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第14話 竜殺しと奴隷ちゃん

今回はややお下品な表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。

 やや黄色味を帯びた月が天頂に輝く時間。住む家をなんとなくで決めてから、広場に戻ってきた。そして、やはりここは変な街だと再認識。昼間は静かで、娼婦なんて影も形もなかったというに、夜は一変。酒屋と女の客引き場となり、酒臭い男と香水臭い女たちが大勢集まってらんち騒ぎを起こしていて、大変耳と鼻によろしくない。元々田舎から出てきただけあって、この空気になじめない自分が場違いな存在にしか思えなくなるのもまた居づらい。できることなら今すぐ宿へ引き返したい気分。

 だが、商品を受け取ると決めている以上引き返すのは相手に申し訳ない。奴隷を買おうなんて思うんじゃなかった……これで満足のいかない容姿なら、キャンセルして前の街に帰る。

「どけどけー。俺の邪魔すると後で怖いぞー」

 幸い、客引きの声は俺にはかからない。前を行く奴隷商人がよほど怖いのか、モーセが海を割るように人が避けていく。俺はその後ろを歩くだけ。人に押されることもなく、触れられることもなく、実に快適。そっして、布がかぶせられた檻の前にたどり着く。

 その檻の周りには昼間にここで見た顔が勢ぞろい。『商品』のことか、それとも俺についてか。何かをぼそぼそと話している。頑張れば会話の内容を聞き取れそうな気はするが、この騒ぎの中でそれは少し面倒だ。

「待たせたな。じゃあ、お披露目といこう」

 布に手をかけ、一瞬だけ溜めを作り、引き下ろした。檻の中に居る商品の姿が、露わに。

「……確かに、若ければ若いほどいいとは言ったがなぁ」

 頭をがしがしとかきむしってため息を吐く。

「どうした、不満か?」

「いやとんでもない。こんな美人を買えるんだ。不満なんてあるはずがない」

 肩で切りそろえられた、漆のように黒く、光沢のある髪。体のラインをぼかす、装飾過多ともいえるような、フリルのたくさんついたワンピース。髪と同じ色に磨き上げられたストラップシューズと、それを纏う、輝きを放っていそうな白い足。月光に照らし出されたその顔は、幼さと艶やかさの相反する要素が入混じる危うい美貌を誇る。

 あの竜ほどではないが、胸もある。しかし、しかしだ。

「若いを通り越して……いや。いいか」

 問題は、俺がロリコンじゃないという話。二次ロリは好きだが、三次ロリに手を出すのは犯罪……少し訂正。前世では犯罪。こっちの世界じゃ別に年齢二桁行く前に結婚したりするのも日常茶飯事だから、犯罪にはならない……犯罪ではないのだ。気にする必要はない。確かに容姿は一級以上。相手の身長が少し低いだけじゃないか。低身長AVとかも平気で見る男だったろう俺。

「ほれ。金だ」

 無言で腰に吊るした財布に視線を注ぎ続ける商人に、望み通りの物を与えてやる。紐をほどいて腰から外すと、両手を器のようにして差し出してきたので、その上に落としてやる。そこそこ重いが、落とさずちゃんとキャッチしてくれた。

「毎度。じゃあ、彼女の経歴をお話ししましょうかね……彼女は淫魔と人間のハーフでして。しかも、魔の血の方が濃い。位の高い淫魔が、人間と子を作るのは、あっちの風習では認められてないそうなんです。で、本来なら殺されるところを我々が買い取って。買い取ったはいいものの、素材が素材ですから、安値で売るわけにはいかず。しかしあまりに高値では買い手がつかず。なかなか売れずにこちらとしても困っていたわけです」

「なるほど」

「もしかして処女でないとお嫌とか。ご安心ください、彼女は未使用です。しかも血筋が血筋ですから、開発の余地も大いに……おまけに成長しきればその姿を死ぬまで保ち続ける。魔の寿命は人間よりもはるかに長く、体は頑丈。一度好みの色に染め上げれば、お客様を死ぬまで満足させられることでしょう。また愛玩・家事用とのご要望でしたが種族の特性上魔法も秀でております、少し仕込めば、ハンターの手伝いとしても十分お役立ていただけるかと」

「わかった、わかった。もういい」

 嘘か真か。そういった話は、あとで直接本人から聞き出せばいい。それは一度脇へ退けて、ささっと出された書類にサインと血判を押し、檻の中の彼女を見つめる。確かに、そこらをうろついている有象無象とは次元が異なるとも言える美しさと、可愛らしさ。それでもあの竜には一歩劣るが。それでも、これを性の対象とみなすには。やっぱり幼すぎる。決して無理ではないのだが。

 彼女が檻から出され、商人の手に引かれて俺の目の前に跪く。

「わたくしはロゼ、と申します。捨てられた身ですから、家名はありませんわ。今日からよろしくお願いいたします、ご主人様」

「ああ、よろしく」

 見た目もよく、この場限りでは礼儀も良い。これでもう少し背があれば言うことはないんだが……まあ、育つまで待とうか。商人の言うことが本当なら、少し育てば食べ頃で、しかも長く味わえるのだ。少しくらい我慢しよう。

「彼女の衣類は、本日ご契約いただいた家に運び込んでおきましょう。貸家は明日からご入居いただけますので、今晩は宿でごゆっくりお休みください」

「はいよ。お疲れさん……じゃ、行こうか」

 首輪も、それ以外の拘束も、何もしていないが、俺が歩き出すと後ろを奴隷がついてくる。時折振り返って遅れていないかを見つつ、時折絡んでくるアホ共を蹴散らしつつ、宿へと戻る。


 受付で宿泊人数追加の手続きと追加料金を支払い、部屋に入り。自分はベッドに腰掛けて、彼女にはソファに座らせる。買った額に対してはこの場所も、借りた家も、あまりいい待遇とは言えないが、彼女は私の所有物、許してもらおう。

「ほんじゃ、改めてよろしく。君の事はなんて呼べばいい?」

「ロゼ、とお呼びください」

「わかった。じゃ、俺のこともアインと呼び捨てにしろ。口調も敬語は使うな。慣れてないんでな」

 実にテンプレートな受け答え。しかし今まで敬語を使われるような立場になったことは一度もないので、改まった話し方をされると非常に落ち着かないのだ。彼女も、命令なら聞いてくれるだろう。

「……何で竜が人間の真似事するなんて、おかしなことしてるのよ」

 早速ラフな話し方になったが、言っている意味が分からない。いや、俺と竜とのつながりを嗅ぎ取ったならわからないでもないか。彼女は人間の姿をしていても、人間じゃない。自分にはない器官があって、発達していても何も不思議じゃない。だって異世界だし。

「俺は人間だぞ?」

「はっ、まさか竜が記憶喪失なんてね。それとも本当にそう思い込んでるのかしら。こんなに強い臭いと魔力、竜以外で出せるもの?」

「訳ありだが、ちゃんとした人間だ。事情の説明が必要ならしよう。身の上話もついでにな」

「どんな事情を聞かせてもらえるのかしら」

「ああ……臭いも魔力も、多分つながってる相手からだ。ちょっと何年か前に竜に傷をつけたら気に入られてな」

 何かしらの生物と魔力を交換して魔術的な契約を結んだ際には、線が一本結ばれて、その線を伝って魔力やらなんやらが影響しあうのだとか。教本にそう書いてあった。あの畜生がやってくれたのは、より上位の命の交換。基本は夫婦間とか、番いだとか、そういった最大限の信頼関係の元行われる契約だが、俺の場合は同意がない。略奪されて、空いたスペースに紐付きの玉を無理やりねじ込まれた。器のサイズに見合わないものを。

「聞いたこともないわよ」

「聞いたことがなくとも、事実そうなんだから仕方ない。おかげでなりたくもなかった不老不死だ。そんなわけで、永い付き合いになると思うがよろしく頼む……さてどっちが先に死ぬかね」

 奴隷といえば人間のイメージしかなかったから、死ぬまで世話するにしてもせいぜい二、三十年程度と思っていたが、淫魔のハーフだと何年生きるやら。純血よりかは短命だろうが、人間よりは長寿で頑丈なはず。

 俺が死ねるのは、あの畜生をぶち殺してからになるわけだが。それまでに何年かかるやら。まあ、元は取れるだろう。

「ん……まあ、こういう話はいつでもできる。とりあえず飯にしよう。何か嫌いな物は?」

「奴隷が主人から与えられるものにあれこれ言えると思う? 虫は嫌ね。それ以外なら何でも……一番好きなのは精、その次が血だけど。人の血も混じってるから、なくても生きていける」

 さすが淫魔だけある。一番好きなのが

「未使用と聞いたが」

「本能が求めるだけで、誰にも抱かれたことはないわ。疑ってるなら膜見る?」

「いや。まず飯だ。それに、未使用かどうかは正直気にならん」

 腹が減っては戦はできぬ。夜の戦もまた然り。少し幼くても、まあいいや。買ったものを使わないのはもったいないしな。うん。前世じゃ明らかに犯罪並みの小ささだ、小学生かよ。でも二十歳以上だから、所謂合法ロリ? だが、そもそもこっちじゃそういう罪はないんだよな。だから合法も違法もないか。うん、じゃあ何も問題ないな。ヤろう。

合法ロリ

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