、手には槍。

それが普通だと言われる……

確かに、普通の常識では、そうでしょうな。

しかし、そう言われる貴方にお聞きしたい。

魔術師は、何をもって戦いの道具とするのか?

ふむ、魔術書であろう、と。


普通の答えですな、結構。

では、あちらに見える、我が同僚の騎士を、ご覧ください。

彼は、何を手にもって戦闘訓練を行っておりますかな?


ぽかーんと、口を開けていても何も出来ませんぞ、お答え下さい。

はい?

そうですな、ワイングラスをもって、バスタードソードの猛攻を跳ね返しておりますな。


我々は、騎士です。

騎士は、いつ、いかなる時にも、戦える状態でなくてはいけませぬ。

それは、ご存知ですな?

よろしい。

では、王の御前にて、もし、万が一、剣も槍も盾も待機所に預けてある時に、もしも、不意に魔物、それも、魔王が現れてしまったら、いかがされるか?


無駄とは知りつつも、徒手空拳にて挑まれる……

それは大した心がけでありますな。

しかし、それでは犬死にではあるまいか?

騎士の死に様として、いかにも悔しいではないか?


そこで、

我々は、先々代の王のご命令により、手に持つものが何であろうと、即座に武器として使えるように日頃から鍛えているのである。

最初は、嫌がった者も多かったのは事実。

もう、騎士なんか辞めます!

と、涙ながらに呟いた、白いドレスに黒の網タイツなんて御仁もおられました(その方の名誉のために言っておきますが、その方は女性でしたぞ)


しかし、そのかいあって、先々代の王の催された騎士団慰労パーティの夜、襲撃してきた魔王を、我らは撃退できたのです。

快挙でした、と記録に有ります。

完全武装よりも、そこいらにあるもので戦ったほうが強かったのですからな。

それからです、王と騎士団の鍛え方が方向転換したのは。

それまでは、緊急事態のためにとの非常訓練のような位置づけの非武装での戦闘訓練が、通常の戦闘訓練となったのです。



私は案内役の騎士の説明を聞きながら、目の前の光景に呆れていた……


大きな絵筆を横殴りに振るえば、かまいたちすら伴う衝撃が発生する。

それを受け止めるのは、ワイングラスを片手に持った男。

受け止めたワイングラスは、割れるどころかヒビすら入らぬ。


あちらでは、猫の尻尾を持って振り回している奴がいて、その相手が持つのは、犬の尻尾である。

動物とは思えぬ、ガキンガキンという金属音が響き渡り、犬も猫も納得で振り回されている様子。


着ぐるみの拳闘士の相手は、ゴスロリコスチューム。

とてもじゃないが、格闘戦とは思えぬ絵で、音だけがぶつかりあう衝撃を伝えている。


私は、宮廷画家として採用されたのではないのだろうか?

この絵筆と、この絵を武器にして、魔物と戦えというのであろうか?


案内役の騎士は、私を見ている。

視線が痛い……

これは、鍛えがいがある奴が来たと思われているのだろうなぁ……



今日も、おかしな国の、おかしな騎士団に、新米騎士候補が一人、入ってきた。

彼も、数日もしないうちに慣れるだろう。

この、おかしな風景に。


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