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2015年 8月10日「空虚な塊」

 死んだ。

 また、同じところから。

 自分が、始まる。

 ここから。

 終わる。

 何もかもが。

 終わる。

「終わりじゃないよ」

 望未は、言った。

「少しの間だけだよ」

「終わったんじゃん」

 徹郎は、言った。

「思っても、思ってもらえないんだね」

「知らないよ」

 望未は、言う。

「君の思いは、君の思い」

 そう言った。

 嫌な、口癖だ。

 隙、がない。

「伝えようがない」

 そう彼女は、言った。

「知りたくありません」

 敬語。

 に、戻した。

「必要がありません」

 虚無。

「そういう思いですか? 先輩は」

「どういうこと?」

「俺の思いに興味はないのか? って話ですよ」

「わからん」

 彼女は、言った。

「考えても仕方がないことは、考えないようにしてるから」

 そう言う。

「でも好きだったよ」

 初めて、彼女は、そう言った。

「俺も」

 なぜ、これに意味がないのか。

 わからなかった。

 思い合うって、いわないのか。

 こういうことが。

 間違い、なのか。

 また、違うのか。

「先輩は」

 徹郎は、言った。

「俺のこと、もう好きじゃないの?」

 徹郎は、聞いた。

「なんで?」

 彼女は、聞いた。

「知って、どうなるっていうの?」

「また、繋がれるかもしれないじゃん……」

「セックス?」

 彼女の、笑い声が混じる。

 そんなもの、どうでも良かった。

「また、付き合うとかさ」

「ないよ」

 彼女は、失礼だった。

「なんで?」

「言ったでしょ」

 言われたばかりだった。

 君に、私はいらない。私も、君がいらない。

「なんで、そんなのわかるのさ……」

「わかるわよ」

 どうして?

 わからなかった。

 なぜ、別れなければならないのか。

 知りたかった。

「学び合う気持ちが、なくなったから」

 彼女は、言う。

「私から得たいものなんて、もう何もないでしょ?」

 彼女は、言った。

「私は、少なくとも、ないよ」

 そう言う。

 ショック、だった。

「俺も、ないですよ」

 徹郎は、言った。

「先輩から、得るものなんて、一つもないです」

そう言って、笑った。

 沢子、とは違う。

 いろんなものが、彼女にはあった。

 空虚な、塊。

 それが魅力的、だった。

 好きだった。

 思い出は、そんなにない。

 ラブホ、ばかり。金がなければ、家で。今日も、その帰り、のはずだった。

 アメリカへ。

 別れよう。

 感傷的な、最後のセックスなどなかった。

 さよなら。

 蛍が、舞っていた。

 いつものごとく。

 同じ、だった。

 いつもと変わらぬ、日々。

 それがまた、やって来る。

 彼女のいなかった、日々が。

「さよなら」

 地元の駅で、口にした。

「さよなら」

 望未も、言う。

「帰って来たら、同級生だね」

 先輩、は言った。

「そうですね」

 先輩と後輩に、戻ったばかりだというのに。

 また、厄介だ。

 最終列車に、乗って帰った。

 さよならだ。

 当分、会うことはない。

 それでよかった。

 望未は、インパクトが、強すぎる。

 好きだった。

 誰もいないホームで、静かに泣いた。

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