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第13話 転生者は奴隷を買う

お約束的な展開。

チンピラを脅して……もといお願いして、奴隷商人のところへ連れていってくれと。それから案内されたのは、町の広場の一角。そこには煙草、のような物を吹かす、普通の町人とは明らかに空気の違う一団が。前世でいうところのやくざさん? なんかそんな感じだ。

「こ、ここっす……その、自分、もういいっすかね?」

「おう、ありがとう。またなんかあったら頼むわ」

 半分に折った硬貨を約束通り渡して、小走りに去っていく彼の背に向かって軽く手を振る。さて、振り向けば強面のおじさん達がめんどくさそうな目でこっちを見ている。

「もしかして昼休み中か。それとも定時で仕事終わってこれから飯食いに行こうってとこか? だとしたら申し訳ないんだが……」

「ん、客か?」

「その通り。小金が入って浮かれ気分で奴隷を買おうっていう客さ」

 ジャラッと硬貨がたっぷり詰まった財布を揺らせば、さっきまでの緩い顔から一片。獲物を目にした猫のように、気配が締まる。

「どんな商品をお求めで。用途は愛玩用から戦闘用まで。種族年齢性別問わず、予算に応じてご紹介いたしますよ」

「家事と愛玩兼用で、女。歳は若ければ若いほどいい。予算は……これだけで。相場がわからんものでな。多分足りると思うが?」

 ぽい、と袋を投げて渡す。中身は大体金貨だが、これでも竜殺しの報酬の全てには及ばない。中身を確認した男は一瞬目を見開き、不快笑みを浮かべて二、三度頷き、後ろの連中に耳打ちをした。久々の上客だ。アレを売るまたとない機会だぞ。とか。少なくとも闇討ちの計画を立てているわけではなさそうだ。

「ところでついでに家も借りたいんだがどこに行きゃいい?」

「見たことない顔だとは思ったが……普通は家を借りてから奴隷を買うもんだと思うぞ」

俺の発言にどれだけ呆れたのか、敬語を使わず素で話し始める奴隷商人。

「細けえことはいいんだよ。どうせ契約にゃ時間がかかるんだ、その間二、三日は宿暮らしになる」

「仕方ない。折角の上客ですしサービスさせてもらいましょうかね。銀貨三枚ですぐに住める家をご紹介しますよ……もちろん契約料は別にいただきますが」

「お、いいのか? 太っ腹だな。日当たりが良くて暮らすのに不便がない程度に広ければ最高だ」

この規模の町でこの条件だと、いくら狭くとも土地代だけでかなり掛かるだろうから、借り家でも結構な金が必要になりそうだ。

「一応確認しますが、お金は……?」

「奴隷だけで全財産使い切るほど馬鹿じゃないよ。そんなことは多分ないだろうが、足りなきゃ作る。仕事はいくらでもあるしな」

「なら結構。うちは不動産もやってまして。何件か案内します。おい、カーズ、夜まで出かけるから商品用意しとけ」

「へいよ。よし野郎ども休憩は中断、商品のおめかししに戻るぞー、最高の状態で引き渡すぞー、今月はボーナス出るぞー」

喜んでるのかそうでないのか。やる気のなさそうな返事が奥から聞こえ、集団がゴソゴソと動き出す。

なんだろう。この町に来て初めてマトモな人間に出会った気がする。気がする、じゃなくてそうに違いない。奴隷商人が一番マトモというのはおかしい限りだが、なにせ異世界。前世の常識は全く通用しないのだ、そんなこともあるだろう。

「んじゃ行きましょうか、お客様。案内し終える頃には引き渡しの用意も終わると思いますんでね」

「おう。どんな商品か楽しみにさせてもらう」

「期待は裏切りませんよ。おそらくね……あと、いくらハンターといえどあまり金を見せびらかすのは感心しませんな」

「忠告痛み入るよ。これからは気を付けよう」

「財布を落とすならうちで。頼みますよ」

「そんなドジはせんよ」

 なんて、やり取りをしながら。男二人で、斜陽差す街の中へと歩き出す。さてさて。楽しみだ。


――――


 何か、恐ろしく大きなものが街に来た。私の知らない、大きすぎる気配が、街に入って動き回っている。似るものは知っているけれど、それよりもずっと深く強い臭い。けれど、それにしては街が静かすぎて。アレほど大きなものが動き回っているのなら、もっと騒ぎになるはずなのに、どうしてか。

「どうした、姫さん。痛かったか?」

 私の気配を読み取ってか、後ろに座っている男の、髪を梳く手が止まる。

「少し考え事をしていたの。続けて」

「あいよ」

 考えられるのは、契約者。あるいは変身。でも、正直どちらも考えにくい。最も強く、最も大きく、最も誇り高いと言われる竜種が、変身してまで人の生活の中に入り込むなどありえない。目につく街を、そこにあるからと焼き滅ぼし。目につく物を、そこにあるからと食い殺すような種族がそんなことをするわけがない。

 けれど、同じように何かと契約を結ぶというのもまた考えられない。

 考えてもわからない。なら、考えるのはやめておこう。無駄でしかない。街で暴れたりしないのなら私には関係ない。暴れても、私はその他大勢の人々と一緒に死ぬだけだし。 

「ねぇ、私を買うのはどんな人?」

 この濃い香りの次に気になるのは、それ。

「金なんてとても持ってそうにないのに大金を持ってて羽振りのいい、おかしな若い男だ。顔は悪くないが、それほど良くもない……ただ、服の上からでも良い体してるってのはわかった。軍人かハンターだな、ありゃ」

「人の外面は内面を包む仮面。見た感想なんてアテにならないわ。体だって、趣味で鍛えてるのかもしれないし」

「なら何のために聞いたんだよ……」

「汚くて太ってて臭い中年に抱かれるには覚悟が必要でしょう。心配は杞憂だったようだけど。極端に醜いわけでないのなら、私は気にしないわ。買われた金額に見合うよう、精一杯尽くすだけ」

 さて。初めてのご主人様は、どんな人かしら。

主人公の装備・アイテムとスキル的な物

(今回は追加なし)


装備

布の服

普通の槍

ただの弓

鉄弓

解体用の短剣


アイテム

気付け薬

毒入り壺

傷薬

お金


スキル

毒・薬物知識

高速再生(不死)

竜特効(竜限定で防御無視ダメージ)

拳闘術(要はステゴロ)

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