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犬も歩けば犬にあたる  作者: いふじ しゅう
「あの世界」と「この世界」~
5/7

始めましだね 今までに無い恐怖

短くてすいません

「心の準備はすませたな。では、勇者の儀を行う」



 勇者の儀なんていって、本当はただの選別。

 いらない子を捨てる作業。

 



 「…裕香と一樹さんはまだ寝てますよね」


 「ああ。確認した」





 きっと、私は死ぬ。

 即死だ。

 だって、そこが見えないくらい深い崖だから。

 そこそこ高い山から、地下の奥深くまで続くこの崖は人工的に作られたものらしい。

 土や石を削る能力スキルを持っていたある勇者が作ったそうだ。

 一番下には、今までに身を投げた39人の勇者の残骸が眠っているだろうといわれた。

 作ってくれたそのある勇者は、作った2日後に自殺して死んだそうだ。

 ここの崖から落ちた人は、呪いにかかるといわれている。

 嘘かも知れない。

 けど私も、その一人になる。

 寂しくは無い。

 痛みも感じないうちに死ねるだろう。






 「勇者の果て、シュンよ。そなたには選ぶ権利がある。突き落とされるのと自分から身を投げるのはどちらがいいか」


 「………自分から逝きます」


 ダ〇ョウ倶楽部みたいに、押すなよ押すなよ…やっぱ押せよ!見たいなノリになったら恥ずかしいから。

 いや、無いか。

 こんな状況だ、一発で押すだろう。



 

 私は崖の一番端にたった。

 正直、怖い。

 死にたくない。

 生きていたい。

 裕香と共に行きたい。

 でも、裕香と自分なら天秤は裕香に傾いた。

 私は、権利を捨てて必然にした。


 始めましてだね。今までに無い恐怖。




 「自分のタイミングで降りてくれ」



 「…はい」




 深呼吸。

 すうううはあああ。

 落ち着いて。私は大丈夫。

 ふふ、なんだか冷静になってきた。

 風が強いから、頭がすっと冷えた。









 よし。逝くか。











 「…駿!」



 裕香だ。

 裕香の声……?

 裕香はいないはずなのに。




 「…ゆう…、か…。あっ」




 振り向いたとき、風が吹いた。

 私は、足を踏み外した。







 「駿…!駿!だめぇ、だめぇーー!!」



 裕香の叫ぶ声。

 ごめんね。これから始めましてしなくちゃいけないんだ。

 もう裕香には会えない。

 きっとスマホはもう壊れてる。

 実はね、こっちの世界に着いた時に私だけ没収されたんだよ。

 もう勇者にならないって決まったときにね。


 遺書④として、もし裕香が偶然私のスマホを見たときのためにメールを残しておいた。

 私の本音と、私のこと全部。




 「―――――好きだった。さようなら、堕ちて」




 誰の声……?

 裕香…の声…じゃない、?

 違う人の声………。

 裕香って…誰?

 あれ、凄く大事な人だった気がするのに。

 思い出せないや。

 はは、ごめんね。――。

 え?誰?私は今、誰の声って思った?


 思い出せない。 

 もしかしたら、この崖がのろわれてるというのは本当なのかな。








  肌に感じる風を頭の中でぼんやりと感じながら、私はただただ見つめていた。

 頭の中は真っ白で何も考えてはいなかった、考えることは出来ていなかった。

 何もかもを全て忘れてしまったような感覚だというのに孤独ではは無かった。

 私の視線の先には一人の女性、いつもかけているはずの眼鏡を落としてしまったので顔は良く見えなかった。

 意識が薄れてきたのはそれからあと2分する少し後くらいのことだったと思う。





 

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