その12話 または、如何にして、勇者が勇者の道を歩むこととなったのか?
今回は、放浪の変態騎士様が巻き起こしたエピソードの1つ。
我が二つ名は、放浪の無敵騎士……
そこ!
誰だ?
我が名を「放浪の変態騎士」と言っているのは?!
我が戦闘スタイルが普通と違うからと言って、変態とは言いがかりだ。
吾は、吾の好む戦闘スタイルで戦っているに過ぎぬ。
そもそも、吾の故郷でもある王国以外で、この戦闘スタイルが受けれられぬ理由が理解できぬ。
お前たちは、剣や槍、盾などを重視するが、1つの武器に依存しているのは、いざというときに困らぬか?
剣が折れたら?
槍が曲がったら?
矢が尽きたら?
盾が壊れたら?
どうするのだ?
魔物や魔王と戦う場合、剣折れ矢は尽き、槍も折れて盾は粉々……などという事が実際にあるだろうが。
ん?その場合は死ぬしか無いだろうって?
バカな!
武器や盾がないだけで死んでいては、主君を守れぬではないか!
騎士でないものについても同じだ。
武器がないからと言って、おとなしく殺されるのか?
自分だけではなく、家族も殺されるとしたら、どうだ?
死ぬわけにはいかない、殺されるわけにはいかないだろうが。
そこで、この戦闘スタイルだ。
そこいらにある物を手当り次第に武器や防具にするのだよ。
ここは酒場だ。
だったら、酒瓶を武器にしろ、グラスや升、徳利を武器にしろ。
料理中なら、オタマジャクシを武器にしろ、スプーンやフォーク、箸をも武器とせよ。
農家なら、鍬を、鋤を、鎌を武器とすれば良い。
どうだ?
黙って殺されるより、見た目には変かも知れないが、戦ってみるものだよ。
ちなみに……このグラスだがな……
ふんぬ!
誰でも良い、剣で打ちかかってこい。
ガキン!!
良いか?
今のように、例え酒場のグラスでも、やりようによっては剣を受け止める事が可能だ。
おいおい、開いた口が塞がらんか?
見たものが信じられんか?
これはな、ちょっとしたコツさえ覚えれば誰でも可能な戦闘技術なのだよ。
普通は、それこそ、床に落としただけで割れてしまうグラスでもな、力加減と角度、そして……
気を送り込んでやるとだな……
パッキーン!!
ほれ、このように打ちかかってきた剣も折れる。
すまんな、この剣、折ってしまったので、これで新しい剣を買ってくれ。
俺は今、信じられん物を見た。
流浪の剣士だという男が、今見せた光景。
一生忘れぬだろう。
そして、この男の技を造り出した王国と、その宮廷騎士団……
いつか訪れて、その教えを請おうと思う。
数10年後、世界の危機を救い、闇の邪神を倒した勇者の伝記。
その始まりのページに書かれている逸話。
勇者は、その放浪の騎士に教えを請い、とある王国を探しだして修行を積み、ついには武器にこだわらぬ戦闘スタイルを身につけて、邪神すら倒すほどになったという……




