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その18話 または、幻の王国をついに見つけた男は、どうしたのか?

続き物、これで最終話です。


次からはオムニバスに戻ります。


私は、幼くして父と別れた。

我が家系の男の血であろうか……伝説にも残らぬような、しかし、確かにあると思われる、とある王国を探すように運命づけられた家系なのかも知れない。


父も、祖父も、曽祖父も、その、国の名前すら伝えられていない王国を探す旅に出たようであり、その手記は曽祖父、祖父、父の3冊が我が家に残されている。

そこまで、親子3代に渡り探して、それも、今では大陸で一番巨大な帝国に匹敵する年商と利益と関係者数を誇る「商会」の、探せぬものは何もないとまで言われる情報網と人員を最大限に使おうとも、噂すら掴めない。


そんな、幻の王国を探す旅、ついに4代目の私が挑戦する時が来た。


大陸は、全て探し尽くした。

海を越えて、北の大陸にある全ての国家も調べた。


商会の財力と人員を駆使して、海も探した。

絶海の孤島にある、得体の知れぬ太古の邪教神殿や、サルガッソ海域の巨大なる怪物、黄金の輝きを持つ林檎や、人も通わぬ小さな島でのみ採れる調味料、果てしない航海の果てにたどり着いた仙人達の暮らす理想郷にして桃源郷にある、人間が一口食べれば、たちまちにして不老不死となる桃や、溶けぬ氷、消えぬ炎など、とてつもない宝を数多く手に入れた「商会」であるが……


親子4代に渡る悲願、幻の王国につながる、ほんの噂すらも手に入れることは叶わなかった……


さすがに、これには私も落ち込んだが……


我が息子と娘の、何気ない一言が、幻の王国を探す手がかりとなった……


「おとーさん、まぼろしのおーこく、もしかして、天の国にあったりしてね」


と、息子。


「そーそー、神にえらばれた人でないと、その国には入れないんじゃないかな〜?」


と、娘。


無垢なる息子と娘の一言により、道が開けた……

しかし、これを実行しようとすれば、もう、手記も残せないだろうし、この身は二度と、この地に帰ってくることは叶わぬこととなるのは確実!


それから10年……

息子と娘が、もうすぐ15才になり、成人の儀式を迎える。


「商会」については、もう、個人での管理する規模ではなくなっているので、商品売買や無数の店舗管理、商会全体の管理運営も含めて、超国家規模の管理団体が仕切っている(我が家は創立者の一族として、利益の1%に相当する金額の割り当てがあり、もう子々孫々に至るまで仕事などしなくても良いようになっている)


この10年間、私は武術や武芸にのめり込んだ。

東西南北、あらゆる剣術、体術の道場やら創設者、師範に頼み込み、自分を鍛え上げることに打ち込んだ。


100を超える流派の武術を学んだが、そこに、たまたま、弟子も道場も持たぬ流れ者の冒険者がいた。

私も、その時には相当に鍛えていたので、自分の腕試しを兼ねて、流れ者の冒険者に試合を挑んだ……

その結果、瞬殺された。


試合が始まった。

あっという間に私は、地面に伸びていた。

多分、10回以上は死んでいただろう……そこまで、流れ者の冒険者は強かった。


「筋は良いが、本当の高レベルの敵と戦ったことが無い。まあ、仕方がないのだろうが」


その呟きを耳にした瞬間!

私は、この冒険者が、何処から来たのか、理解した。


弟子を取るような身分じゃないという冒険者に、それでも更に頼み込み、頭を100度以上も下げ、何とか、その冒険者のパーティに入れてもらうことができた。


先輩(先生と言ったら、二度と言うなと言われた。先輩と呼べとのことだったので、それから先輩となった)には、様々な事を教えてもらった。

武器に頼るな、自分の回りにある物すべてを武器と思え、とか、眼から鱗がボロボロ落ちた。


5年、先輩に付き合い、ダンジョンも10箇所以上は制覇した。


一時期など、どこかで魔王が復活したとのことで、魔王退治に出かけたことがあった(勇者?それなに?そんなのいませんよ、この大陸にも北大陸にも)

魔物の一個師団と戦った時には、身近に死を覚悟した……


しかし、先輩は嬉々としながらも、何処か寂しそうに、手当たりしだいに魔物の群れ単位で葬っていく……


最終場面で魔王を倒したのだが、その時に先輩が呟いた一言。


「弱い、弱すぎるぞ、魔王。洞窟での強さは、何処へ行ったのだ?」


その戦いが終わった後、祝勝会で先輩に、


「先輩、もしかして、この世に無い幻の王国から来たのでは?」


と聞くと、


「そうか、それを知るなら、もう少しだな。お前なら、とある王国へ入れるかもしれん。俺は、それこそ世界中を回ったが、ダメだった……」


そこで、先輩と別れることとなる。


あれから15年以上……今では家も捨て、妻子も捨てて、あてどのない旅……


砂漠の砂も、果てない海も超えて、ここは、見たことのない森の中。

昨夜から霧が出て、鍛えに鍛えた目でも先が見えない。


こうなると、勘だけが頼り。

あちこち動いて迷うよりも、こっちの方角!

と決めて一直線に進む。


前よりも霧が濃くなってきた……

しかし、少し前から、歩いている足先の感覚が違うことに気づく。

これは、人馬に踏み固められた山道!

この道を歩いて行けば、村か町へ辿り着くぞ!


幸い、水も食料も少ないが、なんとか数日は保たせられる。

不安の種は、こんな深い森で、深い霧なのに、魔物一匹どころか、兎もクマも、イノシシもいない、気配すら感じられない事だ。


まあ、ここで死ぬなら、それが我が運命かも……


ん?

あれは何だ?

はるか昔、子供の時に読んだ絵本に書いてあったような古びた城壁と城が見える……


巨大なる商会が全ての国を経済的に結びつけている現在、こんな古めかしい城が残っている国など数えるほどしか無い。

そして、そんな少数の国は、全てが小国で、ほとんどが王国というよりも大国の属国になっている。


しかし、あれに見える城門、城壁、城の規模は、全てが大国の様相を示す……

なんだ、この強烈なる違和感は?


しかし、違和感に捕らわれた瞬間、私の意識は失われていた……




「おーい!城門の守護兵さんたちよー!行き倒れをひろったぞーい!」


「はーい!了解でーす!こちらへどうぞー!すいませんね〜、しかし、行き倒れなんて久々だな〜」



行き倒れとして、とある王国へ運び込まれた私は、丸一日、眠っていたらしい。

この王国は、限られた数の人物としか商売もせず、外から来る人間も、ほとんどいない。

そして、この国から出ようとする人間も、ほとんどいないとのこと……


私は、目指す幻の王国が見つかった事を、この話を聞いた瞬間に理解し、そして、この国から出たくない自分を見つける……



この国は、私にとり、理想郷だ。

1年でレベルが元に戻る事、鍛え上げた武器や装備の、とてつもない進化と強化とレベルアップの奥深さ……

なにより、武器や装備に頼ることのない自由自在の戦い方!


もうひとつ、戦う魔物や魔王の、異常とも思えるレベルの高さ!


ここは、騎士や剣士、冒険者にとっての理想郷だ……

もう、元の世界に戻る気は失せた。

いつまでも、いつまでも、この王国で戦いを続けることとしよう……


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