第36話 竜殺しとおっぱい
タイトルどおり、おっぱい回
宿に着くと、なぜかクソ竜がベッドで寝ていた。しかも裸で。状況が読めないが、とりあえずロゼはどこだろうと部屋を見回すと、隅っこでガタガタ震えながら頭を抱えてうずくまっていた。いつか見た光景。
……なぜこのクソがここで寝ているかはまた後で考えるとして、今は首を獲る絶好のチャンス。短刀を抜いて、忍び足。その白い首へ振り下ろそうとして、やめる。獲物をしまい、呼吸のたびにゆっくりと上下するその大きな胸に手を伸ばす。
こいつが殺すべき相手というのはわかっているが、今はそんなことよりおっぱいだ。据え膳食わねばなんとやら、ありがたく頂くことにする。
「おぉ」
しっとりと吸い付くような肌触り。柔らかで、押し込めば指が埋もれるほどの質量。しかし強く揉めば、やんわりと反発のある、巨大な果実に思わず感嘆の声が。
繰り返すが、こいつは家族の仇である。で、あるのだが、その前に絶世の美女である。百点が満点の評価であっても、千点を付けたくなるような、極上の。しかもそのスタイルも男の理想をこれでもかと詰め込んだワガママボディであって。そんなのが無防備に、裸で、しかも自分の部屋で寝ていたら、それはもう揉むしかないだろう。だから全力でもてあそぶ。
やさしく、激しく。全体をこねるように揉んで柔らかさを堪能し、球体の表面をなでるように手を這わせて滑らかな肌の感触を楽しんで。下から押し上げてみて、まさに世界そのものというような圧倒的な重みを味わって。それを上から押しつぶして蹂躙してみたり。と、好き放題に遊びつくす。
「ん……ぁ」
艶を帯びた声。彼女の顔を見れば、線のような眉が少し動いて、夜の闇を閉じ込めたような瞳がこちらを覗き込む。そりゃこれだけされたら誰でもおきるだろう。でもやめない。
「……寝込みを襲われる、とは思っていたが、こっち方面で襲われるとは」
興奮からか、肌は赤みを帯び。手のひらから伝わる鼓動は早まって、熱を帯びて。胸の頂は硬く尖る。
「どうせまだ殺せないんだ。無駄なことをしてストレスためるより、乳揉んで解消したほうがお得だろ」
軽く指ではじくと、水面に石を投げたように震える。これは楽しい。
「なるほど、合理的だ……それで、いつまで続けるつもりでいる」
「気が済むまで。こっちからも質問だが、なんでここに居る。あとなんで裸?」
手を止めることはなく。今度は頂に責めの手を集中させてみる。仇でもある美女が手の動き一つでこうも悶えるのは見ていて楽しい。
「ここに、居るのはっ、待つのが退屈だったから。裸なのは君が胸を触りたそうにしているのを見たからだ」
「そう。退屈なら殺されてくれるのがうれしいんだがなぁ」
この胸を失うのはもったいない気もする。うむ、でも殺す。家族の仇というのもあるが、第一に自分が死ねないのが何よりつらい。
生きる苦しみは、生きる喜びを上回る。こいつが永遠の生から逃れたくて世界を焼こうとしていたのが、その証明。
「よし。満足したからそこを退け」
重量感ある胸から手を離し、締めとして軽く赤く充血したその中心を摘んでやると、大きく震える。
「おや、一緒に寝ないのか? ここまでしておいて」
「帰れ。嫌なら床で寝ろ」
別に夜魔がよくて竜が駄目、ということはない。同じ人型で、性別が女。容姿は千の言葉を並べて称えてもまだ足りず、ただ美しいとしか言えない彼女だ。抱えている事情を考えたとしても、情事に及ぶのに抵抗は一切ない。ただ。
「今は眠いんだ」
そう、眠い。とても疲れていて、とても眠い。
なれない船旅から、極寒の中を行軍し、迷宮で戦いを繰り広げて踏破して。それが終われば、おっぱいのように温かく、柔らかで優しい陽光が降り注いで。さらに豊満な胸を揉んでリラックス。
疲労、気温、気の緩み。眠くなる条件は全てそろっている。
あれこれ考えはせず、とりあえず竜をベッドから押し出して、靴を脱いでシーツに飛び込む。こいつの相手はおきてからすることにした。
「寝る前にこの人、いえ竜をどうにかして。ご主人様」
「なんだ。気になるのか」
「ええ。ものすごく……血が混ざってるから、臭いがすごく気になるの」
「慣れろ。この先こいつが遊びにくることは何度でもある」
「安心しろ。私も暴れるつもりはない」
「世界を丸ごと焼き払おうとするような奴だからな。たった一人に、そう大人気ないことはせんだろう」
「そうだ。お前を殺すことで、私が死ねるならともかく。いや、君が怒ればどうだろうな?」
「怒ったところで力が増すわけじゃない」
縁のある人間を全て燃やされて、何か特別な力に目覚めたか? いいや。竜を傷つけられる力も、不死も、世界とのつながりも、全部与えられたものだ。昔より強くなったのは、扱い方を習得したからで、眠っていた力が云々とかそんな都合のいいものじゃない。
だから、ここでロゼが殺されても、俺がいきなりこいつを殺せるようになるわけではない。そんなことをしても、何の意味もない。
水を一杯含んで、渇きを癒す。その間に彼女はいつものドレス姿に。やはりよく似合っている。
「慣れるまで、耐えろと言うのね」
「悪いがそうなる」
竜というのは災害のようなもの。理不尽の塊。それをどうこうしようというのは無体な話で。相手をこちらに合わせるよりも、自分が相手に合わせたほうがずっと苦労は少なく実入りも大きい。
「ご主人様がそう言うのなら。ひどい人」
「ひどい竜だよ。人のかわいい奴隷に、我慢を強いるなんて」
全ての責任は竜にある。こいつさえ居なければ、ロゼに無用な負担を強いることもなかっただろうに。
ああ、いやそもそも出会うことさえなかったか。竜殺しによって得た財がなければ、彼女を買うことなんてできなかったし。




