表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/19

2015年 2月11日②「パンダ」

「心配してたぞ」

 母さんが。

 父は、言った。

「おまえが、学校に来てないって」

「知ってるよ」

 沢子は、泣きながら言った。

「何で、お父さん来てるの?」

 泣きながら。

 涙腺が緩む。

 父の顔、ぐらいで。

「お父さんに、頼んでないじゃん?」

「頼んでないね」

 父は、言った。

「おまえが、ここでサボってるって聞いて」

 聞いたのだろう。

 役場を訪れる、誰か、に。父は、役場で働いていた。

「心配して、来たぞ」

 昼休み時だった。

 父は、様子を見に来てくれたのだろう。

 隣に座った。

 父からは、煙草の臭いがした。

「吸ったの!?」

「吸ってない」

 父は、言い張った。

「俺は、吸ってない」

 父は、言った。

「林のじじいが、吸いやがるんだよ」

 ほんとだってば。

 言い訳がましくする父に、笑った。

「しょうがないね」

 沢子は、笑った。

「お母さんに、言っちゃおっと」

 やめなさい。

 父で、気が紛れる日が来るとは思わなかった。

 楽しかった。

 寒さで凍えた頬が、緩む。

 嬉しかった。

 助けてくれて。

 ありがとう。

 そう、伝えて。

 涙が、出た。

「泣くな」

 父の手が、撫でた。

 大きな手。

 もう何処へも行かない、と。

 そう誓った、手。

「女なら、泣くな」

「どういうこと?」

 沢子は、尋ねた。

 聞いたことない。

 そんな、言葉。

「俺は、母さんが、嫌いだ」

「はっ!?」

 目が覚めた。

 父の、顔を見上げる。

「それだ」

 父は、目を背けた。

「何?」

「母さんも、泣き顔を見せる」

「だから?」

「世界一悪いことした気になる」

 父は言った。

「したじゃん」

 と、沢子は言う。

「まあね」

「まあねじゃねーよ」

 腹が立った。

 見続けていると、父が向いた。

「ああ! パンダ!!」

「何が?」

 意味も分からずに、尋ねた。

「おまえの、目だよ!」

「目?」

 言われて、気づいた。

 そうかもしれない。

 目を、擦った。

「そうかも」

「母さんと同じだっ!」

 駅舎に、響いた。

 マスカラが、取れただけだ。

 それが嫌、らしい。

「お父さん、私のこと、嫌い?」

「嫌い」

「なんで?」

「俺に、嫌がらせをするからだ……」

 上体を遠ざける父に、寄っていった。

「離しなさい」

「いやです」

「何で、俺に寄ってくる……」

「嫌がらせ」

 父は逃げた。

 そうして、しばらくしてから舞い戻ってくる。

「お父さん!?」

 手に、雑巾を持っていた。

「お父さん!?」

 手に、雑巾を持っていた。

 何をするか、わかる。

「ぎゃあああああ!」

 無人の駅に、響く。

 虚脱した。

 目の周りが、揉みほぐされた。

 汚い、雑巾で。

「気持ちいいですか?」

「はい……」

「凝ってるとこは?」

「ないです……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ