起床-リターン-
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ふと僕の意識は浮上した
底にあった体はゆっくりと上に行く
周りは相変わらずの黒一色
妙な浮遊感に包まれていた
ここはとても安心できるところだ
なにもしなくていい
まるでなにかに包まれているようだ
守るように、労るように
ここは僕を呑み込む闇じゃない
僕を見守る淡い黒だ
(底で蠢く闇に僕は気づかない)
口を開けたところで水の中にいることに気づいた
なぜだろう、息が苦しくない
体は上へ上へと押し上げられていく
抗う気力もなくされるがまま
僕は何をしていたんだろう?
そもそも何のために存在しているんだ?
(おかしな方向に動き出した思考は
止まることを知らない)
・・・違う、僕は僕の存在理由は
何のためでもない
消えれないから存在するしかないから
だから
<それ以上考えるんじゃない!!
お前のそんざぃ・・・>
チャンネルの合わないラジオのように
その声は響き渡った
ごぽり、口から泡が漏れる
息ができない
体を折り曲げて必死に呼吸をしようとするが
水面は遙か遠く
先ほどの体を押し上げるような感覚はなくなっていて
さっきまで息が出来ていのになんでだ
苦しい苦しいくるしいくるしいくるし・・・
「がはっっ」
(最後に大きな泡を吐いて僕の意識は再び闇の底へと堕ちていった)
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「っはぁ、はぁ」
危なかった
精神の奥の奥に沈めていたはずの
『僕』の意識が不意に起きようとしていた
まだ駄目だ
俺も分からない彼女<園崎 由佳>のことを調べていない
今あいつが起きてしまったら
その精神は完全に壊れてしまうだろう
それだけは阻止しないといけない
冷や汗を拭い一息つく
俺の動揺に誘われたのだろうか?
それとも俺はアイツを完全にコントロール<支配>できない?
今回<79312回目>は苦労しそうだ
(本日何度目かの苦笑いをこぼした)