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その16話 または、幻の王国を目指した男は、今度こそ辿りつけたのか?

このシリーズでは珍しい連作となります。

予定では3回ほどで終わるつもりですが、どうなりますやら……


僕の名は…どうでもいいか、この場合。

僕は、父の足跡をたどり、この最果ての町まで来た。


ここで、僕の父の手記を入手する。

宿の主人は、父に頼まれていたのだそうだ……吾が跡を追うものがあれば、この手記を渡して欲しい、と。


父の手記、日記のようであったが、それを全て読んだ。

読み終えて、僕は、父の跡を継ごうと思った。

家の商売は、とうの昔に息子に譲った。

我が家の家系は、商売に関連するスキルが生まれつき高いらしく、祖父も父も僕も、僕の息子も、言葉を喋ると同時に算盤も弾けるという家系である。


父の跡を継ぐというのは、幻の王国を探す旅のことである。

その王国から、わずかな人間が、この地へと出国してきたのは、あちこちに残る英雄伝説(人間離れした技と戦闘スタイルで、国を滅ぼすほどの魔物を一撃で葬ったとか、隣国との戦いにて、一個師団の攻撃を、その人物たった一人で食い止めたとか、あまりに馬鹿げた話が伝わっている。しかし、そのどれもが、どうやら真実らしいという事も)を、仕事の合間に収集している頃に、その話のどれもが似た点があるということに気付いてから。


幻の王国があると仮定すると、それが全ての話に繋がってしまう事に気がついた。

その王国が、何処にあるのか?

僕の父が探索する前にも、数多くの人が、その王国を探そうとしただろう。

しかし、未だに、幻のまま、王国の場所の手がかりさえ掴めていないのは、どういう事だ?


理解できない事実だ。

その、幻の王国は、存在するのだろう……でなければ、そこから来る人たちの説明がつかない。

しかし、その英雄伝説の主達が、幻の王国へ戻ったという話も聞かない。


もしかしたら、幻の王国とは、来るものを選ぶのではないか?

とんでもない話ではあるが、この世には魔法という、世の理を超えた奇跡のような術を使える者達もいるのだから、これは、あり得ないことではない。


しかし、全世界に対して、幻の王国への入国者を選ぶ魔法など、かけ続けられるものではない。

ならば、その近くへ行くことは可能なはず。


僕は、父の跡を継ぎ、北の果てを目指そうと思う。

そこに幻の王国があるなら、なんらかのヒントか現象に出会うはずだ。

僕に、幻の王国への入国資格があるかどうかは分からないが、資格がないなら、そういう現象に出会うはず。

それもなく、ただ単に何もない地平が続くだけなら、また次の道を辿るだけ。


今回は北の果てへ。

そして、その次は南の果て。


それでもダメなら、次は、海の最果てへ。

これも伝説のサルガッソ海域なら、何か見つかるかも知れないな。

それでもダメなら……それこそ、空の上でも探すかな?


今は、北を目指そう!



ずいぶんと雪深くなってきた。

もう、北の最果ての村から出発してから何日目だろうか?

雪に覆われた森の中では、狼の群れに襲われたが、もう慣れたもので、軽く20匹ほどの群れを全滅させる。


火を焚く場所も無ければ、地面すら雪に覆われているので、野宿するにも雪を固めたドーム内で過ごす。

過酷な旅で、僕のレベルも相当上がったようで、いつの間にか簡単な魔法くらいなら使えるようになっていた。


森の枯れ木を集めて、雪のドーム内でファイアボールを放って焚き火をする。

水は、雪を溶かして作る。

食料は、倒した狼の肉。

あまり肉付きが良くないが、食べなくては身体が保たないので、筋張った肉を火で炙って無理やり食べる。

パン?

そんなものは、とっくの昔に食い尽くしている。


食事が終わったら、狼の皮をなめして、ボロボロになってしまった外套や服を縫い繕う。

そして、僕の手記を書く。

父の手記は、もう暗記できるほどに読み込んだ。

その続きで、僕の手記を書いてやれば、後に続く者たちへの参考になるだろう。



北の果てに到着した……と思う。

コンパスもぐるぐる回っているので、ここが北の果てだろう。

幻の王国は、見つからなかった。

兆候となるような現象にも出会わなかった。


あ、珍しい種族や、この地方にしか存在しない動物、生物など、様々な発見や経験はした。

狼の皮は、この地方では珍重されるらしく、食べ物や貴重な鉱物、様々な情報や伝説などを交換に貰い、聞きまわった。


手記とは別に、ざっとではあるが北の地方の地図と希少民族の村、埋蔵されている鉱物や特産品などを記述したものを添付しておくので、商会の参考にでもして欲しい。


さて、僕は、この地方を旅立ち、南へ向かうとしよう。




ここで、親父の手記は終わっている。

幼い私に巨大なる商会を押し付け、祖父の跡を追って探検家になった親父。

数年後、なんとか商会を軌道に載せた私は、この商会のネットワークを使い、親父の足跡を辿らせた。

そして、入手したのは、この2冊の手記。


あまりの不条理に怒りが爆発しそうになったが、親父の手記に付記されていた地図と特産物、鉱物見本と村の情報を見て歓声を上げる。


それから10年後、北の少数民族と密接な関係を築いた商会は、巨大なる利益と販路を築き上げ、大陸でも知らぬものなしと言われるほどになるのだった……


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